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マミ

昔のことをあまり教えてくれへんお母さんが唯一教えてくれたんは、

お兄ちゃんとお父さんは血が繋がってへんゆうこと。


お母さんは18ん時にお兄ちゃん産んだと話してくれた。


「子供でけたゆうても逃げん人やと思てたんやけどなぁ。

まぁ、うちから声かけて無理に付きおうたさかい、しゃーないって感じやん?」


初めてお兄ちゃんには別のお父さんが居ると教えてくれた時、

こうわろて教えてくれた。


こないな繊細な話をわろて話すなんてと思たけどな、

前向きで大らかなお母さんらしい教え方やとも思った。


「お父さんもな、ほんまはもっと優しい人なんよ?

連れ子がおってもかまへんゆうてたんやけど、そううまくいかへんわなあ」


優しいお父さんがお兄ちゃんにだけ優しない理由がよう解ったし、

お兄ちゃんに感じた、お友達と同じ感じも解った。


半分、私と違う。それが変な感じに感じたんやろな。


そんで変な感じが取れると、今まで距離置いてたんが嘘のように、

私はお兄ちゃんのことが気になって仕方なかった。


普段は優しくないお父さんと一緒であまり話してくれずに無視ばっかり。


勝手に部屋に入ると無言で押し出されたりなんてのはしょっちゅうあった。


でもこっそりお菓子を食べさせてくれたり、少ない玩具を使わせてくれたり、

優しいところも知ってからは、もっとお兄ちゃんが大好きになった。


でもあの日、車に気付かずに飛び出した私を庇って、お兄ちゃんが身代わりになった。


お母さんはずっと私のせいじゃないと言い聞かせるようにゆうてくれた。


でもお母さんも辛かったんやろ。精神的に病んでしもたんやろな。


その日から徐々に寝込むようになってしもた。


そこに追い打ちをかけるように、お父さんの異常な看病。


お父さんも変わってしもたと、子供でもよう理解出来たわ。


いや、元からそやったけど、その時ようやく理解出来たんやろな。


「お母さんみたいに、可愛くなるんだぞぉ」


お父さんはお母さんみたいな人に囲まれた幸せな家族を願っていた。


だからお母さんに似てないお兄ちゃんを嫌ってたんやと気付いた。


子供でも理解出来たんやから、お母さんも気づかへんわけない。


それから今まで聞いた事ないような声で言い争いもするようになった。


そんな言い争い聞かんよう、耳塞いで隠れたりもしたな。


そんな日々が数年続いたある日、お母さんは私に話してくれた。


「お兄ちゃん育てるんに疲れとったんやろな。ちょっと優しゅうされて、

ちょっと稼ぎがええからって簡単に選んでしもたんが間違いやったんやろな。

……ミズキ、タケヒトゆう外国人っぽいのに日本人みたいな名前で名乗る

お母さんと同じ年くらいの人に出()うたら、伝えてくれへんかな?」


弱気な感じがするお母さんは初めて見た気がするからよう覚えてる。


「マミはリリの代わりにならへんゆうんは解ってたけど、黙って消えるんは傷ついた。

まだ怒ってます。化けて出てほしゅうないならマミの子を頼む」


今思えばお母さんは死期を悟ってたんやな。


その後数日で帰らぬ人になってしもた。


それからは皆が知っとる通りになるな。




ミズキの話から、母親、マミは娘にも過去の話はあまりしなかった。


けれど数少ない話からタケヒトと名乗る人物、外国人っぽい見た目。


名前は偽名だとすると外国人っぽい見た目が手掛かりになる。


が、この程度は大量の人間を指し過ぎて難しい。


もう一つの手がかりと思われるのがリリ。


言い方から人の名前を指していそうだが……


「タケヒトとはお兄さんの父親でしょうか?仮にキョウ・ネリウムと

同一人物なら、あなたのお母さんは魔法使いとして覚醒していたでしょうね」


「どうして……でしょうか?」


ミズキはアローニャの見解に疑問を持つ。


「魔法世界で確認されている魔法使いとして覚醒する条件の一つ、

魔法使いと親密な関係を築いた場合、覚醒する可能性が非常に高いのよ」


親密な関係、子供を作るくらいの関係はそう言えるだろう。


「そして、魔法使いの子供は家族という親密な関係だから、

魔法使いとして覚醒しやすいことも意味しているわ」


これならミズキが魔法使いとして覚醒したことも説明がつく。


「え!?……は、はい」


突然スプニールが声を上げた。


どうやら急に念話が入ったようだ。


そしてその声を全員に聞こえるようにする。


「オリエン・ネリウムです。そこの地球人の子」


どうやらスプニールは話を聞かせていたようだ。


彼女の母でキョウの姉に当たる人物に。


「あなたの母君はリリの代わりと言ったの?」


「は……はい」


「!?あの子は……まだ……!?」


オリエンは何かを悟ったように言葉を詰まらせた。


「何かあったのですか?」


「あ、あなたにも……関係ない事よ」


娘にも話せないなんて何を隠しているんだと疑ってしまう。


「それよりも、同じ地球人なら兄弟関係を調べることが出来るのでは?」


「あ、ああ。DNA鑑定。俺とミズキなら問題無いのか」


トウヤは全員に兄弟関係が知れる方法が地球にあることを話し、

時間が必要であることから、その話は一度終わりとなった。




キョウに対する対策だけは今すぐにでも決めなければならない。


「今回の襲撃から、相手はミズキさんの力を欲していることが考えられます。

そして仮にトウヤ君がキョウの子供であれば、同様のことを考えているでしょう。

よって、お二人とも局内で保護が妥当ではないでしょうか?」


「同感だな。相手が欲しがるものをわざわざ外に出す理由が無い」


アローニャとステラは二人を局内に置き、相手の手に落ちるのを阻止する考えのようだ。


「ちょっと待ってください!そんなことされたら……」


ポーラはそれを止めたいが、こちらは個人の都合だ。


同じギルドのメンバーだから思い入れが強いのは確かだし、

ポーラのギルドは人数が少ないので一人欠けるだけでも大損失だ。


アローニャやステラを説き伏せる言い分が弱い。


そう言い淀んでいると、外が騒がしくなってきた。


「何事だ?」


ステラの問いと同時に通話先の一部から爆発音が聞こえた。


「は?局に正体不明の襲撃者!?」


この声はセレスのようだ。


相手の声が聞こえないということは、離れた場所で話しているか、念話だろう。


「局が襲われた!?」


今度は別の声だ。


「何が起こっている?」


その誰かの問いに答えるようアラートが鳴り響く。


「緊急招集!!時空管理局に襲撃者あり!魔導士は局に――きゃ!!」


爆発音と悲鳴が同時に響き、突然切れた。


「最後の声、ウィンリーだよね?」


聞き馴染みのある声だった。


「全員、局に戻り応戦しろ!」


ステラの一喝と共に通話が全て切れた。


「私達も行くわよ!」


全員が立ち上がり局へ向かおうとする。


トウヤが立ち上がると同時に、ミズキがトウヤの腕を掴んだ。


「私も連れて行って!」


「は!?戦えない人を戦場に連れて行けないよ」


「後ろの方でいいんです。連れて行ってください」


「……」


返事に困ったトウヤはポーラに助けを求めたが、首を横に振られた。


そうだよなと思っていると、リンシェンから提案があった。


「だったら魔力を分けるのはどうにゃ?」


「お前、人を道具のように……」


リーシャは呆れたように否定したが、マリアがリンシェンに乗った。


「だったら私の空間で魔力を分けながら戦線にいるのはどう?」


ミズキの高い魔力が使えるのは有り難いし、マリアの空間はいざという時の逃げ道になる。


どちらも戦場の生存率を跳ね上げる提案だ。


「道具みたいに使うのはよろしくないけど時間が無い。それでいこう」


ポーラの判断で連れて行くことが決まった。


「だったら、移動はこっちが速いよね」


マリアが空間の入り口を作り、全員を入れた。


確かに知っている場所同士の空間転移は距離を無くす。


「局から少し離れたところの上空に繋ぐわ。状況を見て呼んでね」


マリアが出口を開くと各自飛び出した。


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