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第五百三十七話 壁の先

 どういう事だ……⁉︎ 『変化』も、『万物理解』と同じように機能しなくなったのか……⁉︎ いや、確かに一部は空気に変わっていた……そう、一部は。


 さっきから何か奇妙だ……。それも、その奇妙なことは全てスキルやマナに関わっている。私の身体だとか、精神だとかには大した変化はいのに、だ。


 流動する純白に揉まれるようになりながらも、私はどこか冷静さを保っていた。包み込んでこそいるが不思議と息苦しくはなく、心地よい。全身がマッサージされているようで……って、駄目だ駄目だ。


 ともかくこの機械都市自体が違和感の塊だ。皆は大丈夫だろうか……? イレティナはあの身体能力があるから良いとして、問題は残りの三人……特にフレイが気がかりだ。


 こう言っては角が立つが、フレイもこの世界の人でありエルフでありながら、正直身体能力は私よりも下だ。機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』が無ければ、精神力や操作力こそ育ってはいるもののそれ以外は以前のフレイとなんら変わりない。


 もし私と同じように出力が落ちたり……最悪、操作不能にでもなったりしたらその時こそフレイは戦力として数えることができなくなってしまう。それは私たちにも不利だし、フレイの気持ちも考えるといたたまれない。


 一刻も早く、この謎を解明しな____


「わぷっ」


 と、その時、唐突に私の身体に纏わり付く純白の感覚が消え、横向きの状態で投げ出される。

 頬に感じる物はひんやりと冷たく、それでいてザラザラとしている。コンクリートのビルを思い出したが、あれとは違い、模様のようなデコボコが感じられた。それだけではない。これは、地面だ。


 何か、音が聞こえる。風の音でもない、機械の駆動音でも無い。……人のざわめき?


「ここは……⁉︎」


 私は驚く心につられるまま、飛び上がるように上半身を起こす。

 そこには、大きく広がる道の横に立方体型の真っ白な建造物がいくつも建っていた。それだけではない。私の横を次々と人が通り過ぎていく。歩いていたり、見知らぬ乗り物に乗っていたりと、それぞれだった。


 そして、私の視線の遥か先、立方体の建造物がある一線で消えたところが広場のようになり、その中心に、巨大で、高い、建物が建っていた。


「なんだあれ……」


 形で例えるには、形容し難い。様々な形をした物が複雑に組み合わさっている。

 だが、そのシルエットだけを薄ぼんやりと見るならば……巨大な城、そう言ったものに見えた。


「サツキ! ここは一体……」


 下半身をまだ寝そべらせている私の背後から、唐突に聞き慣れた声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこにフレイと……皆がいた。

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