第3話 魔法使い
「ん、もう寝てしまったか」
リューニーと仲間になった日、トウヤは一人で夜を過ごしていた。アンデットに睡眠は必要ない。トウヤにとって夜は、最も孤独な時間だった。
「これでまた更に先へ進める。リューニーと一緒に、必ず魔王を倒して見せる」
そう決意し、夜を明かす為に、散歩へと出かけた。アンデットになってから500年ちょっと、そして魔王を倒そうとし始めてからは350年ほどか。魔王軍の進軍を止めれてはいたが、直接的にダメージを与えることはずっとできなかった。でも、これから状況は変わるはずだ。
ずっと仲間を探していた。でも無理だった。魔王軍に恨みのある人物とは何千と出会った。そしてその中の数十人と仲間になろうと接近した。しかし、俺がアンデットであることに皆激怒し、俺を殺しにかかった。その度に姿を変え、名前を変え…なんの進展もない時もあった。東の砂漠を彷徨い、都市で寝床を探し、五大官を倒し…。そんな昔のことを考えながら散歩をしていると、いつのまにか夜は明けて、朝が来ていた。
「もうこんな時間か。」
時計台を見て、時間を確認した後、俺は自分の家へと帰った。
「ごめん、遅くなった」
「おはようトウヤ」
「初めまして。トウヤさん」
「……は?」
誰だ?この女は。俺はこんな女を招き入れた覚えはないぞ?そもそも何でリューニーは普通にしているんだ?普通に朝飯を食べているんだ?
「話してなかったな、トウヤ。こいつは俺のガールフレンドのカンレだ。」
「初めまして、カンレといいます。」
こいつ、ガールフレンド居たのかよ。しかも結構美人だし。
「初めまして。トウヤです。リューニーから話は聞いていますか?」
「ええ、魔王軍を滅ぼす為に活動をしていて、リューニーと一緒にその活動をするつもりであること。そして、あなたがアンデットで五大官の一であることを聞いています。」
そこまで聞いていたら十分か。
「で、どうするつもりなんですか?」
「はい?」
「俺は本気で魔王軍を滅ぼすつもりです。その為に、リューニーとここに居座るつもりはないんです」
「そこで一つ、話があるんです。私もその旅に混ぜてくれませんか?」
新しい仲間か。でも足手まといはいらないしなぁ。正直足手まといになるくらいならいない方がマシだな
「何ができるんですか?」
「私の役職は魔法使いです。ですから、皆さんのことを後方から支援魔法で援護できます」
なるほど。それなら一緒でも足手まといになる可能性は少し低くなった。
「リューニー、こいつが戦いの末にもし死ぬことになったとしても、お前は受け止められるんだな?」
「ああ。さっき過酷な戦いになることを嫌というほど言った後に、カンレがついて行くと結論を出したんだ。俺はカンレの意思を尊重し、その末に悲惨な結末が待っていようとも、受け止めて見せる」
「それなら、ついてきても良い。ただ、足手まといだけにはなるなよ。もしそんなことがあるなら、俺は躊躇せずお前をパーティから外す」
「はい。それを分かった上でも、私はあなたたちについていきます。魔王軍を滅ぼす為に、私も戦いたいんです」
どれくらい活躍してくれるだろうか。まあ活躍できなくても、リューニーのそばにいるだけで、リューニーの支えになるだろう。そういう意味では、活躍できないという事はないのかもしれないな。