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第1話 星間記録課

 宇宙に散りばめられたあらゆる未記録の星へと足を運び、その土地を調査・記録する者たちが集まる第3宇宙ステーション、『ログステーション・エニフル』。

 そしてここは、そのログステーション・エニフルの中にある星間記録課。通称星間リコレクターが集まる課である。


 星間記録課の職員は皆、選りすぐりの者ばかりで構成されており、通常は数人から数十人規模の職員で未記録の星へと赴く記録作業を、全員が単騎作業で行うことができる程の実力を持つ。

 そして、その中でも一際頭抜けている人物が居た。


 記録専用の媒体があるにも関わらず、普段からひとりだけ紙での記録書を作っている変わり者。


 彼女の名は『アステル=モシュメ』。


 肩を避けるように外側に毛先が跳ねた黄土色の髪。覇気のなく瞼が重く開かれた、黒い瞳の秘められた双眸。何を考えているのか分からない変化に乏しい顔。職員支給の袖口の広い服に隠されている、162cmの凹凸の無いスラリとした体型。

 見てくれだけでは優秀どころか、まともに職務を果たしているのかすら怪しい彼女だが、精鋭ばかりの星間記録課の中でも飛び抜けた身体能力、更には未記録の星への理解・適応も早く、未だ紙で記録を取っているにも関わらず、その能力の高さから星間記録課の管理・統率も擬似的に任されている。

 そして今、この記録劇の主役のひとりとなる人物をも兼任することになった。


 そんな彼女の居る星間記録課に、今日から新人が来る予定だったのだが……。






「──すみませぇーん! お、遅れましたあぁー!」


 ドア越しからでも分かる焦った声音とともに、荒く慌ただしい足音が迫って来る。

 その足音はドアに鈍い音を立てて止まり、一足遅れてドアが開かれると、黒髪の少年が額を赤く染め、目をぐるぐると回して倒れていた。


 倒れている少年のもとにひとりの男が歩いて行くと、男は自分の前の空間を1回、指で弾く。

 すると、男が叩いた場所にモニターが現れ、男はそのモニターに何かを打ち込み始める。


「“集合時刻より4分の遅刻をした新人の到着及び、ドアへの額強打による失神”っと」


「トロイ、変なことまで記録してないで、早く起こしてあげなよ」


 部屋の奥で本棚を整理してるアステルが振り向き、呼び少年を起こすよう促すと、トロイと呼ばれた男はモニターを手で払い除けて消す。


「こういうちょっとした記録も大事なんですよ。な? 新人君」


 トロイがそう倒れている少年に問い掛けて手を伸ばすと、少年はハッと意識を取り戻し、慌てて立ち上がる。

 身長は175cm前後だろうか。オドオドして不安げに部屋にいる者たちを見つめる少年は、初日から遅刻したことも相まって、とても星間記録課に配属されるような優秀な者には見えなかった。


「けふふ、トロんぼ、遅刻した新人に手を差し出すも無視され取ってもらえず。記録完了」


 少年が立ちすくんでいると、少年の後ろから、あからさまに人をコケにしたような態度の声が聞こえた。


「はあ、そういうことか。ていうか、その地球の楽器みたいな呼び方いい加減辞めろよな」


 トロイが何かを察してため息をついていると、開いたドアの後ろから桃色の髪を首後ろでツインテールに束ねた少女が、モニターを起動させたままニヤニヤと性悪な笑みを浮かべながら歩いてくる。


「無理無理、トロんぼはトロんぼだから。でも、どぉしてもヤダヤダって言うなら、アブって呼んであげようか?」


「お前それマグロの脂身だろ。トロイのトロは脂身のトロ、じゃねえんだよ」


「へぇ? よく分かったね。すごいすごい」


 少女は反論するトロイに対し「けふふ」と嘲笑うように笑いながら部屋の中を見回すと、記録書の整理の片手間に少年の方に顔を向けていたアステルに小さく手を挙げて指先をちょこちょこと動かす。


「ごめんなさぁい、ステ先輩。この子に色々説明しながら来てたら、ふたり揃って遅刻しちゃった。許して、ねっ?」


 少女はそう言って自分の頭をコツンと叩くと、舌を出して反省する気のなさそうな態度を取る。

 そのあっけらかんとした態度に、トロイは呆れてため息をついていた。


 アステルは本棚の整理が終わり、ドアの方へと体を向けると、


「別にいいよ、このあと急ぎ足で進めれば。それに、私も記録書の整理をする時間が欲しかったから」


 と、遅刻したことなどあまり気に留める様子もなく返し、部屋の中央にある大きな丸い机の前で寝ている男を椅子から落として座る。

 

 その様子を見て、部屋の中に居た者たちは少年を除き、全員机を取り囲むようにして席に着く。


「おい起きろ、時間だぞ」


 トロイはアステルに落とされて寝ぼけている男の頬を引っ叩いて起こすと、空いている席へと座らせ、自分もその隣に少年の目の前の席を空けるように座ると、アステル含め7名の職員が机を囲って座る形になる。


 少年は残りの3つある空席のどこに座れば良いのかと立ち尽くしていると、アステルは自身の対にある空席を手で示し、少年にその席へ着くように促す。


「どうしたの? 早く座りなよ」


 アステルに促され、少年は「は、はいっ!」と威勢よく返事をし、椅子の前まで行くと、突然足を開いて中腰になり頭を深く下げる。


「本日よりぃ星間記録課に配属となりぃやした。言葉之星地(ことのはのせいち)ぃイロハ出身、ラぁナデ=ワワイと申しぃやす。ご先輩方、これからぁご指導ご鞭撻の程、あ、よろしくお願いいたしぃやす」


 突然、やたらと舌の巻かれた喋り方で挨拶をしてきた新人に、その場に居た者たちは皆、呆然として新人を眺めていた──。


 ただひとり、新人を連れてきた少女を除いて。


「ぷふっ、あーはっはっは。ちょ、ちょっと待って、ほんとにやるとかあり得ないんだけど。ムリ、マジでお腹痛い」


 一瞬の静寂をかき消し、ピンク髪の少女が腹を抱えてひいひいと笑い声を上げる。

 その様子を見て、その場にいた星間記録課の殆どが「またか」と呆れていたがアステルだけはあまり気にする素振りを見せず、態度は一貫したままその様子を眺めていた。


「ノーティ、悪戯は程々にしないと嫌われるよ。えっと……ラぁナデ=ワワイ君、だっけ? さあ、早く座って」


「あ、はい。えと、ラナデ=ワワイです。よろしくお願いします」


 アステルに再び促されたラナデは先輩に遊ばれたと気付き、トロイとノーティと呼ばれた少女の間の席に座って縮こまる。

 来て早々からかわれたラナデは座っても隣の席に座るノーティに肩を叩かれ笑われており、そんなラナデを不憫に思い、トロイは反対側から肩に手を置き、ラナデを慰めていた。


「さて、みんな揃ったことだし、私の方から職員の紹介でもしようか。と、言いたいところだけど、早速ふたりが遅刻してくれて時間押してるから、後で個々にしておいてね。取り敢えず今は、お世話係を決めようか」


 アステルがラナデに職員に紹介をするが、殆どの者はアステルの話を全く聞いていなかった。


「……時間押してるの。これ以上ふざけてると怒るよ?」


 その様子を見てアステルが表情を一切変えずに宣言すると、話を聞かず遊んでいた者たちは膝に手を置き、すぐ様アステルに体を向ける。

 それでも尚、職員の男がひとりだけ気付かず寝ていると、トロイが焦って寝ている男の後頭部を叩いて起こす。


「お、おいマズいぞ、起きろバカ! 今度こそ本当に怒られるだろうが!」


「んあ!? ちょっと、辞めてよ。何なのさ」


 叩き起こされた男は、若干不機嫌そうに目を擦っていると、トロイは気まずそうに顔を伏せて震える手で机の先を指差す。

 男はトロイの指先をたどり視線を正面に向けると、笑みを浮かべているが目は全く笑っていないアステルと目が合い、男は肩をビクッと跳ねさせる。


「あ、えっと、おはよう……ございます」


「うん、おはよう。さ、この子のお世話係を決めようか。方法は、まあいつも通りのがみんなもいいよね? ……結果は目に見えてるけど」


 アステルが聞くと、まともに話を聞いていなかった者たちはうんうんと首振り人形のように何度も首を縦に振る。

 その様子を確認したアステルが息をつき「さん、はい」と掛け声を掛けると、


「トロイ」


「アステルさん」

「ステ先輩」

「アステルお姉様」

「ステさん」

「アステル殿」

「アステルぱぁいせ〜ん」


 アステル以外の全員がアステルの名を挙げており、少しの議論も重ねることなくラナデのお世話係は決まった。

 しかし、当のアステルはその結果を見て、気怠そうに机に頬杖をついてため息をつく。


「やっぱりこうなったか、みんな新人を育てる意欲が足りないんじゃない? 我こそはという子は居ないのかな?」


 アステルが不満を垂れていると、その場に居た全員が顔を見合わせ、程なくしてトロイが口を開く。


「そんな事言われても、俺ら全員アステルさんにやってもらってるし、新人の安全面も考えると、アステルさん以外に適任な人なんてこの星間記録課には居ないと思いますよ。できればまたご一緒したいくらいですし」


 トロイが言うと、残りの者たちは一斉にトロイの言葉に取り敢えず賛同をする。


「そ、そうそう! ここララちゃんしかまともな人居ないし、ここは経験の差と時間的にステ先輩かなぁ〜って」


「そうですね。わたくしはお歌のお仕事もありますし、アステルお姉様であれば新人さんも安心してお任せ出来ますし」


「まあ、それしか、無いだろうね。ここの人、ララさん以外頭おかしい人ばかりだし、消去法ならジュナさんも、それが良いと、思うよ」


「危地の調査で脅威から新人を守るには、圧倒的な筋肉が必要だ。この中では、俺様かアステル殿しかおらん。しかし俺様は、調査中も筋肉との対話(筋トレ)で忙しくお世話係をしている暇が無いのだ! プルハッハッハァー! 代わりと言っては何だが、俺様の筋肉()を見せ──」


「スラグ、脱ぐな」


「うるさい、眠い……自分じゃなきゃ誰でも良いよ……あ、良い、です……」


 アステルは、褒められて? 「そ、そうかな……」満更でもなさそうに頭を掻くと、先程までの気怠そうな雰囲気はなく、寧ろ少しばかりご機嫌になっていた。

 そんなアステルの様子を見て、ラナデを含めたその場の全員が同じことを思っていた。「この人ちょろいな」と。


 上機嫌になってへなへなしていたアステルは、「それじゃあ」と話を切り出すと、人差し指を立て机にトンッと小さく音を立てて置く。

 アステルの顔は薄っすらと笑みを浮かべており、ラナデ以外の全員はそのアステルの笑顔にどこか嫌な雰囲気を感じ取りながらも、アステルを褒め続けていた。


 そして──、


「星に行くとき、暇ができてた子はお世話係の練習も兼ねて、ひとり付いてきてもらおうかな。“またご一緒したい”んだよね?」


 アステルの言葉で、直前までアステルを褒めちぎっていた者たちは一瞬にして静まり返る。

 一番表情の明るかったノーティまでもが表情を無に帰し、深く息を吸い込み神妙な面持ちで指を組む。


 その様子を見てアステルは深くため息をつくと、手のひらを上に向けて肩を竦める。


「まあ、今回はみんなも忙しいだろうし、私ひとりで連れてくとするよ」


 そのアステルの一言により、張り詰められていた空気感は少しだけ緩む。

 ただ、当のラナデだけは今何か行われているのかと、頭にハテナを浮かべて話し合いの様子を眺めていた。


「ねえねえステ先輩、今回はどの星にラナデ(この子)を連れてくの?」


 アステルの調査に同行させられないことが分かり、ノーティは元気を取り戻して机に身を乗り出しながらアステルに聞く。


「ああ、それについては──」


 アステルがそこまで言うと、突然机の中央に満面の笑みを浮かべた女性が現れる。

 小さく動く度にそっと肩を撫でる、明るく紫がかったしなびやかな長髪に、身に纏う純白の衣はまるでベールのように見え、その衣を突き破るが如く豊満な乳房は、まるで重力を感じさせないほど美しい張りを見せていた。


 女性が現れて訪れたの静寂の中で、女性はラナデに視線を落とし優しく微笑むと、そっと目を閉じ──、


「はいはーい。ここから先は、このメモリーお姉ちゃんが説明しちゃいますよぉー! 今回シュメちゃんと新人のラナ君に記録してもらう星はー……」


 突然現れたその女性は、自身をメモリーお姉ちゃんと言い、アステルの話を半ば強引に引き継ぐと、メモリーは全員が自分を見ていることを確認し、手のひらを二度合わせて軽快な音を鳴らし、モニターで丸い何かを映し出す。


「じゃじゃん! 『水没星すいぼつせいバルパ』でーす! 『海洋惑星』ではないですよー」


 球体にひらひらと両手を振りながら星の名を発表すると、メモリーの姿がヒゲメガネをつけたものに移り変わる。


「メモ姉、今日は時間巻きでね」


 アステルが人差し指を軽く円を描くように回して言うが、メモリーは既に手に薄い板のようなものを持ち、顎に手を当て「ふむふむむ……」と白々しく読む仕草を見せていた。





 ──メモリーが何かを読み始めてからのやたらと長い待ち時間を、職員たちはいつも通りの軽い雑談や、ラナデとの自己紹介等をしながら過ごす。


「俺はトロイ=ルガシア。ノーティ(そこのチビ)はふざけた呼び方してるが、普通にトロイと呼んでくれ」


「はぁ!? 今トロイ(お前)あたしのことチビって言った?! ねぇ言った?! あたしはこれから成長期に──」


「それでも俺からしたらチビだ、チビーティ。──まあこんなやつはほっといて、よろしくなラナデ君」


「はい、よろしくお願いします。トロイ先輩」


 トロイとラナデは憤慨するノーティを他所に握手を交わす。


「ちょっと! まだあたしが話してたでしょ!」


「うるせえ100センチビ」


「こんの野郎、なんだセンチビって! それに、100cmじゃなくて100.“4”cm!」


「そんなの誤差だ」


「誤差じゃない!」


 そんなやり取りを続けながら何十分も経った頃、ようやくメモリーの果てしなく長い読み時間が終わり、メモリーは再び全員を自身に注目させる。


「はーいみーんなー、お姉ちゃんにちゅ〜もーく。今回ふたりに行ってもらう星、『水没星バルパ』はなんと! 約1.8光年。分かりやすく言うと、約17兆300億km離れた宵蛍恒星群にて観測された星です! はい、意外と近くで観測できました」


 メモリーは今一度職員たちに目を見やり、コホンと咳払いをすると「そして」と話を紡ぐ。


「天体邂逅部、先行調査課の調査報告書によると、“元々バルパに栄えていたであろう文明の殆どが、水の中に沈んでしまっている星。完全に乾燥した陸地は、星の1%未満と予想される”。だそうですよー。やーん、泳げないメモリーお姉ちゃん大ピンチ! きゃっ」


 思っていた数十倍短かった説明に、ラナデはあの長い待ち時間は何だったのかと不思議に思っていると、そんなラナデを見てトロイは、


「恒例行事みたいなものだから気にしなくていいぞ」


とメモリーに聞こえない程度の声で耳打ちしていた。


「そこ、ちゃんと聞いてますかー? 全ての情報は記録できなくても、“星主”だけは観測してきてくださいねー」


 それからは、残りの職員たちの行き先を発表し、メモリーが「ばいばーい」と全員に手を振って姿を消すと、各々が席を立ち星に赴くための準備をし始める。


 ──そして、ラナデが荷物を準備していると、後ろから声を掛けられる。

 振り返るとアステルが立っており、アステルは既に、腹部まで届かない長さの前開きの透明な服を着重ねたチューブトップにショートパンツ姿という、かなりの軽装に着替えを済ませていた。


「ラナデ君、星の調査では食料などはその星で調達するし、帰る時に持ち込んだものは持って帰らなければならない。だから余計な物は持って行かず、荷物は嵩張らない程度にしときなよ。持って行くとしても、星に着くまでの3日分の食料だけにしておいてね。それと、今回は水没星ということだから、勿論水中の調査をすることになる。念の為、撥水または耐水性の服と水着を持参しておくように。準備ができ次第『船着き場』においで」


「分かりました。にしても、こうしてみると何だか遠足みたいですね」


「確かに、聞くだけではそう思うかも知れないけど、遊び気分で行くと普通に命を落とすよ。遠足なら帰るまでが遠足だからね」


 初仕事だと張り切って大きなバッグに荷物を詰め込むラナデにアステルは言うと、紙の記録書と小さなバッグだけ持って部屋を出ていった。





 ──ラナデはアステルに言われた通り、荷物を自分なりにバッグに最小限にまとめて行くと、アステルは上部が厚いガラスで覆われたサイドカー付きのバイクの前で、記録書に何かを書いて立っていた。


「船着き場って言ってた割には、船だけじゃないんだ……」


 アステルはラナデの声に気付くと、記録書を閉じ小さなバッグにしまう。


「来たね。このバイクは私の愛車、ブリちゃん。この子に乗って星まで行くよ」


「ぶ、ブリちゃん、ですか……」


 ラナデがアステルの何とも言えないネーミングセンスへの反応に困っていると、アステルはバイクのガラスを円を描くようになぞる。

 すると、ガラスに円状の穴が開き、アステルはその穴をくぐって乗り込み座席に跨る。


 ラナデはどうしていいか分からずバイクの前で立っていると、アステルは手招きをしてラナデにサイドカーに座るよう促す。

 ラナデは同じようにして円を描いてガラスを開くと、ガラスをくぐってサイドカーに乗り込む。

 すると、直ぐにガラスの穴は閉じられ、ラナデは荷物を足元に置いて腰を下ろす。


「ガラスで覆われてはいるけど、宇宙ゴミにぶつかると割れるかもしれないから、一応ヘルメット着けてね」


「あ、はい」


 ラナデが足元にあったヘルメットを手にとり頭に付け終わると、それを確認したアステルはハンドルを握り、バイクのエンジンを起動させる。

 バイクが少しずつ前に進んでいくとやがて、ログステーション・エニフルの出港口をくぐり、広大な宇宙に身を乗り出す。


「さあ行こうか。君の、リコレクターとしての初仕事へ──」


 アステルたちの乗ったバイクはログステーション・エニフルを離れ、未記録の星『水没星バルパ』へと足を進める。

 第1回 メモリーお姉ちゃんの豆知識!


 『ログステーション・エニフル』について


 私たちの生活しているログステーション・エニフルは、リミニクラ超銀河団・己樹このたつ座銀河団・いさたる銀河群・流れ雲銀河・リライナ腕・光陽系に位置している第3宇宙ステーションです。えっ? 何を言ってるのか分からない? ですよねぇー分かりますよー、長いですよねー。でもでも、頑張って覚えていてくれたら、お姉ちゃんがいい子いい子してあげるかもですよぉー! まあ、触れないんですけどね。


 さてさて、エニフルでは、ログステーション確立後より『星暦』・『記録紀』という形式で計測開始。現在星暦14072年、141記録紀となっており、1ログステーションにつき観測可能範囲7165億光年以内での極超新星爆発を観測し次第、次の記録記へと移り変わるものとなっております。

 そして、ログステーション・エニフルに住む人々は種族問わず様々な星の子たちが集まり、ミリニクラ超銀河団だけに留まらず、他の銀河系にある2つの宇宙ステーションと連絡を取りながら宇宙の果てまで未記録の星を探し、“中枢記録システム・メモリー”に記録するお仕事をしております。


 大きく分けると、このお姉ちゃんことメモリーコア管理や、エニフル全体の指揮・稼働状況を管理する中枢管理本部。


 未だ見ぬ星を観測・発見したり、未開の星が調査可能か一度降り立ち、大気に異常がないか等を事前調査してくれる天体邂逅部。


 エニフルに住まう子たちのために日々美味しいご飯を作ったり、エニフル内の清掃等をしてくれる生活管理部。生活管理部の中には、宇宙を回遊する賊や危険生物から職員を守ってくれる保全課なんかもあります。


 それから、実際に未記録の星へと降り立ち、その星の大まかな生物の生態系・地理的分布や歴史などの情報を記録する記録調査部。この子たちは通称『リコレクター』と呼ばれています。

 この中でも、エニフルでは単独で星の調査できると判断されるほど一際優秀な子たちが星間記録課に配属され、『星間リコレクター』の称号を得ます。


 そして、調査中の記録調査部の行動申請受付や、提出された記録の情報を纏め、整理・処理をしてくれる記録処理部。


 最後に、記録された星の地層や生態系などをもとに、その星の生物の特徴や星の過去を追究し仮説立てをしたり、採取したサンプルで実験などを行う記録研究部。

 記録研究部の人たちの中には自分たちで星に赴く子も居まして、その子たちがさらなる未記録の生物を見つけたりします。

 と、大まかに分けるとこの6つの部署に分けられます。


 そして、職員がどの部の子かを判断するために、ログステーションでは職員1人ひとり支給の特製の服に記されいる、腕周りの色彩で判断しているんです。星間記録課の子たちは青、黄の2重線マークですよー。

 首元でも良かったのですが、首元にすると、肌の色が青だったり赤だったりする職員の子がおり、他の部と間違えられてしまうということが多発してしまったため、今では腕周りにマークしているんです。

 因みに、職員支給の服は生活管理部、裁縫課が1つひとつ手編み・手織りで丹精込めて作ってくれています。ちょっとしたアクセントくらいならオーダーできちゃいますよ! お姉ちゃんも欲しいですねぇー。まあ、着れないんですけれど。






 あのー、ここだけの内緒話なんですが、実は、生態系を故意に崩して回るようないけない職員やその星の者でない人に対して罰を与えたり、エニフルに攻撃を仕掛けてきた星を迎撃、最悪の場合記録を──。


 記録はここで途切れている。

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