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第六十四話 重症

「姉さん!」


 ウンディーネは咄嗟に駆け寄るとサラマンダーを抱える。

 不安そうな顔をしていたウンディーネはサラマンダーの刀身に触れて安堵の表情を見せる。


「良かった……意識が薄れているだけみたい……」


 ウンディーネの顔から見るに、本当に心配していたんだろう。

 いつも落ち着いているというか気怠げというか、そんなウンディーネがここまで焦るなんて、やっぱりウンディーネにとってサラマンダーは替えがたい存在のようだ。


 ……しかし困った。

 今なお建物の崩壊は続いているし、私達はこのままでは生き埋めになってしまう。


 ウンディーネは破壊が難しい体だし、サラマンダーも動けそうにない。

 ……そうだ、『幻術』の効力が消えた今、身体を動かせて十分な破壊力を持った仲間が復活したじゃないか。


 瓦礫が崩れる中、鈍い聴覚を使い遠くへ耳を澄ます。

 ……この何かが削れていく音、前にも聞いたことがある。……間違いない。


「みんなー!大丈夫ですかー!?」


 天井が激しい音で貫かれると同時に、現れる。

 足の裏には円錐状の螺旋を描く物体、白い髪と小さな身体。



 フレイだった。


「フレイ!良かった……!私も動けなくって……とにかくお願い……!」


「そうみたいですね……あれ?サラマンダーもぐったりしていますが……」


 サラマンダーや私を見て何か察したのか、フレイは私達を掬うようにして『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)に乗せる。


「あまり良い状況では無さそうですね……すぐ上へ行きましょう」


 フレイはそういうとドリル型の重機を作成し、私達を一人ずつ優しく入れていった。




 フレイは人形が壊れると同時に目を覚ましたらしい。

 人形に痛覚は搭載していなかったのが不幸中の幸いか、心身共になんの異常も無かったようだ。


 しかし、私達のいる座標が分からず自分たちの移動時間から逆算してその距離に当たる場所を回っていたのだ。


 そこで地表から氷が溢れ出る平原が目に止まり、そこへ向かうと私達がいたらしい。


 ホークアイの魔法はそこまで強力だったのか、と私も動揺の色を隠せていなかったが、まずは何よりサラマンダーだ。


 サラマンダーは刀の方にこそ外傷は無いものの、刀全体に走っていた赤色の模様が先端から失われ、半分近くまで減っていた。


 ウンディーネが言うにはあれはマナの体の方のメーターのような物であり、サラマンダーの発言通り身体の半分を失う致命傷になってしまった。


 宿主の身体が肉や皮膚のような物なら、マナの身体は神経や内臓、骨のように重要な役割を持つ。

 今のサラマンダーは浮き上がったりマナを循環させる事が難しいようで、戦力としては難しい状態だった。


 マナだと言うのなら、と思って『変化』も試してみたがダメだった。複雑な構造で作られた肉体は私の内臓や肉を作るよりも遥かに難しく、『万物理解』でも再現不能な構造だった。


 それを治せるのはそれを作った存在だけ……以前聞いたマナティクス、という神と言うべき者のみだった。


「サツキ……どうしますか?サラマンダーは重症みたいですし……エヴァーと言いましたよね?新たな王の収集は一度やめにした方がいいかもしれません」


「……うん、そうする。マナティクスとやらが祀られている場所なら幾つか有るみたいだし、あいつらだってこっちの強力さは知っているんだから下手には攻め込んで来ないだろう」


 私はこの時、気付いていなかった。

 私達の『影』にひそむ存在がいたとは。

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