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花の贖罪 笑えと貴方は言った  作者: 雛雪
プロローグ
7/13

第六章 静寂の狭間

森の中は深い静寂に包まれていた。

カインとリリスは大樹に身を寄せ、互いの呼吸だけがかすかに聞こえていた。

リリスは手を握りしめ、カインの横顔をぼんやりと見つめる。

彼の煌めく碧色の瞳はどこか遠くを見つめていた。

「俺たち、まだほとんど知らないな」

カインがぽつりと呟いた。

リリスは小さく笑みを返す。

「そうね。あなたのこと、何も知らない。だけど、今は……信じたい」

カインの肩がわずかに揺れた。

「俺もだ」

しばらく二人は言葉を交わさず、森の音に耳を澄ませていた。

遠くで鳥の声が響き、風が葉を揺らす。

だが、その静けさは長くは続かなかった。

「気をつけろ」

カインの声が鋭くなった。

暗がりからにじみ出るように現れた黒衣の影。

その輪郭は人間のようでいて、どこか歪み、月光の下でぼんやりと揺らめいていた。

「隠れろ」

カインはリリスの手を引き、より深い朽ちた倒木の陰へと身を隠した。

リリスの心臓は激しく打ち、恐怖が波のように押し寄せる。

それでも彼女は、カインの背中を見つめながら強く思った。

『私は……長い間、ただ流されていた。けれど、今は違う。誰かのために、生きたい。守りたい』

その瞬間、黒衣の者たちの声が森に響き渡る。

「お前たちに逃げ場はない。ここで終わるのだ」

カインは剣の柄に手をかけ、リリスに囁いた。

「今はまだ、戦う時じゃない。だが……必ず、守る」

彼の言葉は確かな約束だった。

闇の包囲網が徐々に狭まり、森の中に緊張が走る。

闇に包まれながらも、二人は背を預け合い、静かに息を合わせた。


――戦いはまだ遠い。だが、決して逃げはしない。

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