教育係
「ソル、お前に仕事だ」
そうしてエニグマが俺に見せたのは、小さな女の子だった。見た目から推測するに、まだ五にも満たっていないだろう。
「お前は今日から私の妹……ファントムの教育係に任命する。色々と世間を教えてやるように」
「はぁ……」
お前の妹だと言うのなら、お前が面倒を見るべきだろうに。とことんお前は欠けているな、と思わざるを得ない。
「にゅー?」
「……さっきあいつが言ってた通りだ。俺の名前はソル、今日からお前の世話は俺がすることになった。まぁ、その、なんだ。お前の親代わりみたいなもんだよ。チビなんだから俺の傍から離れるんじゃねーぞ」
「そりゅー♪」
「そりゅじゃない、ソルだ」
そして、成長していく彼女を近くで見守り続けた。彼女は、まさに『純真』という言葉そのものが人の形をとったみたいで、そんな子の世話ができるだなんて。あまりにも綺麗で、可愛くて、油断すると魅入ってしまいそうになる。
(俺は、ただの世話係だ……)
「ソル、さくら」
「うん、さくら」
「さくら、きれい」
「うん、きれい」
「……ソルも、きれい」
「そうか」
「姉さんほどじゃないけど、きれいだとおもう」
「……………」
時に純粋な子供って恐ろしー………
彼女は庭に居る鳥を撃ち落としていた。
「今日も射撃訓練か」
「あ、ソルだ」
「あいつに言えば的用意してもらえるぞ」
「動いてる奴じゃないと意味ない」
「あまり殺すなよ、鳥も生きてるんだからな」
「わかってる。命に感謝していただきますしないとね」
「いや……まぁ間違ってねぇからいいか」
「………どうしたの、じっと見て」
「……お前も、成長するんだなって思ってさ」
「そりゃ、成長はするでしょ」
「……成長していつかは……俺の前から居なくなるのかね」
「何言ってるの? 成長はするけど居なくなったりしないよ?」
「……?」
「だって、ソルのことは大好きだし、大きくなっても一緒に居たいもん」
「……そうか」
「うん」
「そう……か……」
「?」
「……もう少し大きくなってから、同じこと言ってくれたら……答えてやる」
「ん、わかった?」
「ソルー、今日は五羽撃ち落としたー」
「殺しすぎだろ……せめて三羽にしろ」
「標的にぶち当たった感覚が気持ちよくてついつい。ちゃんと羽毟ってたべるからさぁ」
「…………」
「どうかした?」
「……いや、昔を思い出してた」
「ん、何かあったっけ?」
「…………」
「あぇ、なんでそんな急に不機嫌になるの〜?」
「………絶対俺の方からは言わないからな」
「えぇ〜」