第11話 怪物
〜ウェストル王国〜
「司令官!五大官の接近を確認いたしました!」
「五大官だと?人員を集めろ!騎士団の上層部にも報告だ!五大官の誰だ?」
「五大官の5、氷雪のアルシュンです」
「実力者だけを集めてこい。そして、ロイを呼べ」
「何でしょうか。司令官」
「五大官の接近を確認した。侵略を防ぎ、殺せ」
「承知いたしました」
「ロイの後ろに騎士団を控えさせろ!ロイをサポートしろ」
久々に強敵か。何が来ようとこの国は俺が守ってやる。勇者の加護を持つこの俺が。
「五大官が来ました!」
俺は国を出て、国の外の少し狭い草原に出た。すると、強大なオーラと、息が凍るような冷気があたりを襲った。
「お前か?アルシュンとか言うやつは」
「ええ。私が五大官の5、アルシュンよ」
仲間は一旦、国の外壁の中に控えさせた。仲間に危害は加えさせない。
「話はしたくない。とっとと始めよう」
「こっちの台詞よ!」
アルシュンはそう叫び、氷魔法を連発し始めた。恐らく上級魔法。辺りが凍りつくほどの威力だ。俺はそれを剣で弾き返し、魔法の隙をついて一気に近づいた。
「っ、何てスピード!」
「閃光一閃」
光り輝いた俺の剣は一瞬で奴の首を落とした。
「魔法で治癒するつもりか?無理だよ」
俺は奴の体を切り刻み、その後、奴は消滅した。
カンレが目を覚ましたのは1週間後の事だった。俺はその間に魔王から召集を受け、アルシュンのウェストル王国襲撃の計画を聞いた。
本当なら止めに向かっていたが、カンレが目を覚まさない以上、行動を起こすこともできず、ウェストル王国を見殺しにしてしまうことになってしまった。
カンレが目を覚ましてから3日後、アルシュンのウェストル王国襲撃から5日後の昼頃、俺たちはアルシュンによる被害確認とアルシュンの討伐、そしてロイ・アルシアを仲間に引き入れるためにウェストル王国にやって来たのだが…
「トウヤ、なんかすごい平和じゃないか?」
「…ああ」
「いい国ですね〜ウェストル王国は」
これは…多分、アルシュン討伐したな。少なくとも五大官にやられた国の有様ではない。
「ひとまず、騎士団に行くぞ」
ウェストル王国の騎士団本部に辿り着くまでに、俺たちは様々な道を通った。商店街に住宅街、川沿いの大通りも通った。そしてどの道も人々の幸せが溢れていた。仲睦まじい男女に親子、子供たちも遊び回っていて、アルシュンを討伐したと言う憶測はこの街を見て確信へと変わった。
〜ウェストル王国騎士団本部〜
「すいません、ロイ・アルシアに会いたいのですが」
「目的は?」
「少し、話がしたいんです」
「一般人がそれだけのために騎士と会うのは少し…」
「騎士団手帳です。これでどうです」
でかしたリューニー。
「…わかりました。呼んで参ります」
それから5分もしないうちに、一人の青年が出て来た。
「あなたたちですか?何の用ですか?」
黒髪によく目立つオレンジ色の瞳、そして左腕には金色のリングをつけた活発な少年のような雰囲気を纏った青年だった。
「初めまして。ロイ・アルシア。少し、話に付き合ってくれるか?」
「分かった。手短に済ましてくれよ?」
それから俺たちは喫茶店のテラス席へと移動して話をした。
「ロイ・アルシア。単刀直入に言う。仲間になってくれないか?」
「え?」
「俺たちは、魔王軍を滅ぼすために動いている。どうか仲間として、共に戦ってほしいと願っている」
「無理だ。俺は暇じゃない。ウェストル王国騎士団の特別騎士に認定された騎士だ。俺には、この国を守る義務があるんだ」
ロイの言葉は裏があるような表面だけの言葉じゃなく、本音から語っているような言葉だった。
「騎士団にいても、できるのは向かってくる敵を倒すことだけです」
口を開いたのはカンレだった。
「それの何がいけないんだ?」
「根本的な問題は変わらない。今は救えても、ロイさん。あなたがいなくなればその均衡は崩れ、王国は潰れるかもしれないです」
「お前に何がわかるんだよ。それとも何だ?俺以外の騎士団が弱いって言ってんのか?」
「それは…」
カンレは言葉に詰まった。
「まあいい。騎士団についてよく分かってないんだろ?騎士団にはな、入った時点で騎士の天恵が授けられる。身体能力が上がり、魔法エネルギーを検知することができる。それを使えば、空間認識をでき、アンデットを見逃すことはほぼない。騎士団はな、一般人じゃねぇんだよ。俺一人いなくなったからって国が潰れることはない」
「言い切ったな」
「ああ」
「じゃあ、仲間になってくれるよな?」
「いや、は?」
「お前がいなくても騎士団はどうってことはないんだろ?なあ、ロイ。魔王がいなくなれば、アンデットの襲撃もなくなる。この国もお前の仲間も、危険に晒されることはなくなるんだ」
「でも、そんな無謀なことに俺の命は捧げたくない」
「無謀じゃない。マルクス副団長のリューニーに、実力者の魔法使いが二人いる。俺たちは決して弱くない。そして、ロイ。お前がいれば、俺たちは更に強くなれる。魔王を殺せる力を手に入れられる。一緒に戦おう。世界を救おう。勇者、ロイ・アルシア」
「でも俺には騎士団が…」
「大丈夫だ。強いんだろう?それにこの国の騎士団が危険なら、戻ってくればいい」
「……」
ロイは少し黙り込んだ。おれはその沈黙を破り、一つ質問した。
「この前のアルシュンの襲撃。あれを止め、アルシュンを討伐したのはお前か?」
「ああ。俺一人でやった」
「五大官を一人で?」
リューニーは驚きと、信じられないとでも言うような雰囲気で言った。五大官の強さを肌で感じて来たリューニーだからこそ、その異常さがより強く伝わってくるのだろう。
「ロイ。その強さがあれば、世界を救えるんだ。この国に恒久的な平和をもたらせられるんだ。一緒に戦おう」
「少し、考えさせてくれ。結論はなるべく早く出す」
「ああ。もちろんだ。そう簡単に決まることじゃないだろう。でも、俺からは一つ。お前は世界で唯一、魔王を殺せる実力を持つ騎士だ」
ロイはその言葉に何も返さず、店を後にした。夕日が席に当たってきていたので、俺たちも寝床へ帰り、ロイの決断を心して待つことにした。




