第22話 達成
「さて、ウルネーヴもあっちにいったし、こちらも始めようか」
「まず、何で生きているんだ?シャラク」
俺は数日前、確かにこいつを殺した。カンレの魔法でとどめを刺し、死んだところをロイと一緒に確認したはずだ。
「魔法だ。乗っ取ったんだよ。手の内はこれ以上明かさないが、お前自身で考えてみると良いぞ?副団長よ」
「ロイ、始めよう」
「ああ。承知した」
もう一度、完膚なきまでに叩き潰す。俺の大切な人達を踏みにじり、のうのうと生きているこいつを絶対に殺してやる。
トウヤはいない。カンレももちろんいない。支援魔法なしでもやってやるよ。戦いは、ロイの一撃から始まった。
「速い!流石勇者よ」
「ロイ!油断するなよ!」
「ああ、もちろんだ」
ロイの一撃を正面から受けたが、シャラクに欠損は見られない。
「結界か?前は使っていなかったな」
「よく分かったな副団長!バレないようにエネルギーは最低限にしたんだがな」
ロイの一撃をもろに受けても傷一つないその耐久力。そして以前戦った時のあの強力な魔法。厄介極まりない相手だ。
「風遠撃」
遠距離攻撃で乱したところにロイと一緒に一撃を入れる!俺はロイと目配せして同時に一撃を入れた。
カァン
鈍い金属音がして、二人とも剣を弾かれた。魔法を纏った剣撃は、二発とも完璧に結界で防がれた。今のでも結界が破れないのか…。そう思いロイと次の攻撃を仕掛けようとした時。
「晴天の輝き」
仕掛けてきやがった!咄嗟に風魔法を周囲に撃ちまくり、擬似の結界のような空間を作り上げた。しかし、無傷で切り抜けることはできず、上半身、主に腕に火傷を負ってしまった。
ロイは光線のエネルギーを剣技で受け流していたようだが、やはり所々に火傷の傷が見られる。
「あの男がいなけりゃまともに攻撃も防げないのか?未熟な奴らだな。終わりにしてやろう」
シャラクが魔法エネルギーを集め、次の魔法を放とうと宙に浮かんだ。恐らく次の一撃は今のよりも強力。
どう防ごうか逡巡していた時、ロイが突然走り出した。
おい、と声をかける間もなくロイはシャラクの目の前まで辿り着いていた。
「閃光一閃」
斜め上に放たれた斬撃はシャラクの足を切り落とし、奴を地上へ引き摺り下ろした。
「その速さ、何のからくりだ?お前、何かしたな?」
シャラクは素早く再生しながらロイに聞いた。
「お前にタネは明かさない。今はとにかく、お前を倒す。それだけだ」
俺はその間に二人に近づき、ロイと協力を図った。
「崩地斬」
しかし、今のロイのスピードとレベルについていくことができず、俺はロイの攻撃を後ろから眺めるだけになってしまった。
「なかなかの威力。人間でそのレベルは初めて見たかもしれんな」
ロイに追いつくには、仕方がない。そう思い俺は魔法エネルギーの出力を最大限に上げて、戦いに挑んだ。
「風遠撃」
全力で放った斬撃はシャラクの腕を真っ二つに切り落とし、森の木を吹き飛ばした。しかし、一発放っただけで息が上がる。
「リューニー、大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だ。それより、二人で息を合わせて攻撃を入れよう」
「分かった。だが無理はするなよ?」
「ああ」
そうは言ったが、少し無理はさせてもらう。正念場だからな。
「貴様らの覚悟は良く伝わった。副団長も、勇者も、魔法エネルギーをブーストさせて、全力をぶつけてきているのだろう。まあ勇者は勇者の加護の力をブーストしているようだがな。まあ何でも良い。その様子じゃ長くは持たん。持久戦は私に分があるな」
そう言うと、シャラクは自らの周りに軽い結界を張り続け防戦に徹した。
「そんな真似をして俺たちに勝つつもりか?」
「戦い方に理想というものはない。勝ったやつが正解だ。分かるか?副団長。騎士団で理想論ばかり言われて馬鹿になっているな」
ロイと俺の全力の剣撃を喰らわせるが、結界は破れてはまた張り直されを繰り返し、埒が開かない。
「疾風雷豪」
ロイの強力な一撃でシャラクにダメージを与えることができたが、所詮は結界越しの攻撃。空気を震わせた二発の斬撃は、シャラクにはかすり傷にしかなっていなかった。
「リューニー、何か策は?」
「俺の風遠撃で結界を破った隙に一撃。それくらいしか浮かばない」
「分かった。ひとまずやってみよう」
「こそこそと何だ?来るなら来いよ」
ああ、望み通り強烈な一撃やってやるよ。
「風遠撃」
結界に開いた少しの隙間に、ロイは全力の一撃を浴びせた。
「疾風雷豪」
カァァン
二重の結界!?結界は一度に一つしか張れないはずだ。なら何故?
結界で攻撃を防がれたロイは蹴り飛ばされ、血を吐きながら吹き飛ばされてしまった。
「これは結界ではない。魔法エネルギーの塊だ。私の魔法エネルギーを集めて作った、エネルギーの壁だ」
エネルギーの壁?結界の内側にそんなものを仕込まれて、破れる方法などあるのか?
ロイの攻撃も弾かれた。ロイよりも弱い攻撃しか放てない俺が、あれを破れる手段は…。
なす術なく防御の姿勢で固まっていると、シャラクの背後に近づく影に気がついた。あれは…!
「何だ?防御の姿勢も取らずに。諦めたか?とどめをさしてやろう」
シャラクがゆっくりと近づいてくる。シャラクの背後の影の気配を頼りにタイミングを探りながら、俺はロイに叫んだ。
「ロイ!剣を持ってこっちに来い!」
「何だ?」
「久しぶり。2時間ぶりくらいか?シャラク」
その瞬間、轟音と共にシャラクに一発の光線が放たれた。それは今まで見たどの光線よりも強力で、周囲のありとあらゆる物を吹き飛ばしながらシャラクへと直撃した。
「貴……様!!」
「結界っていうもんはこうやって破るんだよ」
ロイを視認し、それと同時に光線を喰らったシャラクの位置も確認しながら、ロイと合わせてやつの首を狙った。
「晴天…の……」
「させるか!」
「やるぞ!リューニー!」
二人で両方向から入れた一太刀は、さっきまでが嘘だったかのようにいとも簡単にやつの首を落とした。
「これで終わったか?トウヤ」
「…ああ。最後に魔法を放つことなかったし、今もエネルギーが感じられない。これで遂に討伐だ」
やっとか。戦いにしたら3度目。ようやくシャラクとの戦いが、終わったのか。カンレも団長も殺したこいつを…。
達成感なのか何なのかよくわからないが全身の力が抜け、不意に涙がこぼれ落ちてきた。
「よくやった。二人とも。リューニー、頑張ってくれて、本当にありがとう」
「泣くなよリューニー。俺たちの戦いはまだ終わってないんだ。まだ、泣く時じゃないさ」
ああ……。そうだな。まだ続く。ここはただの通過点。ただ俺にとっては、大きい大きい通過点だ。




