見えない真実と高原の疑問
助手の高原彗は、今朝も早くから研究室に現れた。小泉悟志は、昨日の実験結果を見直しながら、高原に声をかけた。
「おはよう、高原。昨日の実験結果、どうだった?」
高原は少し戸惑いながら、「まだ理解できない部分があって、特に量子力学の概念がわからなくて…」と答えた。
悟志は頷いて言った。「よし、今日は量子力学の基本的な考え方から話そうか。たとえば、シュレーディンガーの猫の話は聞いたことがあるか?」
「名前は聞いたことがあるけれど、詳しくは知らないです」と高原は少し困惑した表情で答えた。
「シュレーディンガーの猫は、箱の中に猫がいて、50%の確率で毒ガスが放出されるという話だ。箱を開けるまで、猫は生きているとも死んでいるとも言えない――観測しない限り、両方の状態が同時に存在しているんだ」と悟志は説明した。
高原は少し驚いた表情で、「でも、見ていなくても、実際にはどちらかの状態に確定しているんじゃないですか?」と疑問を投げかけた。
「普通はそう思うよね。でも、量子力学では観測されるまでは、両方の状態が同時に存在していると考えるんだ」と悟志は笑顔を浮かべながら答えた。
高原は納得がいかない様子で、「本当にそんなことが起こるんですか?」とさらに質問を重ねた。
「その疑問は正しいよ。実際に実験で証明されているんだよ」と悟志は説明を続けた。「量子力学では、物質の世界は常識とはまったく違う動きをするんだ。これが科学の面白さだよ。」
高原は理解しようと一生懸命に頭を巡らせながら頷いた。「それが、僕たちの世界にどう関わってくるのか、まだ全然想像できないですけど、もっと知りたくなってきました。」
午後のカフェでのランチ
午後、悟志と高原は近くのカフェでランチを取ることにした。高原はシュレーディンガーの猫の話について頭の中で何度も考え直していた。
「先生、さっきの話ですけど、やっぱり観測しないと何も確定しないっていうのが信じられないです…」と高原は困惑した表情で尋ねた。
「その気持ちはわかるよ。量子力学は、常識とは反することが起こる世界だからね。でも、それが実際に実験で確認されている以上、無視はできないんだ」と悟志は答えた。
高原はふと窓の外に目をやり、午後の柔らかな日差しがカフェのテラスに広がっているのを見て、ほっと息をついた。
高原は考え込んだが、徐々にその理解を深めていった。「まだ全部は理解できていませんが…でも、面白いです」
カフェの柔らかい午後の日差しが二人を包み込み、静かにコーヒーの香りが漂う中、彼らは量子力学の不思議に思いを馳せた。
数日後の通知
数日後、悟志のもとに東京大学から正式な会議参加の通知が届いた。世界的に著名な物理学者である李文強が次の科学会議で講演を行う予定だった。
「高原、国際会議への参加が正式に決まったよ。李先生の講演だ。素晴らしい機会だぞ。」
高原は目を輝かせ、「もちろんです!量子力学の話を直接聞けるなんて、最高の機会です!」
この会議が、彼らの研究をさらに加速させるきっかけになるかもしれないと、二人は期待に胸を膨らませていた。