表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/681

第六十九話 拳

 私の拳がエヴァーを弾き飛ばす。

 スキルが無くとも私に腕のリーチはある。エヴァーは子供だ、私との体格差は明らかだった。


「くっ……!あまり身体を動かしていたのが祟ったか……でも!」


 エヴァーがこちらへ向かってくる。また拳で対応するしか無いか……

 私は拳を打つ。しかし。


 私の拳は空を殴っていた。空振り……!?どこへ行った……!?


「何も昔から動いていなかったわけじゃない!」


 振り返るとそこにはエヴァーが居た。

 

 それと同時に回し蹴りを喰らい私は後ろへ後ずさる。


「ぐっ……!上半身を屈めて避けたのか……!」


 子供だぞ……!?精々十代前半……それでこの動きだと……!?


「小さい頃から父母に英才教育を受けていてね、あらゆる事を学ばされた。

 さしずめ天才少年といったところかな……?そして」


 突如私の後頭部へ衝撃が走る。


「ぐあっ……!」


 そんな……目の前にエヴァーがいるんだぞ!?それなのにどうして後ろから攻撃が……!?


「下弦、よくやった」


「はっ、ありがたき幸せ」


 エヴァーの声ではない、別人の声が後ろから聞こえてくる。


「気づいてなかったかい?この同盟の最後の転生者、下弦影丸さ。

 スキルは『影』だったけど……スキルを無効化された今じゃ意味が無いからね、特別に教えてあげるよ」


 下弦と呼ばれたその男は黒子のような姿をしていた。

 一体いつから……私の後ろにいたんだ?


「いつから……いた……」


「三日前、ってとこかな。下弦は君の影に潜り込んでこっちに情報を伝えてくれたんだよ。

 だから君のところにピンポイントで投げられたんだ」


 三日前……!?ネヅかサトルに付いていたのが私に移ったのか……?


「さて、これで二対一だ。自分の能力が仇になったな……」


 負けちゃ駄目だ……私があの力を引き出せたのは皆がいたからだ!

 こんなところで倒れていられない……!


 私は四つ這いになっていたからだに力を入れ、拳を握りしめる。


「うおりゃあああああぁぁぁぁ!」


 渾身の拳は下弦の顔にめり込んだ。

 引っこ抜くと同時に、下弦はその場に倒れ、気絶した。


「……ストレート」


「は……?あり得ない、そんな力、いったいその体のどこから……?」


 私はぐるりとエヴァーの方へ身体を向け、ズカズカと歩み寄り、胸ぐらを掴む。


「ひっ……!や、やめろ……悪かった、あいつらは____」


「私の力は皆の力だ!喰らえ!最後の一発!ストレートおおおおおぉぉぉ!」


「ぐぇあぁぁぁ!」


 最後の力を出し切り、私はその場で膝をつく。

 エヴァーは気絶した。あとはこの石を……この……石……を……






「木に引っ掛かったのが幸運でしたね……サラマンダー、ウンディーネ、いますかー?」


 私の声がそこら中に響き渡る。

 城の小さな中庭、翼が消えたあとどうにか無事だったものの……サツキがどうなったのか……。


「フレイー!ここ、ここよ!助けて頂戴!」


 サラマンダーの声が聞こえる。この林のどこかだ。

 すぐ助けに行かなくては……!


 私は木の枝に引っかかっていた服を枝から抜き、数メートル下の地面に降りた。


「サラマンダー!どこですかー!?」


「ここ、ここよ!真上にいるわよ!」


 その声を聞き上を見ると、私と同じく木に絡まっているサラマンダーがいた。

 

「ちょっと待ってくださいね!そこにすぐ行きますから!」


 とは言ったものの、『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』が使用できるかどうか。

 空中でいきなり解けたあと、全く使用していない。


「使えますかね……棘は刺さったままですけど……あっ、使える……!」


 いつもの感覚で槍を作るイメージをすると、棘から白い物体が現れ、槍を形作った。

 しかし、このままではサラマンダーごと貫いてしまうかもしれないので、ダガーに変形させる。


「サラマンダー、じゃあ切りますね。えいっ!」


 ダガーを飛ばし、サラマンダーに絡まる枝やツルを切り裂く。

 すると少しまだツルが絡まりながらも、サラマンダーは私のもとに落ちてきた。


「ありがと、感覚が無くても木って鬱陶しいのよ、燃やせればいいんだけどねぇ……」


 サラマンダーは気軽な声で地面に転がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ