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第八話 王都へ

「どういうこと!?」


 拐われた、フレイが?理由が無いじゃないか!


「さっき、外に行ったフレイを探そうと思って、それでふと路地裏を見たんだ。

 そしたら、あいつが頭の先からくるぶしまで黒いローブをすっぽりとかぶった奴らに運ばれていた。

 あいつは気絶していた。それで、俺は追おうとしたんだが……」


 イツは面目なさげな顔をして俯く。


「見失ったんだね……?」


「ああ……すまん。どこにも姿が見えなかった。ただ、これだけ落ちていたんだ……」


 そういうと、イツはポケットから金属でできているブローチを見せた。

 ブローチは全体が金色に輝き、ライオンのような生き物の意匠が施されていた。


「これは……?」


「この国の王都、ソレイユを統治する王家の家紋だ。まだこれが本当の手がかりかは分からんが……」


 私はブローチを手に取り、イツに言った。


「これ以外に何も無かったんだろう?だったら、行くしかないさ。

 フレイは私たちの仲間なんだから」


 何故こうなったのかはまだわからない。けど、仲間を助ける。それは義務だ。


「そう……だよな。分かった。すぐ出発するぞ」


「いや、イツ、今回は私一人で行く」


「……は?な、なんでだよ!俺だって心配____」


「君は元義賊として国王に名が知れている。もし見つかったら死刑だってあり得るんだぞ?」


 そう、問題は国王だ。298の国のうちの一つの支配者。

 奴も転生者だ。スキルによってはこちらが抹消される可能性まである。


「っ……分かってる、そんなこと!頼む!俺は二度と仲間を裏切らないって誓ったんだ!」


 イツはこちらを真っ直ぐ見据え、懇願する。


 ……はあ、とんだ義理人情だ。


「しょうがない。私と別行動で頼むよ。それぞれ別の方向からアプローチして行こう」


「分かった!じゃあ早速行ってくる!」


 そういうとイツは走り去って行った。


 ……さて、私も宿に戻ろう。




「持っていくものはこれくらいかな」


 着替え1着、買っておいた刀、そして大量のオウル金貨。


 それらを抱えていざ行こうとした時、下からぴちゃぴちゃと水音が聞こえてきた。


 あっ!スラ吉!


 ベッドの下には、先日から宿に置いていたスライムのスラ吉がいた。


「……お前もいくかい?」


 手に持ちそう聞くと、スラ吉はぴょんぴょんと手の上で跳ねた。


「ははは!旅は道連れってね。多い方がいいさ!」


 そう言い、私はスラ吉を頭に乗せ、宿から出た。


 必ず探し出すからね、フレイ!




 馬車は本来48万オウル。

 そこを特急にしてもらい、倍額の96万オウルを使って今は王都へ向かっている。


 景色を眺める暇もなく、ものすごいスピードで進んでいく。

 これでも半日以上はかかるらしい。


 この国の名はサンフォード。

 総面積300000㎢ほどらしいが、他国と比べればまだまだ小さい方らしく、尻尾の方らしい。


 王都までの距離は、日本で例えるなら東京から京都ぐらいだ。


 そして、ここまでの距離だと、途中でモンスターが出てくることもある。


 魔王がいた頃はそこら中にいたらしいので、まだ救いがあるけども。


「お客さんまずいです!前からゴブリンの集団が!」


 御者台の方からモンスターが現れたと聞こえてきた。


「了解です。いったん止めてください」


 私が指示すると、馬車は急停車し、ゴブリン達とぶつかるまでの時間が少し長くなる。


 『気配遮断』だけでいいかな。よし、行ける!


 私は即座にゴブリン達の後ろへ回り込みそれらを切り裂いた。


 さっき買った刀が早速役だったね。なんだか熱いような気が……。


 そう思い自分の体を見てみると、服の端がチリチリと燃えていた。


 げぇっ!け、消さなきゃ!


 幸い服の端だったので、叩いてすぐに消えた。


「も〜……なんでだ……?」


 悲しく呟いていると、前方からキシシと声が聞こえてきた。

 みると、そこには手に炎を持ったゴブリンがいた。


「お前、かっ!」


 すぐに刀を抜き、切り伏せる。ゴブリンは真っ二つに切り裂かれ倒れた。


「ほー……!お客さん大したものですね!」


 御者のおじさんは目を丸くして私を褒めた。


「いえいえ……借り物の力ですから……」


 私が照れ隠しでいうと、御者は不思議そうな顔をしていた。




 時間は夜。王都が目の前に見えてきた。


 前の街とは比べ物にならないほどの大きさだったが、

 王都は白い壁で包まれ、見えるのは塔と思わしき物だけだった。


 城塞都市って奴か……。

 しかしなんでここまで貧富の差が分かれるのか……?

 現代に生きていた私がそう思えるくらいには外と比べて違いすぎた。


 近づいていくと、入り口の近くに門番が立っていた。


「止まれ。通行証を」


 門番に言われた御者は王都のシンボルが印刷された厚紙を取り出した。


「よし、通れ」


 門を開けてもらい、馬車は中へと入っていく。


「それでは、お客さん。ここまでです。お元気で」


 御者は手を振りながら馬車で去っていった。


「さて、スラ吉、私達はここについたわけだけども、まずは何をすると思うかね?」


 私の質問に、スラ吉は体をくねらせるような仕草をする。

 まあ、分かったとしても言葉が伝わらないから意味ないか……。


「正解は酒場さ。ファンタジーの定番。情報を手に入れると言ったらあそこでしょ?」

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