第19話 混沌
戦況は悪化した。ガルテの魔法で将軍が何体も出されて、戦場にいるアンデットの数は1500を超えていた。リューニーは依然下を向いたままで、立ち上がる様子がない。
「ロイ、将軍から片付けてくれ!」
ロイに指示を出すと同時に、自分も電撃魔法で周りのアンデットを一掃した。
「良い魔法だな。だがいつまでそんなことを続けるつもりだ?戦況は悪化するだけだぞ」
この戦況の中で最もやるべきことは、アンデットをロイに任せガルテを倒すこと。
だがリューニーの母がいてはそれもできない。埒が開かない。
リューニー、頼む…覚悟を決めてくれ…その刹那、横から疾風の如く進む影があった。
「リューニー!」
リューニーはガルテのもとへと突っ込んだ。他のアンデットからの攻撃を気にすることなく。そして、一太刀を浴びせた。
「リュー…ニー…」
ロイは驚き、一瞬の間立ち尽くした。リューニーの目の前には、自らの母の首が落ちた。
「俺のやらなければいけないことは、これだ」
ドォン
一瞬の隙を見逃されず、リューニーは再び吹き飛ばされた。
「大丈夫か!?リューニー」
「ああ。トウヤ。俺はもう、大丈夫だ」
そう言って吹っ切れたように笑ったリューニーだったが、その目は上手く笑えていなかった。
「すまないが、今は頑張ってくれ」
そう言い、俺はガルテへ照準を合わせた。
「ロイ!道を開けてくれ」
「了解した」
ロイが俺とガルテの間のアンデットを倒し、一筋の道が開けた。俺は迷わず、ガルテに電撃の光線を浴びせた。
ドォォォン
「こんな使い方もできるんだぜ?」
大量のアンデットを呼び出し、攻撃を無力化したか…だが、今ので200から300くらいは消し飛ばせただろう。
「だが今の出力は少々面倒だなぁ。本気でいかせてもらおう」
なんだ?アンデットがガルテに吸収されていく?
「リューニー、下がれ!」
今ここでリューニーを死なせるわけにはいかない。
「今ここにいるアンデットの魔法エネルギーを集約すればどうなると思う?」
まさか、あの数を捨て駒にする気か?
「答えは、五大官をも超える威力を出すことができる!」
1500以上いたアンデットが全てエネルギーに変換され、暴力的なエネルギーが生まれた。あれに対抗するなら属性結界か?いや、ただのエネルギーに属性はない。ならば…
ドゴォォン
放たれたエネルギー波は、俺の右半身を消し飛ばした。
それもそのはず、俺は結界を左半身に絞り発動した。俺の体は消し炭にさえならなければ再生する。
遠くにいたロイに合図を送り、リューニーにも合図を送り俺は再びガルテの方へ向き直した。
「よく半身が残ったものだ。威力だけならシャラクにも劣らない代物なのだがなぁ」
「次はお前の番だぜ…。受け止めろ!」
指先に電撃魔法を集中させ、先程よりも出力を上げてガルテの胸元へ光線を放った。だがガルテは先程と同じくアンデットの肉の壁で防ぎ切った。
「さっきもやっただろう。いい加減飽きてきたぞ?」
そう思うのも無理はない。さっきのを出力を上げただけだからな。これが本命だったら俺の負けだったかもしれない。
「!!お前ら…!」
光線がいい具合に目眩しになり、ロイとリューニーが気づかれずに接近できた。ガルテは焦ってアンデットを乱雑に召喚するが、ロイがその全てを処理し切った。
「リューニー!やれ!」
俺はリューニーに支援魔法と、結界を施した。
キュィィ
「近円斬」
ガルテが召喚したアンデットを巻き込み、リューニーはガルテの首を落とした。
「ガ…ァァ…」
死んだか。まだ日は落ちていなかった。体感、すごく長い戦いだった。
「みんな、一旦近くで休もう」
目的地より近い国に、一旦休息をとりに行こうとしたその時だった。
ドォン バァン
爆弾…!?
「無事か!」
振り返ると、目の前にまたもう一発爆弾が降ってきた。くそっ…間に合わなかった…三人は爆弾に巻き込まれてしまった。
「大丈夫だ!トウヤ」
ロイの声が聞こえた。と、同時にもやが晴れ、三人の姿が見えた。どうやら、爆風は剣技で吹き飛ばし、火傷以外の外傷はなかった。しかし火傷がひどい。すぐにでも国へ向かおう。
「対象人物生存を確認」
誰だ?上を見ると見覚えのあるシルエットが浮かんでいた。五大官の五、オルター。奴が来ていたのだ。
間髪入れず追加の爆弾をどんどんと投下してくる。結界でなんとか防いだが、草原はどんどんと焼け野原になっていく。
「三人とも、固まっておいてくれ!」
「なんでだ?トウヤ。俺たちも戦うぞ!」
「リューニー、五大官を舐めるな。俺が戦うから、引け」
「…分かった」
三人が一点に固まったのを確認し、ドーム状の結界を施した。さて、戦うと言ってもエネルギーが少し足りない。隙を見て退散するか。
「結界を確認。標的、個体名トウヤに絞り攻撃」
同時に十発の爆弾!だが空中で処理すれば良い話。
炎魔法を爆弾にぶつけ、爆弾は空中で盛大な花火の如く爆散した。その巨大な爆発に隠れて結界を解き、俺たちは急いでその場を退散した。
「五…官…名……ク……ト……認……」
去り際に何かオルターが言っていた気がするが、気にする時間もなく、急いで最寄りのジャンドラ公国に逃げ入った。




