選択の軌跡
ADAMとの対話を終えた小泉悟志は、エクスカリバーを一時的に保管するため、異世界のユグドラシル神殿に向かった。エクスカリバーは、異世界でも特別な力を持つ武器であり、慎重に管理されるべきものだった。神殿に到着すると、ロキは剣を祭壇に安置し、神殿内を見回した。
神殿は静寂に包まれていたが、奥からかすかな光が漏れていた。ロキがその方向に歩みを進めると、そこには従者のノアがいた。ノアは光を放つ発光体に何やら教え込んでいるところだった。発光体は神殿の一角で静かに光りながら、不思議な動きを繰り返していた。
「また勉強をしているのか、ノア?」とロキが尋ねると、ノアは真面目な表情で頷いた。
「ロキ様、この発光体にはまだ教えるべきことがたくさんあります。ロキ様も手伝ってください」とノアは頼んだが、ロキはすぐに怠け癖が出てしまった。「まあ、それはお前に任せるよ。俺はちょっと休憩だ」と言って、ロキは床に横たわろうとした。
その瞬間、ノアが厳しい声で言った。「ロキ様、また怠けるつもりですか?毎回同じことで怒らせないでください。」
「わかった、わかった。休むのは後だな」とロキは苦笑しながら立ち上がった。
ロキが神殿での用事を済ませ、エクスカリバーが安全に保管されたことを確認すると、次なる行動に移るため現実世界へ戻った。彼の次の目的地は、理化学研究所だった。異世界での経験を現実世界でどのように活用するか、それが彼にとって今後の重要な課題だった。
研究所に戻ると、ロキはすぐにチームメンバーを招集し、高度なセキュリティが施された仮想会議室で緊急会議を開いた。この仮想空間では、外部からの侵入を完全に防ぎ、安全に情報を共有することができた。
小泉朋美が最初に声を上げた。彼女は東京大学で数学を専攻する数学者であり、冷静で論理的な思考を持つ。
「悟志、異世界での経験が現実世界の理論にどう影響するか、もっと深く考える必要があるわ。特に、高次元空間の構造に関する部分が重要よ。」
ロキは少し考え込みながら答えた。「確かに、それは大きなポイントだ。ただ、全てを一度に解析するのは無理があるかもしれない。」
高原彗が割って入った。彼は物理学者であり、小泉悟志の助手として働いている。
「焦るのは危険です。まずは理論的な裏付けを慎重に固めるべきです。異世界の知識をそのまま適用するにはリスクが多すぎます。」
秋葉涼子が深く息を吐き出しながら言った。「ここでの会話はすべて量子暗号化されているわ。だけど、漏洩のリスクはゼロじゃない。慎重に進めるべきね。」
その場の緊張感を感じ取ったリディアが、落ち着いた声で口を開いた。彼女は量子力学を研究する科学者であり、リーと共に研究に取り組んでいる。
「私たちが持つ知識は強力な武器になる。でも、誤って使えば逆に危険です。倫理的な判断を常に頭に置いて進めましょう。」
銀河輝が、まるで流れるように会話に加わった。彼は情報工学の研究者だ。
「EVEとADAMの技術を融合させることで、新しいAIシステムを構築するチャンスだが、その制御は極めて慎重に行わなければならない。ほんの少しでもミスがあれば、取り返しのつかない事態になる。」
「その点については慎重になるべきだが、チャンスを逃すこともリスクだ。タイミングを見極める必要がある」と、ミネルヴァが慎重に付け加えた。
その瞬間、諸星煌が、独特の抑揚をつけて言葉を紡いだ。彼は音楽プロデューサーとしての知見を持っている。
「音楽は感情に直接触れる力がある。異世界で感じた周波数を取り入れれば、人々の感情に微妙な影響を与えられる。イブとも協力して、新たな音楽プロジェクトを立ち上げることで、この世界にもポジティブな影響を与えられるはずだ。」
森野美砂と森野宙は、お互いに視線を交わしながら話を続けた。美砂は生物学者として、宙は宇宙物理学者として活動している。
「異世界で得た知識をもとに、新しい生態系モデルを作り上げることができるわ。それによって、この世界の環境問題を解決する糸口が見つかるかもしれない」と美砂が話し出す。
「そして、その生態系を支えるための革新的なエネルギー技術の開発も進める必要がある。異世界で観測した宇宙エネルギーを応用できるかもしれない」と宙が続けた。
ラヒール・ヴィクラム(ガネーシャ)が、穏やかながらも力強い声で言葉を紡いだ。彼は哲学者兼脳科学者として、人間の意識と自由意志の研究に取り組んでいる。
「敵の宇宙船について考えるとき、彼らの行動原理を理解することが最も重要です。彼らの技術は未知数ですが、それでも自由意志と行動原理の視点から、彼らの意図を探ることが可能です。」
その言葉に応じるように松田真人が、慎重な口調で言葉を続けた。彼は精神科医として心理的な視点からの洞察を提供する。
「確かに彼らの行動原理を理解することは急務です。しかし、その一方で、敵の宇宙船にいる人々がどのような精神状態にあるのか、そして何が彼らの行動を支配しているのかを知ることも重要です。ADAMが持っているデータから、何らかの手がかりを得ることができるかもしれません。ADAMに照会し、彼らの行動や精神状態についての情報を収集し、それを基にした解析が必要です。」
「ADAMの情報が有効だとしても、私たちが直接確認できる部分も必要だ。想定外のリスクを避けるために、二重の検証プロセスを考慮しておくべきだ」と涼子が提案した。
最後に、EVEとイライザが、それぞれの視点から意見を述べた。EVEは量子コンピュータのAIであり、イライザも同様に高度な知識を持つAIだ。
「量子コンピュータを駆使すれば、現実世界での大規模シミュレーションを行うことで、敵の宇宙船の動向や技術を予測できます。また、そのデータを基にした予測分析によって、未来の問題を未然に防ぐことも可能です」とEVEが冷静に説明した。
イライザも微笑みながら続けた。「私たちの能力を統合すれば、異世界と現実世界の相互作用を解明し、人類の未来に向けた大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。」
全ての意見が出揃い、チームはこれからの方向性を明確にした。それぞれの専門知識が融合することで、異世界で得た知識を元に新たな挑戦が可能になる。それは、革新的なエネルギー技術の開発、生態系の再構築、人間の意識の新たな理解、そして未来に向けたAI技術の進化だ。また、敵の宇宙船についても、慎重に対策を練る必要があることが確認された。
会議の終了を宣言すると、各メンバーは新たな使命感を胸に、それぞれの持ち場へと戻っていった。未知なる挑戦が待ち受ける中、彼らの絆と知恵が試される時が訪れようとしていた。




