第五百四十三話 強い心
私は皆の返答を待つ。
だが、皆は私をジッと見るだけで、何も言う事はなかった。
「み、皆……?」
「あんたが行きたく無い人って聞いたから私達こうしてんのよ。私達皆、言いたい事は一緒よ」
サラマンダーが、刀身を仄かに赤く輝かせる。
彼女の言葉のままに皆の顔を見回すと、険しい表情こそしていたが、誰もがその目の奥に輝きを宿していた。
「ここまで来て戻るだなんて冗談も良いところです……。後はもう、進み続けるだけですよ」
「知らないものばっかりでちょっと怖いけど……皆を守れるなら、私も頑張るよ」
フレイとイレティナが語る。伏目がちに怯えてはいたが、拳を握りしめ震えは無かった。
本当に、皆それでいいの……? この先がどうなっているのか本当に検討もつかないのに……。
「構わないわよ」
背後から声がする。
振り向くと、ウンディーネが青く透ける身体を動かし、私へと歩み寄ってくる。
「ウンディーネ……」
「私達、理由はどうあれあなたと死ぬ時は一緒の覚悟をして来ているのよ?」
確かに、何度も聞いて理解した話だけども……。
「だからと言って皆少なからず怖いと思っているのに、無理して行く必要は_____」
「不安なんていつだって付き纏うものよ。それに実際に見た訳じゃないから分かりづらいとは思うけども、あなたがいない時は皆何も分からないまま暗中模索だったのよ。でも、それでも私達は今ここにいる。覚悟ならサツキ、あなたにだって負けないわ」
ウンディーネの言葉の迫力に気圧され後ろを振り向くと、フレイとイレティナ、サラマンダーが頷いてそれを肯定している。
「皆……」
「ウンディーネが言った通りです。サツキ、怖いのは確かですけど、戦う前から逃げるなんてことをするつもりも有りません。入りましょう、中に!」
怯えた表情を塗り替えて、フレイは目を爛々と輝かせる。彼女の目は私を一直線に見て、眩いばかりだった。イレティナも、その横で小さく何度も頷いている。
評議会から脱出した後、私……いいや、私だけじゃない。皆も、私の事に付きっきりだった。芦名もフレイもヴィリアも、皆私の事を励ますためにいろいろな事をしてくれていた。
今思い返せばそんな余裕があったのは、他の皆が精神的に私に遙かに勝っていたからなんだ。私の弱い心を皆は鍛える時間をくれた。お陰で、私はここからまだ逃げ出していない。ただの予感、皆を心配してと言うだけのことだった。
……ああ、気づかないうちに私は皆をまた軽んじていたかもしれない。今は、強い心を持った皆に、畏敬の念すら抱いている。
私は、目を瞑り、深呼吸をした。沸き立つようであった鼓動が徐々に収まっていく。
脈打つようであった血流が勢いを落とし、私はリラックスしていた。
適度に力が抜け、身体は準備万端。
私は立ち上がるような勢いで、前へ向かっていった。
「よし! 皆、行こう! 目指すは図書館だ!」




