表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

封印作戦

力が安定し始めたのか水の蔓の動きが早くなってきた。


「リリスは水球の方を狙ってくれ!」


指示を出しながら戦うのも慣れてきた。


リリスは水球を切り刻む回数を増やし蔓の数を減らしている。


リンシェンも近づく蔓は風で切断し、上手く躱している。


「そろそろいいんじゃにゃいか?」


「そうだな」


トウヤとリンシェンは互いを確認すると大きく振りかぶった。


そしてその振りかぶった先にある水球を真っ二つに割った。


しかも複数個同時に割った。


トウヤとリンシェンは躱しながら一直線で割れる場所を探していたのだ。


それと同時に割った水球が元の形に再生するまでの時間を確認していた。


再生までの時間はわずか数秒。だがその数秒は魔導士にとっては大きい。


その数秒は操作出来る蔓の数は減る。


しかも複数個の水球なら大幅に数を減らすことになる。


その減らしたわずか数秒をトウヤとリンシェンは狙っていた。


素早い二人ならその数秒で相手に近づくことは簡単だった。


これで作戦の第一段階はクリア出来た。




ウォーターカッターも水の蔓も自分自身を巻き込む可能性があるので使えない。


そして放出系魔導士は遠距離を得意とするため、接近戦は出来る選択肢が大きく減る。


これで状況はかなり有利な展開になる。


だが相手もそんな簡単には終わらない。


水を鎧のように纏い、そこから太い腕のようなものを伸ばした。


「こんにゃもん今さら――!?」


リンシェンが水の腕を風で切断しようとしたが弾かれた。


「なるほど、大量に詰まってるんだな」


水は密度が非常に高い。


殺傷能力の高い銃弾も数mで止まってしまうほどの抵抗力がある。


そんな水を狭い範囲に大量に詰めれば、風の刃も、金属の刃も通さない壁になる。


そんな水の腕を振り回してきた。しかも早い!


デバイスを取り出し、その腕を受け流す。


「重い!ギリギリだ!」


密度が高い。それは重さにも繋がる。


振り回せる程度の重さだと思ったが、それは大きな勘違いなようだ。


「だが、硬いにゃらそれが欠点にゃ!」


リンシェンは腕の動きに合わせて根元の方に近づく。


受けるには硬く重い腕もそれを支える根本に近づけば重さは大きく変わる。


「ここは重いと大変にゃ」


リンシェンは根本を蹴り上げる。


するとバランスを崩したように腕が落ちた。


「こいつ、意外と軽いにゃ」


水を密集させた腕はかなりの重さだが、本体はそこまでではないようだ。


つまり移動の余地を捨てていない。それは有り難い情報だ。


あの子は近づいてきたリンシェンを脅威と感じたのだろう。


距離を取るために動き出した。


「よし、ミナ!」


あの子が横に動くと同時に爆発が起こった。


命中はしていないが動きが止まった。


これを危険と判断したのだろう。


今度は反対方向に距離を取ろうとする。


「ルー!」


今度は魔法弾が飛び、あの子の行く手を阻む。


ミナとルーの砲撃で横の動きを制限させた。


「これで残る選択肢は……」


あの子は大きくジャンプして上へ逃げようとする。


(かなめ)!トランスフォーム!!水鳴(みずな)り!!」


トウヤは先読みしていたようで、上で構えていた。


そして水を纏ったデバイスを両手で振り上げる。


直爆(ちょくばく)一閃(いっせん)!!」


振り上げたデバイスを力一杯彼女に叩きつけた。


水鳴みずなりは剣のデバイスだが、刃は水で作る。


今回は刃は無く、ただの棍棒のように扱ったため切れる心配はない。


さらに水の鎧に水で叩きつけた、衝撃はあるが大したダメージは無い。


叩きつけたことで彼女は真っ逆さまに落ちていく。


そこでリンシェンが待ち構えていた。


「向き逆にゃ~!」


ポンポンと音が鳴ると彼女の体が回る。


リンシェンからしてみたら、向かい合った状態が理想らしい。


ちゃんと教えてくれ。


ってかしっかりと対策しているんだから問題ないと思うんだが。


「ま、おいらに任せるにゃ」


リンシェンは構えると、かるくジャンプする。


飛走(フェイゾウ)!」


彼女に触れるとロケット噴射のように彼女が飛んで行った。


「よし」


トウヤは予定通りの場所に飛んで行ったことを確認した。


これで第二段階クリアだ。




彼女が飛んだ先には壁があった。


「来たぞ!」


ファイゼンの合図と共にポーラ、リーシャ、リヤナが構える。


そして彼女が衝突すると同時に壁が倒れないよう支え、ファイゼンが壁の形を変える。


他に飛ばないように囲うと同時に壁の反対側からも彼女の位置が分かる様にした。


そして彼女の足部分の壁を取り除いた。


「ふうん、良い連携じゃない」


リヤナはそう呟くと彼女の足を掴んだ。


そして両手で完全に覆うと、そこから足先に大きな変化が現れた。


完全には失われていないが、水の鎧も、黒い暴走の魔力も剥がれ、生身の足が現れる。


初心者魔導士に多い、魔力操作の不慣れによる影響だ。


魔力は基本体の何処からでも外に放たれる。


だが慣れなければ足先や手先は不安定になり、思うように魔力を放てないのだ。


その為、初心者や暴走は上半身から体を覆うように魔力を覆うことが解っている。


それを利用してリヤナの異能で魔法を遮断、そしてそこからポーラが封印を施す算段だ。


ポーラも足を掴むと体内から素早く封印を施す。


「う……やばい」


「どうしたの!?」


ポーラの声にリヤナが問う。


「魔力が大きすぎて、思うように進まない……」


今まではある程度魔法を使わせてなど、弱体化させてから施していた。


これは封印するものよりも大きな力が無ければ封じることは出来ないからだ。


ポーラはトウヤの時と同じように一部を封印しようとした。


だが彼女はここに居る誰よりも大きな魔力を持っている。


さらに短期決戦ということもあり、封じる魔力がまだ大きすぎる状態だ。


その為、大きな魔力で無理矢理、封印を逃れようとされているのだ。


「ちょっと、ここまでやって出来ませんでしたとか止めてよ!」


リヤナの言い分は尤もだ。最後の最後で失敗とか笑えない。


「ちょっと!トウヤ――」


「必要ないわ」


スプニールがリヤナの声を遮った。


スプニールはポーラの背中に触れると自分の魔力を送り込んだ。


「ひゃい!?」


「集中しなさい」


思わず変な声が出たポーラをスプニールは一喝する。


「気を抜けばあなたも暴走するわよ」


ポーラは苦しみながらも堪え、封印を進めた。


スプニールの大きな魔力も加わり、何とか封印を施すと、

暴走の黒い魔力が消え、彼女は元の状態に戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ