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第八十七話 山地にて

 二日後、私達はまだ平地を走っていた。


 ……ところで、この平地はいったいどれくらい続いているのだろう。

 草や木は所々に生えてはいるが、その下は固い剥き出しの地面、地平線の先までずっと続いているようだった。


「あの、ウンディーネ、ちょっと良いですか?」


「ん?どうしたの?」


 ウンディーネはハンドルを握りながらこちらへ顔を向ける。

 身体の大きさのせいでウンディーネがずっと運転をしているけど大丈夫かな……?


 違う違う、その質問じゃなくて。


「この平地……あの地平線までずっと同じ風景が続いているように見えますが、オルゲウス……でしたよね。

 その島まで平地が続くんですか?」


 サラマンダーは何か言おうとしたのか、ほんのりと鞘を光らせる。

 身動きが取れない間、サラマンダーの意思表示はこんな風で無いといけない。


「あたしも一緒に調べたけどね、ずっと平地って訳じゃないわ。山があるの」


 山……?それだけ?


「大きな山よ。それも裾がとっても広ーい山。長さ1000kmってとこかしら。オルゲウスの陸からの道は全部ここを通ることになるわ。

 海側の道には凶暴なモンスターもいるから、基本的にこの山を通らなきゃいけないのでも……」


「でも……?」


「この山に入った人間はほとんど帰ってきていないわ。帰ってきたとしてもボロボロになって帰ってきて、何も話そうとはしなかった。そんな事でこの山は魔境なんて呼ばれているのよ」


 魔境……そんなふうに……。

 ……ただの山と侮らない方がいいかもしれない。それほどに恐ろしい試練が有るのだから。


「でも、ここには山の探索のスペシャリストや、遠い昔、ダンジョンなんていう物を完全制覇した人もきたのよ。だから、ただ遭難した、ってわけじゃ無いと思うわ……」


「……」


 それでも、サツキを助けるためには私達が頑張らなきゃいけない。

 試練でも魔境でも、ただ超える、それだけだ。


「さて、そんなこと言っている間にその山が見えてきたわよ。

 そろそろ燃料も切れる頃だったし、やっぱりちょうど良かったわね」


「えぇっ!?」


 いきなりの事で変な声が出てしまった……。

 覚悟はしたつもりだったけど、さすがに今すぐとなると心の準備が……。


「大丈夫よ、ここはフェアラウスみたいに誰かが支配しているなんてことは無い、つまり『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』が十二分に活用できるわ。ちゃちゃっと飛んで行っても良いんじゃ無い?」


 サラマンダーも気楽に言ってはくれるけど……やっぱり不安かもしれない、いや不安だ。


 魔境は目の前、私達はそれを今、登ろうとしていた。

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