第七十九話 死神
「えぇ……!?どういう事ですか!?」
「説明をするまでは動かない、と全員で城の入り口に……」
困った……早く行かなければならないのに……。それに、『死神』って一体何の事を……?
「ちょっと待って、『死神』ってのは何なの?」
ウンディーネが私が聞きたかったことと同じことを聞く。
「それは…………説明する前に、皆さん。どんな事でも、聞く覚悟をして頂けますか?」
私とウンディーネはお互いに顔を見合わせる。
どこか、私たちに話すことが憚れる、そういう感じがした。
しかし、そこで聞くのをやめる事はできない。私達はそこで頷きあい、エルゲの方へ顔を戻した。
「分かりました。でも、その前にサラマンダーを連れてきて良いですか?」
*
サラマンダーも揃い、ついにエルゲが話し始めた。
「では、包み隠さずお話しします。……まず、『死神』とは、サツキさんのことです」
サツキが……!?何故そんな呼ばれ方を……?
ウンディーネは信じられないというような顔をする。私も同じようになっているのだろうか。
「サツキが『死神』なんて、またひどい言われようね。大方王を倒したからじゃない?」
「ええ、不甲斐ないものですがその通りです……。私の方から国中に広まる前に対処しようとは思っているのですが……」
エルゲは私たちに顔を下げるようにして首を俯かせる。
「そんな……サツキはみんなを助けようとして動いているのに……」
「フレイさんのお気持ちは理解できます。しかし……その助け方に問題がありました。
王同士の戦争が激化している今、兵士として駆り出される若者は少なくありません。
その問題が王の消滅という形で解決しても、国は混沌としてしまうのです」
だから……死神……訪れた国に終わりを運ぶ存在として人々に……
でも……そんなの……酷すぎる。
「……皆さんに協力を求めようと思いここまで来ましたが、我が君が居なくなれば私が仮にも指導者の立場、ということになるでしょう。私が信頼を置かれるためには、堂々としていなければいけませんから、一人で、対処いたします」
エルゲさんがその場を立ち去ろうとした瞬間、私は彼の袖を握っていた。
解決してくれない、と信用していないわけでは無い。
……でも。
「私が説明しなきゃいけません。連れて行ってください、そこへ……!」