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第五百七十一話 転生の秘密

 茶を傾ける手も止まり、私は宙をただただ呆然と眺めるしかなかった。

 それを見てか、コウヤはティーカップを皿に置くと。


「……時にサツキ。俺という人間の不可解さ、気に止まるような謎がいくつかあると伺うが」


 彼の遠回し気味な言葉に、私は眉を潜めて顔を上げた。


「謎……? 謎って、何が」


「つまりだ……。こう、内面、と言うよりかは見た目に関することなのだが……」


 指先を自らの身体に滑らせ、また遠回しに言う。

 見た目……? 特徴といえば、オレンジ色の髪が目立つが……私の外見だって転生して多少は変わっている。あまり気に留めるようなものでも無い。


 となると……男か女か分からないような声だとか、小学生並の身長か? いやしかし、エヴァーはコウヤと同じ程度だった。それに、外見から逸脱した何十年も歳をとったような性格だって____


「……」


 そこで、頭の中で唱えていた言葉が停止する。脳裏に芦名の死際の言葉が蘇っていたのだ。

 『ようやく……ようやく、死ねるんだ。俺が何年生きていたか知っているか……? 百二十年だ、百二十年』


「っ……!」


 途端に、身体中に悪寒が走った。芦名はとてもじゃないが百二十年なんて生きているようには見えなかった。しかもいつ死ぬか分からないと言って……そもそも、芦名が評議会に与したのって、一体いつからだ?


 まさか……まさか、そうなのか? だとしたら、確かに成立する。何故子どものような見た目の転生者達が、揃いも揃って子供に似つかわしく無い性格をしているのか。何故評議会はあそこまで盤石なものへと仕上がっていたのか。


 目を見開いて固まっていた私は、コウヤを改めて見た。彼の身体は、私と同じようなローブ似の布地で覆われている。その目は、宝石のサファイアのように深い青色をしていた。


 でも……分かる。彼の目の奥底は純粋無垢などでは無い。宝石が不純物を得て初めて色を持つように、私以上に、目の奥がくぐもっていた。


「……何故、君のような人間が複数いるのか……。漫画やアニメじゃない。そんな天才児なんてそうそう現れる物でもないし、ましてやこの機械都市を作り出した人間が、子どものはずがない」


 怯え気味にジッと見る私をコウヤは面白そうに眺め、何も言わなかった。もっと話してみろ、と言うことなのだろう。


「でも、身体はどう見たって子どもだ。身長の低い大人なんかじゃない。肌に、体つきに、全部がそうだ。間違いなくその身体は子どもだ」


 それは、芦名だってそうだった。若干歳を食っているように見えたが、それでも二十代程度。

 現世においての芦名の記憶では、同じ歳だった。転生から、百二十年経っていると言うのに。


 つまり……つまり……!


「転生した直後から、転生者の身体は成長が止まる……そういう、ことなんだな?」

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