13 免許皆伝
「断絶斬!」
俺の言葉と共に、目の前で醜悪な鎌を振り上げていた魔物が真っ二つに切り裂かれ、声なき声を上げてどうっと左右に分かれ倒れる。
あれからどれだけの時間が流れたのだろう。
あれからどれだけの回数、俺は死を経験したのだろう。
アカツキの修行はそれまでの修行が児戯のように思えるほど苛烈だった。
まず斬神流の基礎となる素振りから始まり、それがある程度形になると扉の向こうに放り出された。
もちろん練習で簡単な素振りを覚えたと言っても、そんなもので最下層の魔物に敵うはずも無い。
俺は一瞬で殺され、捕食される前にカエデに回収される。
それを魔物に一太刀浴びせることが出来るまで繰り返された。
最初こそ魔物の動きすら見えず殺されていた俺だったが、流石に百回を数えるほど対峙する頃にはある程度動きが見えるようになっていた。
よく体が覚えるといわれるが、俺は体には覚えさせることは出来ない。
なので覚えているのは俺自身の脳だ。
どういう理屈かわからないが死ぬと体は元の状態まで巻き戻されるが記憶に関しては巻き戻されることは無い。
まぁ、記憶まで巻き戻されていたら今頃俺は16歳までの記憶を持ったまま途方に暮れていただろうが。
「経験を積み重ねるって大事だったんだな」
俺は剣についた魔物の体液を振り払う。
これで今日は何体目だろうか。
いくつもの基礎訓練を終えた後、俺はアカツキから斬神流の技を教え込まれていった。
もちろんこの時も、その技が上手くいくまで魔物相手になんども死にかけた。
特に難しい技となると百回程度では習得出来ず、二百回、三百回と繰り返した。
「よくやりましたねジーナス」
「ああ、それもこれも師匠のおかげだよ」
習得のご褒美はアカツキの見惚れるような笑顔と、努力が実った充実感だった。
「単純な男ですね」
そんな俺たちを見ながらカエデが呆れたように呟くのも毎回のこと。
だけど彼女はそんなことを言いながら一手間も二手間も手のかかった食事をその度に用意してくれるのだから素直じゃ無いなといつも思う。
そんな日々がどれだけ続いただろう。
すでに俺は最下層の魔物相手には簡単に負けることは無くなっていた。
「ジーナス」
「はい師匠」
「貴方はすでに私を超える斬神流の使い手となりました」
その頃には俺はアカツキと一対一で戦っても負けることは無くなっていた。
それどころか俺と違い大きな怪我を負うと修復にかなりの時間が必要な彼女に怪我を負わせないために、訓練の時俺だけ木刀を使うまでになっていた。
大きな怪我を負ったり、命を落としかければすぐに鍛えたすべてが無に帰す身体。
だが修復されても消えない知識と記憶、精神に刻みつけられた動きは、確実に折れを強くしていったのである。
そんな俺を見てもアカツキはいつもと変わらず無表情で。
だけど長く彼女と共に過ごしてきた俺にはわかる。
彼女の今の表情は、わずかだけど嬉しそうなことを。
しかしその嬉しそうな表情が次の瞬間いつもの厳しいものへ変わった。
少しの緊張。
お互いが黙って見つめ合っていたのはほんの僅かな時間で。
アカツキの唇がゆっくりと動き出す。
「免許皆伝とともに、これから私は最後にあなたへ斬神流最終奥義を伝授します」
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