第5話 不穏
ドォン スパァン
あれからというもの、俺たちは変わらず森の安全を確保していた。
「弱いアンデットしかいないぞ?」
リューニーはここの所ずっと、アンデット狩りを行っている。それも力が無いアンデットだ。流石に飽きてきたのだろう。
「トウヤが一掃したら良く無いか?」
「バカか。そんなことをしたら俺の正体がバレるだろ。それに、今はリューニーの実力を上げるのが先だ」
そんなことを言っていても、いつか五大官と戦う時が来れば、本気で戦わないといけないのだろう。まあ、今までバレなかったしなんとかなる気もするが。
「しかし、埒が明かないな。俺も少し参戦しよう」
「本当か?助かるな」
「支援魔法はいりますか?」
「いや、いい。あと、リューニーにも引き続きかけるなよ」
ここ数日で気づいたことだが、カンレは非常に慈悲深い。リューニーが少しでも攻撃されればすぐ支援魔法をかけたがる。リューニーが支援魔法に頼らず成長できるように、今は極力かけないでほしいんだが。
しかし、カンレは優秀だった。アンデット狩りを行い終わった土地に結界を張るように言っていたんだが、ものの見事に綺麗に狩り終わった土地だけを結界で覆っている。とても器用だ。
「よいしょっと」
軽めの電撃魔法でアンデットを倒していく。この調子だと、もう1週間もあればある程度の範囲は制圧できるな。
〜2時間後〜
「もう暗くなってきたな。そろそろ帰るか」
「そうだな。トウヤ」
そうして俺たちは帰路につき、マルクスの家へと帰った。
「疲れたなぁ〜」
リューニーがソファにもたれ掛かりながら言葉をもらす。
「珍しく外食でもするか?」
「いいな!」
「いいですね!」
二人とも賛成か。なら今日は日頃の疲れを癒すために外食に行くか。と、考えていた時だった。
「…!」
「どうした?トウヤ」
「悪い、魔王軍から招集がかかった。行かないといけない」
「大丈夫なのか!?」
「大丈夫だ。作戦を聞いてくるだけだ」
「私達はどうしたら?」
「ここで待っていれば良い。行きたかったら外食にも行ってきて良いぞ」
「流石に行かねぇよ。こんな状況で」
やけに怖気づいてるな。これから旅に出るならしょっちゅうあるだろう出来事なんだが。
「まあとりあえず、行ってくる」
そうしておれは転移魔法を使い、魔王城のある大陸の最東端へと向かった。
〜魔王城〜
よっと。あ、そういえば姿を変えないとな。これで…よしっと。しかしいつ見ても城とは名ばかりで何かの研究施設のような無機質でそれでいて不気味なオーラを漂わせる建物だ。そう思いながら、俺は中へと入った。
「これで全部だな?」
「遅れました。魔王様」
「気をつけろ。テルペト」
恐ろしく魔力を放つアンデット。アンデット界の王、魔王だ。
「今日の題はすでに一部の五大官には伝えてあるが、マルクスの件についてだ」
「……!」
もしや、バレたか?
「この間、シャラクとシュルツであそこの副団長を殺す命令を出したが、しくじって殺し損ねた。それどころか、最近、近くの森でアンデットが大量に殺されている。これをどうにかするために、シャラク、お前が迎え」
「了解いたしました」
「シュルツ、お前も見張っておけ。万が一の時のためにな」
「承知しました」
「では、各々任務通り働くこと。もし命令に逆らえば、命はない。それと、シャラクの任務決行は2週間後とする。では、以上」
まずいな…シャラクが来るとなれば、リューニーでは到底敵わない。それどころか死ぬ可能性だって出てくる。これは…本気の戦いになるな…そう考えながら、転移魔法で俺はマルクスへ帰った。この出来事をどう伝えようか…順調に進んでいた計画に不穏な雰囲気が漂い始めた。
1章、読んでいただきありがとうございました。第6話からの2章も読んでいただけると嬉しいです!