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名前で想像がつかないんだから怖いよな

「ついたよ。ここが私の一押し、ベオグラードだよ。ちょっと見た目は質素だけど料理は最高だから、安心していいよ」


 ベオグラードは店の名前だとして、まったく何の店なのか想像もつかないな。

 確かに店の見た目自体はすごい質素、悪い言い方をすれば地味だ。ベオグラードと書かれた小さな看板が壁から下がっているだけ。この見た目だと、初見のお客さんは入ってこなさそうだけどな。口コミとかでお客さんを入れていれば問題はないか。


「了解だ。ひとまず中に入ろうか?」


「そうだね。入ろう。きっとマサタカも気に入ると思うなぁ」


 中に入れば少しは予想がつくかもしれない。レナがよっぽどの味音痴でもない限りは安心していいはずだ。


「こんにちは。二人だけど席空いてる?」


「レナちゃんじゃない。こんにちは。こっちの窓際の席が空いてるからそっちにどうぞ。あら? 今日は一人じゃ何ないのね?」


「はい、今日は新人冒険者のマサタカと一緒なんだ。おいしいご飯屋さん教えてほしいって言われたからここを紹介しようと思ってね」


「まあ、それはうれしいわ。さあさあ、座ってちょうだい」


 まさに食堂のおばちゃん風のおばちゃんがレナと話している。絶対、俺の世界だったらこの人食堂で働いていたに違いない。

 それにしてもレナとおばちゃん仲がいいな。これもレナのコミュニケーション能力の高さがなせる技なのだろうか?


「ありがとう。それじゃ、私はいつもので、マサタカには大盛でお願い」


「はいよ、べオグラ2つで片方は大盛ね。以上でいいかい?」


「うん、まずはここのべオグラを食べてほしいから」


「それじゃ、ちょっと待っててね」


 あっさりと注文が終わってしまった。せめてメニュー表を見せてもらえれば俺にもどんな料理かわかったのにな。これじゃ、出てきてのお楽しみ状態だ。好き嫌いはほとんどないから、そこはいいんだけどなぁ。無難にハンバーグとかでお願いします。


「あ、勝手に頼んじゃってごめんなさい。ベオグラードに来たら、まずはベオグラを食べてほしくって」


「大丈夫だ。気にしないでくれ。俺はレナにおすすめを聞いてんだしそれを食べるのが一番だろ。それで、べオグラってどんな料理なんだ。ちょっと俺には聞きなれない名前で想像がつかないんだ」


「それは……うーん、やっぱり口で説明するよりも見てもらった方が早いと思うからべオグラが来るまで待ってて」


 聞き出す作戦は失敗か。そりゃ実物を見たほうが早いよな。


「待ってる間に冒険者として困ってることや、わからないことがあったら質問に答えるよ。これでも冒険者ギルドの職員だからね、大抵のことはわかると思うよ」


 冒険者としてか、そもそもほとんどのことがわからないから何から聞けばいいのかがよくわからんな。ちょっと魔王についてでも聞いてみるか?


「それじゃ、レナは魔王について何か知ってるか? どんなことでもいいから教えてくれ」


「魔王!? どうしてそんな大物を? マサタカにはまだ早いよ。というか、魔王に挑めるような冒険者はSランクくらいなものだよ。あまたの冒険者や、勇者が挑んでは失敗して帰ってくるかそのまま行方知らずになってしまうんだから」


 それは女神様が言っていた通りだな。派遣した勇者たちは全滅、それと寝返ってしまっているって言ってたし。さらには、この世界の冒険者たちも果敢に魔王へ挑んでいたんだな。女神様から直接スキルをもらった勇者ですらかなわない敵にこの世界の人たちがかなうとは思えない。


「今となっては、魔王に挑もうなんていう冒険者はまったくいなくなったんだからね。勇者が現れた時にお供としてついて行ったりはあるみたいだけど、それも最後は10年前とかになるから、現在の魔王がどうしてるかは謎なんだ。人類の領土に侵攻してこないのが唯一の救いだよ」


 人類に戦争を仕掛けたりはしてないんだな。それだけでも当面の間は安心して修行に励めそうだ。しかし、魔王の機嫌次第ではいつ攻めてきても不思議じゃないのは怖いな。どうにかして魔王がいまどういう状況なのかとか知れたらいいんだけど、いまのまま直接俺が行くのは自殺行為だし、今回の勇者は俺だからほかに期待するってのも難しいよな。


「ありがとう。魔王の噂は俺に故郷にも届いてたからな。それで魔王はどこにいるんだ?」


「え? それは当然魔王城だとおもうけど……魔王城がどこにあるかまではわからないなぁ。魔族の領土は人類の領土の倍近い広さがあるっていう話だし、そのすべてが完璧に地図としてあるわけもないからね。だから、魔王討伐に行くって時は、まずは危険な魔族領で、魔王城を探して旅をしなくちゃいけないんだ」


「それじゃ、今まで魔王城へたどりついて帰ってきた冒険者も勇者もいないってことなのか?」


 魔王やっぱりとんでもない存在だ。それに詳細な場所もわからないと来た。これは想像していた以上に無理難題を押し付けられてるな。はあ、老いないから無限に修行する時間があるって言ってもそんなのは精神的にもたないからな……。


「うん、戻ってきた人たちは、魔族領のモンスターたちに追い返されてしまった人ばかりだよ。人類の領土にいるモンスターよりも数段強いらしいからそれもあいまってだと思うな」


「俺が今日倒したゴブリンどもも強さが違うのか?」


「そうだよ。詳しいことはわかっていないんだけど、ゴブリンみたいな低級のモンスターでもかなりの違いがあるって話なんだから。それだけ、魔族領は危険なところなんだからね。行こうなんて考えないでよ」


「俺にはまだ早い話だ。気になってたから一応聞いておこうと思ってだな。このまま冒険者を続けてたら、いつかは俺にも関係のある話になるかもしれないだろ」


 ちょっと言い訳としては苦しい気もするが、俺が高ランクの冒険者になったら関りが出てくるはずだ。あながち、的外れなことは言っていないだろう。


「大きく出たね。Sランク冒険者なんて今は世界に3人しかいないんだよ。マサタカは気が早すぎるよ」


 へー、Sランク冒険者って3人しかいないのか。でも転生してきた勇者じゃないだろうから、戦力的には劣るんだろうな。


「まあ、いつかの話だ」


「はい、お待たせ。べオグラだよ」


 ちょうどいいタイミングでおばちゃんが料理をもってきてくれた。やっとべオグラの正体がわかるぜ。

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