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第六百四十五話 人混み

 っと、いけないいけない。見惚れてる場合じゃない。

 

 当初の目的を思い出し、俺はある一点に目を向けた。


 そこには、奥の壁一面に貼られた、冒険者達がたむろしている板があった。

 窓口のすぐ横から伸びているそれには、柱に貼られていた量とは比べ物にならないほどの数の貼り紙が板を埋め尽くすように貼られていた。


 その貼り紙の一つを、一人の冒険者の男が手に取る。彼は窓口までそれを持っていくと、置いてあった羽ペンを手に取り何か書き込み始めた。何か手続きをしているのだろう。


 となると……あれは依頼書か。うん、集まっている人の数からして依頼書に間違いないはずだ。

 

 恐らくあれらの中から受ける物を一つ選ぶのだろう。冒険者の彼がやっていた手続きは依頼を受けたサインか身分証明か、そんなところと見た。


 俺の目的地は、あそこだ。


「行くか」


 そう呟き、一直線に俺は歩き出した。

 しかし入り口から離れるにつれて、次第に人の混み合いは酷くなっていく。右も左も大人の巨体に埋め尽くされ、押しつぶされそうになる。


 先程外で人混みに遭遇した時とは違い、今は頭の方も冷静になっている。そのためか、周りの大人の厳つい格好に俺は威圧感を感じた。改めて近くで見ると、鎧を着込むような人はがっちりとした体型の人が多い。かなり身長が高く、何かを話しているようだが俺には聞こえなかった。


 そして何故だか、俺の通る道はどんなに歩こうともそういった男しかいなかった。どこを見ても鎧、筋肉、鎧、筋肉。その中に顔を出している人を見かけ、興味本位でチラリと顔を見た。だがそれがいけなかった。

 

 下から見上げた彼の顔には、数え切れないほどの傷跡が残っていたのだ。


「……!」


 思わず表情が固まって、呼吸も一瞬止まった。足だけは動いているが、少し歩みが遅くなっているかもしれない。


 ……見るからに、荒くれ者と言った感じだ。もし因縁でもつけられたりしたら、俺は何とか出来るのだろうか……。


 そう思って胸ぐらを掴まれる自分を想像した。もう見るからに勝てない。

 

 想像しただけだというのに途端に血の気が引いてきた。じわじわと、心が行き場を失くしていくような感覚を覚える。誰も俺を守ってくれる事なんて無い。この世界では、誰も俺を……。


「……」


 いや、いやいや。誰も、じゃない。俺だ。俺が自分で自分を守らなくてはいけないんだ。

 因縁をつけられたりでもしたら、返り討ちにしてやろう。……仕方は、分からないけど。


 今更になってまた心細い一人旅を実感する。気持ちと実力は、比例しているのか分からない。

 未だ残るもやもやを抱えつつ、空元気に胸を張って、俺は人々の間間をすり抜けていった。

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