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第五百八話 マナの違和感

 それは混乱を見越してでも伝えておこうと私が決めた言葉だった。だが、目の前のサラマンダーはキョトンとした様子で。


「え? なんか違い有るのそれ?」


「えっ」


 意外にもサラマンダーは取り乱す様子を見せない。というか全員だ。全員それがどうかしたかと言うような表情をしている。


 逆に驚かされてしばらく口が塞がらなかったが、おずおずと私はサラマンダーとウンディーネに問いかける。


「……逆に感じないの? 精霊的な何か」


「精霊的な何かって何よ……私は何も感じなかったけど?」


 うーん……特に感じなかったか……。

 サラマンダーの言葉に私は沈み気味な表情になる。だが、ウンディーネが意外そうに声を上げる。


「あら、私は感じたわよ。何というかあそこの空気がやけに肌に触ったのよ」


「……肌に?」


 予想していなかった単語に興味を惹かれ、私は鸚鵡返しにそう聞いた。


「ええ。鈍感なまくらには分からないと思うけど、いつもの流水みたいに滑らかなマナの流れがあそこだけ変だったのよ。流れているのに代わりはないんだけれど……変に角ばってて身体に当たると砂嵐みたいだったわ」


「……角ばってる……」


「だーれが鈍感なまくらよ! あんたのやわやわですぐ吹っ飛ぶような身体が原因でしょうが! 精霊関係ないわよこれ!」


 また口喧嘩が始まったウンディーネとサラマンダーを他所に、私はイレティナとヴィリアのいる方へと顔を向けた。


「……と、言うわけなんだけど、二人ともなんか思い当たることある?」


「イレティナは良いとして経験すらしていない私に聞くか?」


「確かに」


 ヴィリアの助言通りイレティナの方をバッと向いて彼女の目を見つめるも、驚いたような困ったような顔をして横に首を振るばかりだった。そう言わずにとばかりに顔を寄せても、更に首を振るだけだ。


「……何がまずいのかだけは聞いてやる」


 イレティナと私の問答になっていない問答を見かねたのか、ヴィリアはため息混じりにそう言ってくれた。

 僅かに安心感を覚えたが、すぐさま私は説明を始める。


「……実際は、まだ確証は掴めてないんだけどね、一つだけ言えることがあるんだ。それはマナの記憶が空になるなんて事はありえないって言う事」


「そう……なのか?」


「うん。マナは常に自分がどう使われてきたのか、何を感じたのかを記憶している。正確に言うと記録に近いけどね。だから覚えていたものを改竄されようが常に新しいものを覚え続けるんだ」


 ヴィリアは私の説明に顔を伏せ顎を手に当て若干考える素振りを見せたが、しばらくもしないうちに顔を上げると。


「つまり……常に改竄され続けていると言いたいのか?」


 私はヴィリアの回答に頷く。


 すぐに正解を言い当てられた。だが、そうとしか考えられないのも事実だ。マナに対してそこまで長時間働きかけ続けられると言うのは、『変化』を一日二十四時間ずっと、それも都市全土にかけているようなものだ。


 どう言う理屈でそんな事が出来るのかは見当もつかない。ただ、もう一つほぼあり得ない可能性を挙げるなら……。


「う、うぅん……」


「あっ! サツキさん! フレイちゃん目覚ましたよ!」


「えっ、本当⁉︎」


 イレティナの喜しげな声色につられて私もフレイの顔を驚きつつ覗き込む。

 そこには、確かに薄目を開けるフレイの姿があった。

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