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第五百十話 吸収する国家

「……へ?」


 私は一言、そう間の抜けた声を上げた。

 そしてその直後に。


「えっ……はっ、えぇぇ⁉︎ イ、イツ、今なんて言った⁉︎」


「うぉっ⁉︎ だ、だから生活困窮している奴を助けてるって……」


 一秒にも満たない間に立ち上がり彼の目の前に立て膝のまま迫る私に、イツは怯みつつそう返す。

 自分でも足の動きが若干家に潜む例の甲虫に思えて不気味だったが、それどころではない。


「そこなんだけどもそこじゃなくて機械都市! 今、イツ機械都市って言ったよね⁉︎」


「お、おう……それ以外もう国なんてねえだろ? サツキの目指す次のところってあそこか?」


「うん、そりゃもう……」


 生活困窮者。確かに無法地帯でアウトローになれる奴だなんて一握りだろうし、秩序をその場で作ってもどうやったって余り者が出る。正直イツのような人間がほとんどだろう。


 そう言う人を救ってあげると言う名目で機械都市の王は人を集めている……のか?


 実際芦名の記憶からして、それは頷ける。


 評議会は適当に王になった転生者のメチャクチャで滅亡寸前の国とか、周辺の国に圧力をかけて傘下に置いていた。それで人々の貧困問題の解決とか、生活水準を解決していたのもまた事実だ。


 そのような芸当ができるのは、評議会議長もとい機械都市の王の手腕あってのことだった。


 国があったからそうやっていたわけで、国が無くなったら次に打つ手は、もう、人員と土地の吸収だろう。


 人員が増えれば当然国の労働力が増える。労働力が増えたら、荒れに荒れた機械化の片鱗がちょっとぐらいしか無いであろう土地を例のとんでもない武器で制圧すれば土地もどんどん増える。


「……どうしますか? サツキ……」


 フレイは、心配げな声で私に問いかける。

 当の私は今の今までずっと沈黙していた。私が何か考えて悩んでいるのであろうとフレイは見抜いたのかもしれない。


 確かに、機械都市がまだ増長していく可能性があると言うのは、ちょっと驚きだ。

 ……しかし。


「……良いね」


「え?」


 私の呟いた一言にフレイは小首を傾げて聞き返す。

 そんな彼女を横に私はバッと皆の方向を振り向き、高らかに言った。


「むしろ好都合だよ皆! 公道の意味が、やっと分かった!」


 私の言葉にその場にいた全員が何を言っているんだとばかりに固まる。

 しかし、一瞬でそんなものは解決するだろう。


「オルゲウスにだって来れるって事は最早この大陸でいけない場所はないって事だ。つまり大量に人が来る! そしてあの頑丈な防壁、どこまで続くか分からないあの高い所を上に飛び越えていくなんてできない。まして戸籍まで作ってくれるって言うんなら、それなりに時間はかかる!」


 私の言葉に、フレイが何となく分かったような表情をしていた。イレティナはその横で頭を文字通り捻って考えている。


「行列が出来ているんだよ、機械都市の壁に!」

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