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第七話 レベルアップ試験

 私達の目の前には、銃を持ったいかにもガンマンと言った感じの男がいた。


「はい、本日はよろしくお願いします」


 フレイは特に驚くわけでもなく一礼をしている。

 あれ?私の方がおかしいのかな?

 ええい。聞くに越したことはない!


 私はそう思い、フレイの肩を掴みガンマンに背を向けるようにして耳元で聞いた。


「ねえフレイ、あの人誰なの?なんでいきなり撃ってきたの?」


「あの人はギルドの検査官です。私達のレベルアップの手続きでここにいらっしゃったんですよ」


 手続き?いちいちそんなのが必要になるの……?


「別にレベルの一つや二ついいんじゃないの?」


 それを聞くと、フレイはとんでもないとでも言うような顔で。


「まさか!ある程度力を見極められるような人間がいる王都や機械都市ならそうかもしれませんが、ここみたいな場所では自分がレベルアップした後のレベルが同じ人間を手配して検査するんです。

 この制度が出来るまでは詐欺も良くあったそうですよ。」


 なるほどね……王都とか機械都市とかの単語があったけど、それも転生者達が作った物なのかな……?


「すまんが、こっちもこのあと用事があってね、手っ取り早く終わらせたいんだ。

 さあ、試合場へ行くぞ___」


 ビリーが私達を連れて行こうとしたとき、フレイは私たちの前で意外な言葉を発した。


「ごめんなさい!私は良いんです!検査はこちらの二人だけで大丈夫ですから!」


「……え?ちょ、ちょっと。フレイ、どうしたのさ?

 せっかくレベルが上がるってのに。

 周りに対してマウン……優位に立てるんだよ?」


 なんでフレイは検査を受けたがらないんだ?何か理由があるのかな……?


「私は……実は、スキルを持っていないんです。変ですよね。

 動物でも持っているのに……。それに、まだ戦闘経験も無いですし。

 達成の見込みが無いんです」


 フレイは少し微笑むが、その表情には寂しさが見えた。


「フレイ……」


「っ……ちょっと、外の空気を吸ってきますね」


 そう言うと、フレイは背を向け走って外へ出て行ってしまった。


「ま、待ってよフレ___」


「そっとしてやれ」


 私が追いかけようとすると、イツは肩を掴み私を制した。


「あいつなりに思う節があって、抱え込んでいたんだろう。

 人間だろうがエルフだろうが、こう言う時して欲しいことは変わらねえんじゃねえのか?」


「……」


 気づいていなかった。

 スキルを聞こうとすると変に濁したりしていたのはそう言うことだったのか……。


 フレイが苦しんでいたことに、気付いてあげられなかった。今すぐにでも行って話したい。


 ……でも、確かにイツの言う通りかもしれない。

 フレイがどう思っているのかも分かり切っていないのに、逆に心の傷をもっと広げることになるかも……。


 ……こう言う時になると、私は弱いな。


「……わかった。今は、そっとしておこう」


「話はまとまったか?んじゃさっさと行くぞ」


 ビリーは、特に気に留めていない言い振りで私達を急かす。


*


 試合場は前の世界によくあるドームのような形状をした場所だった。

 検査内容は、ビリーの銃弾を全て避け切って一撃与えられれば勝ちと言う内容だった。


 今はイツがやっているので、私は観客席で見学だ。


「ほぉう!弾を全部避けるとは、スキルか何かか?」


「いいや?自前の才能だ!」


 イツは向かってくる銃撃を全て避け、着実にビリーに迫って行った。

 そういえば、ビリーに銃はどれくらい出回っているのかと聞いたら、結構市場にあると言われた。

 この世界では銃も使われるみたい。


「ん?どこに消えた?おっと!こいつは…」


 ビリーが一瞬の間に瞬きをしたとき、イツは目の前から消えていた。

 すでに懐に潜り込んでいたイツは、ビリーの顎にダガーを当ててフィニッシュ。

 難なくクリアしていった。


「次はお前さんだ!中に入ってくれ!」


 私はビリーに指示され、入る準備をする。

 すると、イツがやってきた。


「がんばれよ。お前が負けたら、きっとあいつは自分のせいだって思っちまうだろうからな」


 私が……負けたら……。


 数秒沈黙し、私はその光景を頭の中に浮かべた。

 ……そう、だよな。今できることをしなきゃ、次に繋げられない。


 そう決心し、自分の両頬をパシンと気付けに叩いて立ち上がり。


「……うん、わかった。頑張ってくるよ」


「おう、頑張って来い。……じゃな」


 励ますように声をかけてくれると、イツは手を振って試合場を出て行こうとする。


 しかし、そこで私はふとイツの腰に差さったダガーを目にして、ある閃きが降りた。


 ……そうだ。


「……あ、あと、悪いんだけどダガー貸してくれない?」


 私の頼みに、イツは怪訝な顔をして。


「ダガーか?別にいいけどよ、使えんのか?」


「剣裁きなら子供の頃よくやっていたよ」


 おもちゃだけども……。


「なるほど……ほらよ、頑張って来い」


 そう言いながらダガーをベルトごと私に投げて渡すと、イツは去っていった。

 

 渡されたベルトを腰に巻き付け、しっかりと固定されたことを確認して、私はビリーのいる試合場をまっすぐと見る。

 準備完了。さ、行きますか。


 観客席から身を乗り出し、試合場へと飛び降りる。

 私が姿勢を整えると、ビリーは頷いて。


「……始めるぞ3、2、1、」


「始めッ!」


 合図とともに、ビリーは銃弾を撃ち放った。


 イツからダガーを借りた理由は、スキル『気配感知』を使うため。

 動体視力が強化され、銃弾程度なら余裕で捉えられるようになるのだ。


 『気配感知』を発動すると、弾丸の気配がゆっくりとこちらに伝わり、動きがスローモーションに見える。


 その一瞬を見逃さずにダガーを抜き取り、芯を捉えるように小さな弾丸の中心に渾身の一撃を叩き込むと、弾丸はバットに打ち付けられたボールのように歪み、撃ち放たれた時以上のスピードで地面へと叩きつけられた。


 ……『怪力』も併用して初めてできる技法。私の『複製』の真髄はここにある。

 組み合わせて通常の力以上の、数倍もの強さを引き出せるのだ。


 ビリーも驚きはするが、流石に検査官をするくらいの高レベル。

 すぐに銃を撃つ。


 高速連射や、あえて別方向に撃ち注意を逸らすなどしたが、全て同じくして地面に落ちた。


 弾きながら私はビリーの方へと走って行き、顎に切っ先を当て。


「……王手」


「ッ!……驚いたな。まさかこんな風に負けるとは」


「合格ですかね?」


「もちろん!お前さんの将来が楽しみだ!」


 そんなことを話していると、突然試合場のドアがバンと開けられた。


「大変だサツキ!フレイが王都の連中に拐われた!」


「……!!!」


 フレイが拐われたことにより、私達は急遽王都へ向かうことになった。

 そこに、新たなる脅威があることも知らずに……。

次回より第一の王都へ行きます!フレイの安否は一体…!?

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