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始まり
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――エンソーフ王国。
四季がめぐり、実りが絶えぬ大地。
世界花ラフレアの加護により、戦の影さえ遠ざけられた国。
だが、その花は咲くだけでは生きられない。
愛されるには、代償がいる。
ある日、預言者イエホムが王城に現れた。
「ラフレアは飢えている」と告げた彼の声は、冷たい風のように王国を駆け抜けた。
「生贄の乙女は、銀の髪に紅の瞳を宿す者――四百二夜の月影を浴びし、ただひとり」
その条件に該当するのは、双子の姉妹――リリス・アツィルトと、エヴァ・アツィルト。
選ばれるのは、どちらか一人。
選ばれぬ方は、すべてを残して生きる。