第五百三十二話 機械大群
「ほぇ?」
どこから出したのか機械の身体の半分はありそうな長さの銃。黒光りする銃身の先端が、私へと向いていた。
「……あー……」
大脳の半分ぐらいが思考を停止する中、私はただ自分のするべきことを頭に思い浮かべていた。
「逃げろおおおぉおお!」
次の瞬間、私が数コンマ前までいた場所に光線が放たれる。
しかし、『神速』によって次の瞬間には私は機械の遥か遠くへと逃げていたのだ。
「何アレ⁉︎ 光線⁉︎ なんでライフルから光線が⁉︎」
「コウヤが使っていた物と似ていたわ……! サツキどうすんのよ⁉︎」
サラマンダーを鞘に、ウンディーネを肩に、片腕でイレティナを担いでもう片腕でフレイを抱き上げ私は爆走する。『神速』にも『スキル増強』を使った。正直今機械に苦手意識があるから戦う気も起きていなかった……!
しかし……どうするか? サラマンダーは私にそう聞いたのか?
ふふん、どうする必要も無いとも。私は明確な自信を持って徐々に足の回転率を下げていく。
「サラマンダー、あの機械には脚があったんだ。キャタピラとかそう言う物じゃなくってね。並の金属程度の硬さじゃ仮に私の足と同じくらい速くても先に身体がズタズタさ。十キロくらい走ったかな?ここまで来れば大丈……」
完全に走るのを止め、車のエンジンが止まるように私は歩きつつ減速を続けた。
ほぼ普通に歩いている時と変わらないスピードになった時、不意に私はビルとビルの間に目を向けた。私はこの時、よく卒倒しなかったと思う。
そこには、同じ機械が、お互いを押し合いそうな程にひしめき合っていた。
「『領域外____」
「『ただちに退去____」
「『機械法____」
ギチギチとつまり、お互いがお互いを押さえつけてしまっているのか中々前に出てこない。
私は目を見張って固まってしまっていた。
だって、こんなに数がいるとか知らな____
「サツキ! まずいですよ! 早く、早く『神速』でも『無限』でも……!」
フレイは今にも逃げ出さんとばかりの悲鳴に似た助けを私にかける。
機械もあと五、六秒すれば飛び出しそうなほどに前に出てきた。そんな中、私がまた取った行動は。
「うおおおおおぉおおおぉぉぉ!」
再び、その場から逃げ出すことだった。
しかし、走り出して程なく目の前に大量の機械が現れる。
「げぇーっ!」
「右です! 右に曲がってください!」
考える間も無くフレイの指示通り私は急カーブで機械の群れをまた切り抜ける。
だが、また目の前に機械の群れが現れた。
「ひぃーっ⁉︎ なんでこんなに機械が⁉︎ しかもよくよく考えたらあれ歩兵機械じゃないの⁉︎」
「とにかく、曲がってください! 今度は左です! ……しかし、変ですね。まるで私達を誘導しているみたいです……」




