8.幻銃ゲットだぜ
トロールを撃った狙撃音で敵プレイヤーが近づいてくるかとしばらく隠れていたが、敵が近づいてくる様子はなかった。
隠れている間も今すぐにでも幻銃を取りに行きたいのか、サヤカさんは「もおええかな?」、「そろそろ大丈夫とちゃう?」とずっとうずうずしている。
「敵が来る様子もないですし、取りに行ってもいいですよ」
「よっしゃ!」
俺が許可を出すと、サヤカさんはトロールを倒した場所まで茶色の髪を揺らし、全速力で駆けて行った。その様子は投げたボールを大喜びで取りに行く柴犬のようだった。
飼い主になったような気分で、彼女の後を追いかける。
トロールを仕留めたであろうポイントに到着すると、トロールのイマジナリーウェポンである機関銃に頬を擦り付けるサヤカさんの姿があった。
その機関銃はトロールの顔をモチーフに作られており妙にリアルだ。
そんな機関銃に女の子が頬擦りしているのはなんともシュールな光景だ。
「……何してるんですか?」
「この子との絆を深める儀式や」
「なるほど……?」
絆を深めるために頬擦りをする……、サヤカさんは少し変わった人なのかもしれない。
「目的の幻銃だったんですか?」
「いや、初めて見るタイプやね。この武器どんな効果か知っとる?」
「トロールの武器は確か……、持っている弾薬が無くならない限りリロードせずに撃ち続けことができるじゃなかったですかね?」
「へー、この子強いやん!」
効果を知り、サヤカさんは感心したかのように持っているイマジナリーウェポンをマジマジと眺める。
「でも結構反動が大きくて、初見の人が扱うにはかなり難しいと思いますよ」
メリットしか伝えていなかったので、デメリットの部分も彼女にしっかり伝える。
「そうなんや、まあ大丈夫よ。こっからが本番やからしっかり見といてや!」
サヤカさんはデメリットである部分は特に意に介した様子はなく、やる気に満ち溢れていた。