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花の贖罪 笑えと貴方は言った  作者: 雛雪
第十章
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静かな波紋

エヴァの声が消えたあと、館の中に重い静寂が降りた。

リリスは目を伏せ、あえて言葉を紡がなかった。

胸の内に秘めた痛みを言葉にすることは、まだできなかった。


「どうして……どうしてあなたがここに?」

エヴァの問いは、鋭くも、どこか脆かった。


リリスはかすかに息を吐き、震える声で答えた。

「生贄とされて、私は……死ぬはずだった。けれど、何かが私をラフレアの森に留めた。

離れられなかった。理由はわからないけれど、そこにしか居場所がなかったの」


エヴァは視線を落とし、苦しそうに唇を噛んだ。

「あなたがいなくなって、私はずっと胸に重いものを抱えてきた。

あなたがいない中で生きるのは、想像以上に辛かった……」


カインは二人を交互に見つめながら、わずかに視線を逸らした。

何かを言いたげに口を開いたが、結局、何も言わずにそっと息を吐く。


その静けさの中で、リリスはほんの少しだけ息をついた。

その沈黙が、確かに今は必要なものだった。


だが、館の外には重く暗い影が忍び寄っていた。

侯爵家の者たちの間にも、リリスの存在を快く思わぬ者がいる。


この静けさは、一時の夢に過ぎない。

リリスの新たな物語が、ここから静かに、しかし確かに動き出していた。

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