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ブリーチ
僕の頭は保護者によって金色にされてしまった。発狂しそうになっている母親をおじさんはなんとかなだめた。いや、丸めこんだというべきだろう。実際のところ、癇癪もなくなり、僕は芸術に打ち込んでいる。母親も世間体以外は喜ばしく思っているようだった。
そんな金色の髪の毛を、僕は密かに気に入っている。ケイ君だってロック・ミュージシャンみたいだし、金色の頭をしたミュージシャンは多い。格好良いと思う人に見た目だけでも近付けるのは悪くない気分だ。僕はギターの練習により夢中になった。
おじさんは沢山のエフェクターをくれる。そしてそれぞれ使い方が分からないでいると、ケイ君が一つ一つ丁寧に教えてくれる。ギターのことになると夢中のようだ。みな同じなのかもしれない。
やっと僕に楽しいといえる日々がやってきた。年上だけど友達が沢山できた上に、打ち込めるものが見つかった。身なりまで変わってしまった。これ以上望むものはない。
そんな僕だったが、人間というのは欲張りだ。僕にまた、求めるものができてしまった。