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第五百三十六話 白い壁

「ま、不思議だけども……機械都市の状況も分からないし、順を追って解明していく必要があるね」


 『万物理解』が使えないことに加えて、本当に不思議だが全く人が見えない。情報ゼロに近い現状ではいくら推理をしても何の意味もないだろう。


 私の考えは皆にも通じたらしく、まだ少し気になってはいるようだったが、一旦保留という空気になってきた。


「さて。となるとこれか……」


 もう一つ私は気がかりなことがあった。

 その気がかりなことというのは、後ろを振り向けばすぐわかる。


「……なんだろう、これ……」


 振り返る私の視界全体を覆うのは、純白。フレイやマナティクス程までとはいかずとも、無垢というか、清廉な印象を受けた。そして見上げれば太陽を隠すとまでは行かずとも、中々の高さ……東京スカイツリーぐらいはあるだろうか。


 どこまでもどこまでも白く輝き、影がかかっている場所でむしろその白さに磨きがかかっている。

 また新しい壁が、現われていた。


「そ、その……サツキ、この壁は大丈夫なんでしょうか……?」


 不安げな声でフレイが問いかけてくる。外の黒い壁のこともあるし、さっきの機械達のことも考えるとこれもまた何か危害を加えてきそうな気がするのは確かだ。だが……。


「さっきから大分ここにいるけど、何もしてこない。この壁は多分大丈夫だと思うよ」


 そう言いつつ、私は安心だと伝えるために壁に手を当て体重をかけるような仕草を取った。

 触れてみた瞬間の感触はなんて事のない壁だった。多少滑らかさはあるが、僅かな冷たさを帯び、石でできたような壁のようだった。


 だが。


「____ぅあ」


次の瞬間、私の触れる場所が一瞬にして柔らかくなる。緩く空気の入った風船に手を突っ込んだときのような柔らかさだった。


 私の体重は行き場を失い、当たり前のように、そこには何もないかのように一息のうちに私を壁へと沈み込ませる。


 沈み込んでいく瞬間に、誰かが、もしくは全員なのか私を呼ぶ声が聞こえてきた。

 だが、それでも私が沈んでいくのは止まらない。最早重力だけでなく、この壁自体が私を飲み込もうとしていた。


 もう問題ないだろうと思っていたのに、これか……! まあ、捕まったのが私だったという事を良かったと考えておくべきか。


 私は顔にまで密着しようとし出す目の前の純白を見据えながら、緑色の光を手に宿す。

 私に纏わり付くこの白いのを空気に変えてやれば良いだけの話だ!


「『変化』」


 そう、私はいつもどおり落ち着いて呟いた。次の瞬間、目の前は開け、フレイ達の姿が目に映る。



 はずだった。


 私の目の前には、未だ純白が残っている。距離は離れこそしたが、精々三十センチ程度しか離れていなかった。


「な……⁉︎」


 理由を考える間も無く、次の瞬間私の身体を純白が支配していった。

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