第二十一話 交流
──アクア・リタと謎の少女が話しているよそで、アステルたちはリミナの民との交流を深めていた。
「アステル=モシュメ。これも美味、食べるといい」
リトは自身の捕まえていた生物を、次々とアステルに渡している。
「こんなに私に渡してきていいの? 自分たちの食べ物が無くなっちゃうよ」
「獲物は分け合いが大切。気にしない」
「……そういう文化なら、断るわけにはいかないね」
アステルは獲物を受け取り、半分にちぎってリトと分けて食べる。
そして、ふとラナデの方に視線を向けると、ラナデは数人の屈強な男たちに囲まれてあたふたと対応していた。
「早速仲良くしいているね。審査通り、ラナデ君は文明の進んだ星向きかな」
「──きちんと適性審査できている証拠ですねー」
アステルがひとりごとを呟いていると、そう頭の上から声がする。メモリーの声だ。
「メモ姉、ラナデ君を見ていなくていいの? というか、頭に乗らないでくれる?」
「まあまあ、あの方々に悪意は感じられませんし、大丈夫でしょう。それに──、」
メモリーはアステルの頭の上から逆さまに顔を下ろし、アステルの鼻先をつつく。
「お世話係はシュメちゃんですよ? お姉ちゃんに任せっきりではめっ! ですからね!」
「分かってるよ。それに、私が今まで職務を放棄したことなんて無いからね」
「一応ありはしますよ、あの星の調査の時に……」
「……あれはノーカウントでしょ」
──一方、ガチムチ男たちに囲まれていたラナデはというと。
「お前、どこから来たんだ? ソナタからか?」
「小さいな、まだ子供か」
「まずは体を作れ、腹減ってないか? これ食え、うまいぞー」
「こいつ、クエルたちが捕まえてきたやつじゃないか? 獲物じゃなかったのか。食われなくて良かったな」
「狩りはできるか? 教えてやるぞ」
「あっちのは仲間か。リトに聞いたぞ、リタに勝ったって言うのは本当か? 誰が勝ったんだ?!」
「あ、あの……ちょっと」
今にも肉の壁で押しつぶされそうな程、リミナのものたちに攻められていた。
「──全員、そこまでにして。怖がっているよ」
その控えめながらもはっきりとした声とともに、ラナデを囲う男たちを掻き分けて、フードを深く被った小柄な女性が現れる。
しっかりとは見えないが、ラナデにはその声と隙間から見える顔に覚えがあった。
「あなたは、あのときの……」
ラナデがメモリーとふたりで行動していたときに、オオダマデキメンを見つけた広場付近でラナデに話しかけてきた女性だった。
「あなたも話せるのね。それにしても良かった、解放して貰えたのね。怪我はない?」
「はい、痛むところもありません」
ラナデが答えると、女性はフードの端をあげて顔を覗かせてラナデを見上げる。
その顔は、幼子を見るように優しく微笑んでいた。
「なんだドゥカッセ、こいつのこと知ってたのか?」
周りを囲う男のひとりが聞く。
「知っている、と言えばそうとも言えるよ。ドゥカッセがちょっと話しかけただけだけど、すぐに逃げられてしまったから」
「あの、そのドゥカッセっていうのは……」
「ドゥカッセはドゥカッセの名よ」
ドゥカッセと名乗った女性はラナデの目を見つめて答える。
「僕は──」
「言わなくていいよ、リトから聞いたから。ラナデと言うとね。
ドゥカッセはアクア・タバの娘。で、あそこにいるパッソとブッセの母」
そう言ってドゥカッセは、アクア・リタと一緒にいる少女を指差した。
「ブッセは相手を下に見る癖があるよ。悪い癖。ブッセと話すときは、下に見られていると感じたら話さなくていい、辞めるよ。
困ったことがあるならドゥカッセに言うといいよ。ドゥカッセはリミナで2番目に強いから」
「は、はぁ……ありがとうございます」
聞いていないことを黙々と話すドゥカッセに、ラナデは少しアステルやメモリーを重ねて聞いていた。
その後も男たちに囲まれて話していると、アクア・リタとブッセ、意識を取り戻てマントを顔に巻いているパッソが歩いてくる。
そして、ドゥカッセがアクア・リタの臭いに顔をしかめると、アクア・リタの腕を引っ張ってどこかへ行ってしまった。
「ドゥ母ちゃん、リタの臭い取りに行ってくれたんか?」
ブッセはアクア・リタたちの後ろ姿を、腰に右手を当てて眺めながらパッソに聞く。
「知らん。リタのあの匂いは何だったんだ? 危うく死んでしまうところだったぞ」
「ははっ、それはそれで面白ぇかもな」
そう言うと、ブッセはラナデに顔を向ける。
「なー、あんたもそう思うよな?」
「え?」
突然のことにラナデはたじろぐ。
その様子を見かねたのか、パッソが手に持っている槍でブッセの後頭部を小突く。
「は? 何?」
ブッセは小突かれた後頭部を押さえてパッソを睨み上げる。
「辞めてやれ、お前はすぐそういうことをする……」
「んだよ、ったく……。分かったよ、だから小突くんじゃねぇよ。
あんたは力加減下手クソなの理解しろよなー、痛ってぇよ」
ぶつくさ文句を言いながら、ブッセは離れていった。
「悪いな、ブッセも悪いやつじゃないんだが、すぐに相手を困らせようとするんだよ」
パッソはラナデの頭に手を置き、どこか申し訳なさそうに笑いかける。
「……苦労してますね」
第二十一回 メモリーお姉ちゃんの豆知識!
『ラナデ=ワワイの嗜好』について
今回の豆知識も、ラナ君に直接聞いていこうと思いますよ!
「よ、よろしくお願いします」
はい、ではでは聞いていきましょう。
星間記録課でのお仕事がないときは、一体どのようなことをしているんですか?
「えっと、まだ知らない星の言語を勉強したり、エニフルで他の星の言葉のみでのクイズ大会をやっていたりするので、それに参加したりしています」
クイズ大会、ですか? おかしいですね、お姉ちゃんにその情報は入ってきていませんよ。また今度詳しく調べさせて貰いましょうか。
「あ……。み、みなさん……、すみません……」
さて、気を取り直していきましょう。
ラナ君の嫌いなものを教えて下さい。
「嫌いなもの……、幽霊や怪談話と、辛い食べ物ですかね」
幽霊や怪談話? ラナ君、怖いもの苦手なんですか?
「まあ、はい。そうですね」
怖いもの苦手なのにエニフルに来たんですね-。
「え? それってどういうことですか?」
……ふふっ。では最後の質問に行きましょうか。
「ちょ、ちょっと! なんなんですか!? 教えて下さいよ!」
ラナ君の好きな人のタイプは何ですか?! もちろんお姉ちゃんだということは分かっていますが、今回はそれ以外でお願いします!
「……はあ、そうですね。とにかくまともな人です。自分主体で行動すること自体は良いんですが、気分で言動を変えられたり感情論でものをいわれると困るので、そういう人はあまりお近付きにはなりたいとは思えませんね」
ほう、そうですか。確かに感情論に関しては、その人しか分かりようがないのでいわれても困りますよねー。
はい、ふむふむ、ほほう……、であればあの子とかどうでしょうか? いえ、あちらの子の方が良いでしょうか……?
「あ、あの……、もう最後の質問終わったなら行って良いですよね?
皆さんお付き合いいただきありがとうございました」




