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訪問者2

「お母さん……だと!?」


男も意外な答えだったようで驚いている。


マミとはミズキの母親の名前のようだ。


男は封絶に干渉した連中の仲間と思われることから、

魔法世界の人間であることは間違いない。


ミズキは初めて魔法の存在を知ったばかりであることから、

魔法とは関わりの無い生活をしていたと思われる。


そのことから母親も同じはずだ。


互いに住む世界が違う人間同士、ここで言う世界は惑星単位で変わるのに、

面識があるような反応。ますます訳の解らないことになってきた。


だが男だけはこの状況を理解したようだ。


「なるほど、あの時の子供か。ならば反応にも頷ける」


男の中だけで疑問に結果が紐づいているようだ。


「だが地球ではあれから十五年ほど過ぎている。お前は少し幼いように見えるが……」


呑気に考察している様に見えるが、隙が無い。


というより圧倒的強者だからこそ、今攻められても余裕で対処出来る、

だからじっくり観察して考えているという感じだ。


「ふむ、お前はもしかして二人目か?」


ミズキがビクリと反応する。


男は正解にたどり着いていると考えるとさらに考えを言葉にした。


「兄か姉か、そいつがマミの面影を宿すお前というわけか」


男は視線をトウヤに向ける。


「そんなわけない!私はお兄ちゃんが棺に入るのを――」

「ミズキ!!」


何も知らないミズキがいろいろ教えてしまわないようトウヤは大声で止めた。


「本当にいたようだが、そいつは死んでいる。そしてお前はよく似た人。

そんな偶然の確立よりも、もっと確実な答えがあるじゃないか」


男は確信があるようにニヤリと笑った。


「取り違えられてお前はマミの子供と認識しないまま育ったんだ」


そう結論付けると男はトウヤを捕まえようと歩み寄り手を伸ばす。


だがその手を払い除けるように何かが通る。


(スプニール!?)


槍で腕を切り落とそうとしたが、その前に腕を引かれ男は無傷だった。


スプニールは続けて数回の高速突きを繰り出す。


しかし全て躱されたようだ。


「スプニール、無駄だということがお前ならわかるだろ?」


男は突き出した槍を掴み、動きを止めるとスプニールの腹を蹴り、横へ飛ばした。


「うぐぁ!」


魔法で体を守っているはずのスプニールからうめき声が聞こえ、大きく吹っ飛んだ。


「スプ――!?」


スプニールの元に駆け寄ろうとした瞬間、首元に刃物を突き付けられた。


男は蹴り飛ばしたスプニールから槍を奪い、その刃先をトウヤに向けたのだ。


スプニールの守りを簡単に突き破り、トウヤを自由に動けないよう制限させる、

無駄な行動が一切無い動きに、その男の圧倒的強さを感じた。


それだけの強さを持ち、スプニールが積極的に討ち取ろうとする人物に心当たりがあった。


「キョウ……ネリウム」


男は感心したような顔をするとニヤリと笑った。


「お前はあの女より事情を知っているようだな。なるほど。

七剣徒(セプトレア)というわけじゃなく、俺の面影を感じて付いていただけか」


断片的な情報から相応しい結果を導き出し、現状を正確に把握している。


かなり頭の切れるタイプのようだ。


「ご名答。俺はあいつの叔父だ」


男、キョウは身分を明かすと大声で指示を出した。


「マミの子供は生きて連れて帰る!それ以外は好きにしていいぞ!」


その指示に従いゾロゾロと人が現れた。


仲間はこれだけじゃなく、潜んでいたようだ。


(俺達より多い!)


戦えないミズキを守りながらこの人数。


さらに目の前には元七剣徒(セプトレア)筆頭。


絶望的な状況だ。


どう動くべきか考えているとキョウは槍を振り上げた。


「お前は動かれると面倒だから寝てろ」


周りに気を取られキョウの行動に反応出来なかった。


(しまった!)


トウヤの頭に振り下ろされた槍は、割り込んできた物に当たり砕けでしまった。


そして割り込んできた物はトウヤを掴み、勢いそのままにキョウから引き離した。


「リヤナ!?」


「何呆けてるの?一瞬の油断が命取りよ?」


リヤナの一喝で戦闘態勢に切り替える。


「リヤナ……第七位か。七剣徒(セプトレア)が二人いたとは意外だな。

だがその程度で勝てるとでも?」


「さあ?どうでしょうね?異能にも相性があるから絶対は存在しませんよ?」


「うむ、良いこと言う、な!」


返事と共に殴り飛ばそうとしたが、姿が消えた。


何が起きたか一瞬理解出来なかった。


「キョウ様!あいつら全員消えました」


「ほう、こっちだけじゃなく全員か」


姿が見えなくなっただけじゃない。気配も全て消えている。


「なるほど、面白い能力を持った奴がいるようだな」


急に封絶が解かれた。


つまり


「逃げたと言う事か」


臆病なのか潔いのかはわからないが、知らない魔法がまだ隠れていたようだ。


「どうしますか?」


「逃げたなら局だろうから手出ししづらい。このまま撤収だ」


ここまで上手く逃げられるのは予想外だった。


麗王(れいおう)に匹敵する魔力だから自分が出た方が確実だと思い、

奴らの前に出たのは失敗だった。


これで警戒されるし、七剣徒(セプトレア)もすぐに出てくる可能性が高いだろう。


だが新しい情報も得られた。


マミの子供が二人。


一人出来たら上出来だったのに二人とは。


それに二人目が居るということはマミ自身もということになる。


「あの時連れて行けてたらな」


キョウは思い出の地で過去を思い出してしまった。




急に景色が変わると、爆発の不意打ちを食らった面々が目の前に現れた。


「マリアの転移!?みんな無事だったのか」


少し怪我をしたようだが、全員無事のようだ。


「ポーラ!こっちに来てくれ。マリア、もうひと踏ん張りだ」


「ま、待って、キツイ」


劣悪な環境で魔法の連続使用。


魔力がそこまで多くないマリアにはかなり重労働だ。


「私達の魔力を使っていいから、封絶を解くだけはやっておかないと、

あいつら逃げたと思わないんだよ」


この作戦の発案者だろうミナがマリアの背中に手を当てる。


「腕だけで十分だから」


マリアはもうひと踏ん張りでこじ開け、その穴からポーラは封絶を解いた。


「ああ!地球で魔法を使うのがこんなに辛いなんて!」


暴走の件、そのまま地球に留まり、そして今回。


さらにこの空間の維持。回復無しですごく頑張ったと思う。


「そうだ、スプニールは?」


「大丈夫よ、お腹を蹴られただけだから」


リヤナが指差した先でスプニールは横になりながら休んでいた。


「だけって、嫌な声が出るほどだったみたいだが……」


本人が大丈夫ならそれで良い。


「それで、今回の件、しっかり起こったことを確認したいんだけど、

あなたは落ち着いたかしら、ミズキ?」


スプニールの言葉に、全員の注目がミズキに集まる。


その目線に体をビクリと動かし、震え始める。


「待って。いつまでもここに居ることは出来ない。

一度局に戻ってからで良くない?ミズキも心の準備が必要だろうし」


「そうね。この空間も無限じゃないし、しばらく待っていただけませんか?」


トウヤの提案に乗るように、ポーラがスプニールに頼み込む。


「わかったわ」


スプニールは返事をすると再び横になった。


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