第2話 シャロン、最期のエトワール家 ①
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「シャロン様。今後の貴方様の処遇について説明致します」
重苦しい口調で、長年エトワール家に執事として仕えてくれている爺やアダムスが、シャロンに言った。
舞踏会の夜が明け、エトワール邸の屋敷の応接間で、シャロンは、ソファに座り、自身の処遇を聴かされるのを待った。
「シャロン様は、本日の夜より、エルダーク王国を完全に、国外追放され、隣国のルクセル公国に行っていただきます。そして、貴方様は、王妃アリス様に犯した罪を問われ、貴方様の爵位は剥奪。平民として、人生を1からやり直していただきます」
シャロンは、瞳を閉じ、己の罪を受け入れた。
「分かりました。アダムス」
執事のアダムスは、瞳にうっすらと涙を浮かべながら、憔悴しきったシャロンを見た。
(どうしてこんなことになってしまったんだ)
シャロンが幼少の頃より仕えていたアダムスは、お転婆でじゃじゃ馬だが、根の優しかったシャロンがどうしてこんな罪を犯したのか、アダムスには分からなかった。
すると、
応接間の扉が、ゆっくりと開き、給仕のメイドが入ってきた。
「シャロン様。迎えの馬車が到着致しました」
それを聴いたシャロンは、ゆっくりとソファから立ちがあり、
振り向き際に、執事アダムスに言った。
「爺や。今まで私に尽くしてくれたこと感謝致します」
シャロンは、そう言うと、艶やかな長い黒髪を靡かせながら、スタスタと応接間をあとにした。