第七十二話 機兵
設計図は紙でできていた。しかし、膨大な内容をすぐに頭に入れるのは難しい。
外郭とか心臓部とか、あと……この電気。
見たこともない単位のようなものが書かれている、これではいくら必要なのかも……
「フレイ?何をそんなに迷ってるのよ?」
「この電気と考えられる単位の意味が分からなくて……形がいまいち掴めないんです」
私がそういうと、サラマンダーは「はぁ?」と声を上げる。
私はどういうことかと言わんばかりに首を傾げると、サラマンダーはやれやれと言った声色で話し始める。
「別にそんなもの必要ないでしょ?だって……あんたのマナで賄えるんだから」
「あ、なるほど……」
確かにマナさえあれば遠隔で動かす事もできる。だったら……外郭を作成すれば動かせるのでは?
「関節……装甲……自動化システム……まあ、相手に勝手に向かうように設定しただけですが……
完成です!」
その見た目は、まさに燃えるような真紅の装甲。
煙が晴れ、日の光が金属光沢をより強くする。
とは言っても、マナで出来ているので本物では無い。
でも、初めて見るその機械的な、それでいて人間の情熱も感じるその姿は。
「カッコいい……」
「ほんとね、ちょっとだけどあのおっさんのセンス感じるわ。人型にすごく近い……自分できるつもりだったのかもね」
「はい、本来であれば我が君がその御身につけるはずだったのです。
しかし、それを体の半分も削れてしまっていた私に……」
エルゲさんの話も聞いてあげたいけど、今は時間が限られている。すぐに量産しなければいけない。
「では……私が動けるマナを残して、全て出力します……!」
私が念じるとともに、首に突き刺さった棘から当たりを包み込むもやが発生する。
いつかの黒い鎧のように、新たな姿を作り出すために。
完全に包み込むと、今度は作成が始まった。至る所で一点にもやが吸い込まれる。
もやは私のマナの収縮態。これから凝縮され、機兵を作り出すのだ。
神秘ささえ感じるその風景は、まるで宇宙の始まりを見ているようだった。
もやが集中していく場所は白く輝き、突如として装甲を生成していく。
もやが完全に消え去り、そこには何百体という機兵が隊列を組んでいた。
「おぉ……!こ、これがフレイさんの『機械仕掛けの神』……!
我が君もこの光景をきっとお喜びであるに違いありません!」
感動なのか、涙を一筋流すエルゲさんに、私も少し顔が綻んだ。
勝つ、サツキがあそこで戦っていようとも、……もしものことがあっても。
私達があれをどうにかしなければいけない。
「サラマンダー!ウンディーネ!もしもの時は私たちも機兵のサポートをします!さぁ!開戦ですよ!」
機兵達とともに、私達は走り出した。