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花の贖罪 笑えと貴方は言った  作者: 雛雪
プロローグ
8/15

第七章 迫る影と揺れる心

再び霧が深く立ち込める森の中、さきほどの追跡者たちの気配がまだ消えていない。

カインは冷たい視線を周囲に走らせていた。

リリスもまた、心臓の鼓動が速まり、息を呑む。

信頼にはまだ程遠く、互いの間には見えない警戒の糸が張り巡らされていた。


「……この先、どうしたい?」

カインが少し距離を置いて問いかける。

リリスは目を伏せて答えた。

「怖い。でも、立ち止まったら、もう二度と動けなくなる気がする……だから、今はあなたと一緒に進みたい」

カインは無言でうなずき、そっと背を向けた。彼の動きに合わせ、リリスもゆっくりと歩き出す。

歩みながら、カインは言葉を選ぶように口を開いた。

「敵か味方かなんて、もう俺には重要じゃない。俺は……目の前の現実を見失いたくないだけだ」

その言葉には、まだ完全に心を開ききれない自制心と、未来への重責が滲んでいる。感情のままに動くことが許されない彼の苦悩と覚悟が、言葉の端々に隠れていた。

リリスはその微妙な距離感を感じ取りながらも、胸にわずかな温かさを抱いた。


森の奥で、不穏な足音が遠ざかっていく。

二人は互いに距離を保ちながらも、静かに息を合わせて歩みを進めていった。

彼らの心の距離はまだ遠くても、同じ闇の中を共に歩くことで、少しずつ近づいていくのだった。

それはまだ名もない絆だったが、確かにそこに芽吹き始めていた。

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