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第五百六十話 理想郷

「理想……郷……?」


 それって、転生するときにあの神様に言われた……


「この世界は変わる必要がある。魔法やスキルに縛られ、この世界の人々はこれ以上の進歩を必要としていない。文明としては発展途上ともすら言えないような状態なのだ」


 ガラス越しに映る自らの国を眺めて、コウヤはため息をつく。その理想郷とやらが、この箱庭の中なのだろう。しかし、あまりにも一方的な目だ。評議会なんてものを纏めるのに、それぐらいの狂気は必要なんだろうけど……。


 しかし、いくら弱っている身体とは言え、私はその言葉を捨て置く事はできなかった。


「それは……お前のエゴだ……! 姿も何も知らないけども……私だって魔王がかつていた事は知っている…! 人類を……脅かすモンスターが消え……たら、その後は平和ってのが……ゲームの筋なんだ。それを、無理やりねじ曲げて……」


 軋む身体に歯を食い縛りつつ、私はかすれ気味に吠える。

 だが。


「っ……!」


 私は次の瞬間、思わず身を竦めてしまった。

 それは、コウヤの眼を見たからだ。どこまでも遠くを見ているような感情を露わにしていなかった彼の目が、鋭く、私へと突き刺さっていた。


「“ゲーム”の話を……“現実”に持ち込むな」


 コウヤは怒り狂うわけでもなく馬鹿にするわけでもなく、ただ冷ややかな怒りを抱いて私へそう告げる。

 突き刺さる彼の視線に圧倒され、私は彼の目へと視線を釘付けにされていた。


「……コウヤ……」


「む……すまない、ブリュンヒルデ。少し熱くなり過ぎてしまったな。サツキにも、申し訳なかった」


 コウヤは謝罪の意を示していたが、それは私にとってはむしろ恐怖を増長させるものだった。

 私の顔はあまり気にしていないのか、コウヤは更に言葉を続ける。


「魔王という巨大な存在が消えた後は、やはり領土の問題が起こる。今まで魔王領だったものをどう分割するか、とな。それだけじゃない、魔物から人々を守る職の大幅な勢力減少、魔王のいない世界での生き方……問題の数だけで言えば、むしろ複雑化する」


「……ギルド……」


「そうだ。そう言った物達なのだ。発端はいくらでもあるが、戦争を食い止める事はできない。だから最小限に留めるようにした。転生者同士のいがみ合いとしてな」


「……は?」


 今、なんて……


「だが、俺の求める理想郷とは、誰も苦しみと共に死ぬことのない世界だ。今の世界はあまりにも違い過ぎている。故に……その第一歩、貴殿に靴になってもらおう」

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