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第五百八十一話 王としての職務

* 


 その夜のこと。

 機械都市の風景に夜の帳が落ちていく中、人々は明かりの灯る街灯の間を溢れ返らんばかりに歩いていた。

 施設からの帰りがその内の九割以上。皆が楽しげな表情だ。


 その光景を、はるか上から眺めるものが一人いる。

 巨大な窓ガラス越しに薄ぼんやりとした目つきの表情は幼い頃の姿が写真のように留められていた。


 彼の近くにいつもいる機械の精霊は、今ここにはいない。そのために彼は沈黙したままその夜景を眺めているのだ。


「今日も、皆平和に一日を終えられたか……」


 彼はため息を吐きつつ、夜景に背を向け歩き出そうとした。

 しかし、彼の足は数歩進んだ地点で立ち止まる。彼の目の前に、地面から数センチ浮かんだ頭大の球体が浮かんでいたのだ。


 球体の表面は平行な線がいくつも走り、時々によって斜めの線がそれらを結ぶ。

 彼がそれを物憂げな目で見ていると、唐突に球体から声が飛び出してくる。


「『報告。路傍にて暴行の発生を三分前に確認しました。機械法第三条四項、並びに人法第三十二条に基づき

被害者、もとい加害者双方を拘束状態に置いています。如何なさいますか?』」


「……通してくれ」


 彼の一言と共に、窓とは反対側の方向から空気の抜ける音と金属が擦れ合う音がする。


「ぐっ……このっ、くそっ、離しやがれ!」


「……」


 片方は、身体全体を白い塊に覆われ悪態をついている。

 もう片方はと言うと、対照的に覆われているのは手首だけで、手錠のように二つの輪が腕の自由を奪っている。


 しかし、どちらの目にも白い塊が張り付いていた。

 それを見てコウヤはため息を吐き、球体へと手をかざす。瞬間的にホログラムが空間へと浮かび上がり、片手でコウヤは手元も見ずに操作する。


 すると、部屋の至るところから黒い粒子が凄まじい勢いで吹き上がる。その全てが、コウヤの元へと集まっていき全く別のシルエットを形成していく。


 二メートルに及ぶ黒いローブに覆われた巨体が、その場に現れた。


 頭部だけが幼い印象を思わせる小さな大きさのために、十二等身という違和感のある見た目だ。

 それを紛らわせるように、コウヤは腕を伸ばし首につくフードを目深に被る。


「……目隠しを、取ってくれ」


 フードの間で音を反射させくぐもった男の低い声が、辺りに響く。

 それと同時に、王の目の前に縛り付けられていた二人の目隠しが剥がれ落ちた。


「ぐっ、眩し……。あ? な⁉︎ はぁ⁉︎ なんで、あんたが……⁉︎」


「……!」

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