表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/36

6.クランの勧誘

 女性からの賞賛に俺は何を言えばいいか分からず、頭を掻いて照れていると、頭の中である効果音が二回鳴り響いた。

 何事かと覗いてみると先程、中央に降りた二人の味方がダウン状態になったことを知らせる通知音だった。


 俺と沙也加さんはすぐに救援に向かおうとしたが、二人の味方はあっさりやられてしまい、マッチから退出していった。

 こうなってしまっては俺たち二人でこのマッチに勝たなければいけない。


 それに先程倒した敵の味方が敵討ちのためにこっちに近づいて来てるだろう。

 迎え撃つか、どこかに隠れてやり過ごすか。どうしたものかと考えているとサヤカさんが俺に提案してくれた。


「とりあえず、ビル街は危険やし、この街から離れへん?」


 彼女の提案に俺は頷き、実行に移るのであった。


 ビル街の端の方に降りていたため、街からすぐに脱出できた俺たちはエリア収縮される中央に向かって歩いていた。

 エリア収縮は時間が経つにつれ、マップ内における戦闘区域がランダムで狭まっていくゲーム上の仕様で、戦闘区域外に出ると毒蟲がプレイヤーを襲い、HPを削ってくる。


 ゲームが後半に進むにつれ、エリアは小さくなり、戦闘区域外に出ると蟲の量も増え、HPは大きく削られる。

 プレイヤーたちは戦闘区内の滞在が強いられるため、戦闘区内でどれだけ有利な位置を取り戦うのは勝つためにとって非常な重要なものになっている。


 味方が二人いなくなり、人数的にも不利になった俺たちは敵が集まってこないうちに有利な位置を取るために移動をしていた。

 できるだけ障害物が多くて、高い位置に行きたいと足早に移動していると、先程の倒した敵から奪ったサブマシンガンを装備したサヤカさんが暇になったのか話しかけてきた。


「イーグルアイくんでいいのかな?」


「はい、そう呼んでください」


「イーグルアイくんは何で一人で話しながらやってたの? ウチが返事しなかったらどうするつもりやったの?」


「いやー、実は俺結構人見知りでして、それを克服しようと同じマッチで味方になった人に話しかけるみたいな練習をしてるんですよね」


「はー、けったいな事してるんやな」


「会話に応じてくれたのはサヤカさんが初めてですよ」


「うちは優しいからね」


 茶髪を揺らし、高らかな笑い声をあげるサヤカさんは優しい人なのだと思った。


「イーグルアイくんは人見知り克服して何かしたいことでもあるん?」


「クランに入って、三ヶ月後に開催される世界大会に出場したいんですよね」


「えっ⁉︎ イーグルアイくんクラン入ってないの? そんなにスナイパー上手やのに!」


 急に目の色変えたサヤカさんが、俺の方に向きグイグイと迫ってきた。


「ずっとクランに入らずにやってきたので世界大会を機に入ってみようかと……」


「じゃあまだ誰もイーグルアイ君のことスカウトとかしてないよね?」


「そ、そうですね……」


「ならウチが一番最初にスカウトするわ! ウチ一人しかまだおらんクランやねんけど、クランの目標は世界大会優勝や! どうやろ? 入ってくれへん?」


 両手で俺の右手を握りしめ、目を見て懇願してくるサヤカさんに気持ちが大きく揺れる。

 俺が入ってもまだ二人ということは既にできているグループに入り込まなくていいということで、新しく作り上げていくということだ。

 中々の好条件だ。

 しかも相手はこてこての関西弁を喋る女性ということで話しやすいし、もしかすると俺と彼女が恋に落ちるということも可能性ではありえなくもない。

 サヤカさんがリアルではモデル級の可愛さを備えた美女で世界大会で実際に会った時にお互いが恋に落ちてしまうなんてこともあるかもしれない。


 そんな美人と世界大会優勝……何だろう、すごく良いのではないかと思えてきた。

 左手でサヤカさんの想いに応えようとして、少し思い留まる。

 いやいや少し待て、まだ彼女のゲームの腕がどんなものか分からない。

 悪く言うつもりはないが、彼女が世界大会に通用するような実力の持ち主ではなかったら、世界大会優勝の夢は遠ざかってしまう。

 まずは彼女の実力を知らないといけない……。


「サヤカさん、俺は本気で世界大会を優勝したいと思っています」


「それはうちも同じや」


 沙也加さんの眼差しは真剣そのものだ。


「でも俺はあなたの腕がどれほどのものか分かりません。あなたの実力を俺に見せてもらえませんか? それでクランに加入するかしないか決めさせてもらいます。すみません、なんだか上からになっちゃうんですが……」


「よっしゃ、ウチがめっちゃ強いっていうとこ教えてあげるわ! そろそろうちの本領を発揮するイベントが来るはずやわ」


 サヤカさんは俺の上からの発言に気を悪くするどころか、乗り気になってくれたようだ。


「イベント?」


 首を傾げ、イベントなんて何かあったか? と考えているとマップ全体に響くアナウンスが鳴った。


『幻獣が出現しました。プレイヤーの皆さんは注意してください』


「きたきた、ほら行くでイーグルアイくん!」


「ちょ、ちょっと!」


 カーソルからマップ全体を開いたサヤカさんはエリアが収縮される方向とは真逆に走り出した。

 俺は敵が来る前に好位置をとって敵と戦いたかったが、サヤカさんの実力を見ると言った手前、反論するのもどうかと思ったので、黙って走っていく彼女の後ろをついていく事にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ