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第八十六話 フレイ達の旅路

 出発から1日が経った。

 目指す地点までは平野ばかりらしく、広大なひたすらに私たちは走っていた。


「ところで……この車をもらってから言う事では無いと思うんですが、私の『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』の方が速いんじゃ無いですか?」


 そう、この車……時速百km程は出るものの、私なら国と国の間をわずか十分で渡れる。

 ウンディーネだってそれを承知の上でこれを貸して貰ったはずだ。


「まあ、その通りよ、この車はっきり言って遅いし。でも、私たちがこれから挑む例の組織、『評議会』はあの帽子男……ホークアイって言ったかしら?そんな連中をウジャウジャ抱えているはずなのよ。

 無駄な労力は割きたくないし、もしあなたが戦いの途中でマナ切れなんて起こしたらそれこそ、私達はそこで終わり、……要するに、あなたにマナは出来るだけ温存してもらいたいからってこと」


 ウンディーネは座席に少し染み入る自分の身体を引き戻しながらチャプリと音を立ててハンドルを握る。

 モータ音が響き渡り、砂埃を撒き散らしながら走っていた。


 あたりも暗くなってきた。……サツキは今どうしているのだろう。

 私たちのことを思い出してくれただろうか、それとも、まだ思い出せないでいるのか……。


 沈んでいく太陽は空を光と闇に分けていき、みるみると闇が広がっていく空は私の心のようだった。


「……さてと、そろそろ野宿かしら?私達は眠らなくてもいいけど、あなたは眠らないといけないから……」


 ウンディーネは鞘に入ったサラマンダーに手を当てながら、私の方に体を向けた。

 気付けば光はすっかり消え、いつの間にか車から光が灯っている。


「そうですね。早く寝て、早い朝に出ましょう」


 ブレーキのペダルが踏まれ、車は砂埃を上げるのをやめた。

 青く暗い月夜のなか、私は草原に自分の体を委ね、肩の力を抜いていった。


 ……しかし、眠れない。不安のためか、夜の空の青さに吸い込まれそうで、私も気づかないうちに闇に吸い込まれているのではないか……そんなふうに考えてしまう。


「どうしたのよ、もしかして眠れないの?」

 

 その声はサラマンダーだった。体は動かせなくなってもいつもと同じく彼女も元気に話せるのだ。

 車のボンネットに置かれて、ウンディーネは近くの岩場で月を見ている。


「いえ、空が……暗いなと」


 私は自分の気持ちをどう説明すればいいかわからず、そんな意味のわからない言葉を口にした。


「暗い……ねえ。私は綺麗で明るいようにも思えるけどね。

 ほら、星や月、たくさん輝いているわ。昼は太陽の光に負けて見えないの、でも太陽が消えたら、今度はあの子たちが照らしてくれるのよ。……ね、フレイ?」


 サラマンダーは私を元気付けるように言った。

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