プロローグ
走る、ただ無我夢中にがむしゃらに。
あらゆる方向から銃弾が飛び交う中、何とか弾が当たらないことを祈りながら、俺たち四人の足を進める。四方八方で銃声や爆発音が鳴り響いているが決して足は止めない。
何とか身を守れそうな大岩にまで到着することができたが、流石に無傷とまではいかなかった。皆、それなりに怪我をしているが、まだまだプレイの続行は可能だ。
岩陰で束の間だが休息の時間を手に入れる。その時間を利用して怪我の手当や装備している武器の手入れを行う。
走る際は邪魔で、肩に掛けていたスナイパーライフルを持ち、マガジン内の残弾を確認する。
俺は最終決戦を前に少し硬くなっている、三人に声を掛ける。
「いいか! 俺たちは強い! 弱かったあの頃を乗り越えて、ここまで来たことを忘れるな! 気持ちで負けたらそこで試合終了だ! こんな試合、簡単に勝てる。世界中に俺たちが強いって証明するためにこの大会は絶対に優勝する!」
三人、俺自身にも言い聞かせる気持ちで鼓舞する一言を投げかけた。
真剣な眼差しを俺に向ける三人は、一様に強く頷いてくれる。
よし、これで少しは緊張も和らいだだろう。
俺はさらに士気を高めようと話を続けたが、それは失敗だった。
「俺たちはこの大会で優勝して、百万ドルを手にするんだ。そして俺は女の子からいっぱい言い寄られる様な最強ゲーマーになってみせる! その為に力を貸してくれ!」
発破を掛けたつもりだったが、途端に三人は白けた目を俺に向けてくる。
今まで三ヶ月間、共に過ごし、事あるごとに力説してきたが、やはりここでもまだ理解はしてくれないようだ。
まあそれも仕方ないのかもしれない、俺以外、クランメンバーは全員、女性なのだから。
男のロマンも分からないとは困ったチームメンバーだ……。
俺は大きく咳払いし、気を取り直して個別に作戦を伝えていく。
「青葉! お前は前線を広げてくれ。お前以上に硬い奴は世界にいない。絶対に前線を下げるな、逆に広げるつもりでいけ! 俺たちがカバーする!」
「ああ、任せておけ!」
金色の長髪をした女性は赤色の特攻服、左手にシールド、右手に金属バット、何とも銃弾が飛び交う戦場では異様な装備しているが、彼女がこのパーティーにおけるタンクとして重要な役割を担ってくれている。
金属バットを肩に背負い、いつでも突撃可能といった感じでやる気に満ちている様子だ。
「ゆずき! お前は遊撃だ。青葉に攻撃してる敵を翻弄しろ! お前ほど速ければそう簡単に攻撃を当たるわけない! もし止まって攻撃するようなアホがいたら俺が頭をぶち抜いてやる!」
「はい、任せましたよ!」
黒髪ボブの彼女は忍者のように黒色の装束を着て、両手には二丁の異なったハンドガンを装備している。一つは普通のハンドガンとはリボルバーのような形状で一撃の威力が非常に高い。もう一つは一般的なハンドガンの様には見えるがマガジンが大容量で継戦能力に長けている。
二丁のハンドガンを巧みに回し、カッコつけているが、昔は回そうとして、暴発し、味方に当てたことが過去もあることから、陰でたくさん練習したんだろうなと窺える。
子供の成長も見守るような気持ちで眼差しを彼女に向けていると、何か思うことがあったのか足蹴りをかまして来るが今は無視だ。
「ねえねえ、ウチはどうしたらええ?」
指示が最後になり待ちきれなくなったのか、茶色の髪を揺らす少女、彼女が三人の中で、唯一、俺と同じの戦闘服を着ている我らのクランリーダーが指先でつつきながら尋ねてくる。
今の彼女に言うことは一つしかない。
「……沙也加、お前はとにかく暴れろ。この盤面をひっくり返せ!」
通常の銃とは異なり、ドラゴンがコンパクト化されたような形状の銃。ドラゴンの口から放たれる弾丸はこのゲームで最強クラスの威力を誇るが、反動が大きく敵に当てるのが非常に難しい武器、イマジナリーウェポン、通称幻銃。
ハイリスク、ハイリターンの武器だが彼女に使いこなせないイマジナリーウェポンは存在しない。
「よっしゃ! 任せときい!」
関西弁の頼もしい返事をしてくれる少女にこの試合を託す。
最終エリア縮小のアナウンスがマップ内に鳴り響く。
「さっさと優勝して日本に帰るぞ! 沢山の女の子が俺の帰りを待っている!」
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