第七十七話 忘却
「えっと……よくわからないんだけど、何すれば良いの?」
私はホークアイに向かって指示を求める。
「ああ、そうでしたね……では手始めに、そこのフレイ……ああいえ、少女を始末していただけませんか?」
なんだ、そんな簡単な事か。
「何を言って……!?サツキが私に攻撃するなんて、そんなこと___」
「分かったよ。じゃあ、始めるから」
「え?」
スキルを発動しようとするが、何故か発動できない。
この変な結界のせいのようだ。
「サ、サツキ……?さっきから変ですよ?というか、エヴァーは倒したんですね?だったら早く___」
今、邪魔だった結界……いや、世界と言うべきか、その概念を壊した。
あの女の子が何を言っていたのかは知らないけど、とにかくこれで攻撃できる。
「『神速』」
私はスキルを発動し、相手の眼前に数コンマで到達する。
こんな小さな子供、一撃入れれば十分だろう。
「『変化』、『神速』、『怪力』」
三つのスキルを腕部にかけ、頭蓋骨を粉砕する勢いで顔面に向けて文字通り鉄拳を叩きつける。
しかし。
「サツキ……!本気ですか……!?」
驚くことに、その少女は何か不思議な物質で私の攻撃を防いでいた。
ふむ、この攻撃を防ぐって事はよっぽど硬いんだろう。
だったら。
「『変化』、それと……『スキル増強』」
二つチョイスして、私はその物質を空気へと変化させる。
「盾の回復が間に合わない……!やめてください!このままだと、本当に……」
やっぱり、アレは回復するみたいだ。穴を開けられてよかった。
「フィニッシュだね。『破か___」
「一旦そこまでです、サツキさん」
黒球を空中に出し、体ごと消滅させようとした瞬間、後ろからホークアイに止められ、それをしまった。
「……分かった」
女の子の方を見ると、怯え半分驚き半分という顔をしていた。
まるで、信じ切っていたものに裏切られた、そんなふうな驚きだった。
「さて、一旦評議会の本部に戻りますか……」
「ちょっと待ちなさいよ!」
唐突に、また新たな声が聞こえて来る。
振り返ると、男一人にスライム一匹がいた。
スライムにしては珍しく、人の形をとっていてゲームでも見ないような雰囲気だった。
「あんた……サツキをどこに連れていくつもりよ!?
というか……サツキ、あんたも何よそのローブ……!?」
どうも喋っているのはスライムでは無く、それが持っている刀のようだった。
その刀に言われ改めて自分の服を見ると、全体が黒色のローブだった。
それ以外は何も身につけておらず、じぶんでも案外質素だなと思ったりした。
「おや……これは珍しい。ここまで外見に変化が現れるとは……
サツキさんが付けているこのバッジ、分かりますよね?サツキさんはもう、我々の仲間なのです」
「何馬鹿言ってんのよ!そんな飾り一つで仲間かどうかなんて___」
「いえいえ、案外こういうものの力は強力なんです。
仲間意識を与えたり、結束を強めたり……ああ、それと記憶の消去も……」
ホークアイは最後の言葉をニッコリと顔を笑わせながら喋った。
あちら側はかなり怒っているようだが、ホークアイはそんなことを気にせずに私の近くに魔法陣を張る。
「さて、では行きましょうか。評議会に入ったからには、たくさん仕事をして貰いますよ」
「サツキ!駄目です……!」
小さな女の子が私の方へ手を伸ばし、悲痛な表情を浮かべる。
……なんだ?この胸の痛みは……。
気にしてる場合じゃ無いな。さっさと行かなきゃ。
私は魔法陣に足を踏み入れ、その場を去った。




