第10話 展望
俺たちが目を覚ましたのは、昼過ぎだった。あの戦いの後、俺たちは皆気を失い、倒れていた。シャラクの魔法による森の火事で、マルクスの騎士団が出動したことで、俺たちは保護されたという。どうやら、マルクスは壁に覆われているため無事だったが、森は壊滅的で、火の海と化しているようだ。
「副団長!一体何があったんですか!」
リューニーの方のベッドの周りには複数の騎士がいた。胸の辺りにある名札をベッドに横になりながら眺めて、名前は確認できた。どうやら、アルウィン、ベルザー、レードンと言うらしい。
「副団長。なぜ僕らに頼らなかったんですか…」
リューニーに問いただしているのはその中でもアルウィンという金髪の青年だった。
「俺は、お前たちに迷惑をかけたくなかった」
リューニーは目を合わせず答えた。そこには優しさもあったが、それよりも後ろめたさが強く感じられた。
「だから…自分だけでやるって?そんなこと、しなくていいんです!」
「一人じゃない!仲間もいる」
「でも、だからって…」
「俺はシャラクを倒す。騎士団でそんな自分勝手な要求を通してはいけない。俺は、このやり方で生きていく」
「副団長…」
「お前たちは、騎士団で頑張れ」
そう言ってリューニーは三人に背を向けた。
「リューニーさん」
呼びかけたのはベルザーだった。
「俺たちは、リューニーさんが好きです。尊敬しています。だから、死なないでください」
「絶対、生きて笑って帰って来て下さいね!」
レードンも、そうリューニーに言った。
「お前らも、死ぬなよ。お互い様だ」
その言葉を最後に三人は部屋を出ていった。
「良い後輩じゃないか」
「どうだか。世話の焼ける面倒な奴らだ」
俺がリューニーの人間関係にとやかく言うことはできない。しかし、俺から見るに、面倒でも仲間がいることはそれだけで意味があると、そう思えた。
「カンレはどうした?トウヤ」
「カンレはまだ動けない。あの光線は、想像以上に強力だった」
聞いた話では、カンレは全身に火傷を負い、特に上半身は動かせないほどの怪我だと言う。しかし、カンレは喰らった直後に治癒魔法をかけていた。それなのにその有様というのは恐らくは。
「覚醒魔法だな」
「何だ?それ」
「魔法には階級がある。それは知っているだろ?」
「ああ、確か、低級、中級、上級の3つだろ?」
「そう。リューニーが使っているのは中級。そしてそのどれにも当てはまらない、一線を画した威力や効果の魔法がある。それが覚醒魔法だ。一説によれば、覚醒魔法を使えれば、他全ての魔法の階級も上がると言われている。魔法の核心を掴むことができるとも言われている」
だが、それはそうポンポン使えるものじゃない。人類で俺が知る中で使えたと言われているのは数千年前、世界のアンデットを駆逐した勇者パーティの中の魔法使いくらいだ。アンデットの中でも俺と魔王しか使えない。
「シャラクは、覚醒している」
「どういうことだ?」
「覚醒魔法はその強大さゆえ、使えるものは限られている。だが、シャラクはそれを使った。アンデットでは俺と魔王しか使えないものを。単純に言えば、超強い」
「だから何だ?俺たちなら、トウヤなら、倒せるだろ?」
「はっきり言うが、今のままならリューニーは戦えば死ぬ。俺が戦えば何とかなるかもしれないが、恐らく本気で戦わないと余裕で死ぬ。本気で戦えばテルペトとバレて、計画は全てパーだ」
「じゃあ、どうすれば…」
シャラクを避けて計画を進める手もあるが、それはつまりシャラクを放っておくと言うこと。あのままなら、世界はただでは済まない。
シャラクが五大官になったのは300年ほど前。最後に戦いを見た53年前でも、覚醒魔法は使っていなかった。となれば、シャラクは成長を続けている。
仲間を増やして数で対抗して倒すしかないだろう。幸い、リューニー以外にも目をつけていた人物は何人かいる。
「いいか、リューニー。カンレが起きた後の計画を話す。今のままでは覚醒したシャラク、あるいは他の五大官にも負ける可能性がある。そのため、仲間を増やす」
「当てはあるのか?」
「ああ。まずは一番の逸材から誘いに行く」
「どんな奴なんだ?」
「化け物だ」
数千年前、勇者パーティはアンデットを駆逐し、その強大な力は死後、加護として数百年に一度、生まれてくる赤ん坊に付与されることがある。
現代に出現している加護は5つの中のたった1つ。勇者の加護。そしてそれを持つ剣士。北東のウェストル王国一の剣士、ロイ・アルシア。次なる計画は彼を仲間に引き入れること。




