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第四十九話 病床

 目を覚ますと、私の目には白い天井が映った。

 身体を包む柔らかい感触に気づき起き上がると、私の上には毛布がかけられ、下にはクッション。

 どうやら私はベッドの上に寝かせられていたようだった。


「……どこだここ?」


 一言呟き、私は周囲を見回す。白いカーテンで遮られた小さな部屋で、ベッドの脇には簡単な作りの椅子が一つ置いてあった。


 椅子の上にはサクレイが置かれて、ほのかに甘い香りも感じる。

 不思議なことに食欲は湧かず、身体も怠く感じた。


 その時、カーテンの隙間から指が現れ、遮られていたカーテンを端へ寄せる。

 そこにいたのはウンディーネだった。


 手に桶を持ち、タオルが掛かっているのが見える。


「あら?起きていたのね。冷えたタオル持ってきたわよ」


 私は自分自身が『病魔』に襲われている事を思い出した。

 今、私は病床に伏せ看病を受けている……そんなところだろうか。


「えっと……ウンディーネ、ここは?」


 椅子に座るウンディーネは、私の質問にタオルを絞りながら答える。


「ここは医務室よ。他の医者が忙しそうだったから私があなた達の面倒を見てるのよ」


 医務室か……。あ、そうだ。フレイも何かに掛かっていたはず……。


「ウンディーネ、フレイはどうしたの?身体が痺れるって言ってかなり辛そうだったけど……」

 

 私はフレイの安否が気になり、どこにいるのかだけでも聞こうとした。

 すると、ウンディーネはおもむろにタオルを私の頭に乗せ立ち上がる。


「あなた達って言ったでしょ。すぐ隣にいるわよ」


 そう言い、ウンディーネは私の横側のカーテンも取り払う。

 その先には、私と同じようにベッドに寝かせられていたフレイがいた。


「フレイ!そこに居たの……身体の方は……?」


 私はフレイの方を向いて調子を聞くが、フレイは返事をしない。


「……フレイ?」


「今彼女身体動かせないのよ……。昨日の痺れが更に強くなって、手足が上手く動かない。それで、今は寝ているわ……」


 そんなにひどくなって……。


「……こんなところにいるわけには行かない。すぐにでもあの仮面男を……ぐっ!?」


 私は怒りに燃えながらベッドを降り外へ向かおうとしたが、足をベッドから下ろした瞬間、突如体全体に痛みが走る。


 電撃のような激痛に思わずその場で倒れてしまうが、ウンディーネはため息をつきながら私をベッドへ戻す。


「サツキ、あなたも病人なの。寝ている間は痛みがこないでしょうけど、身体は動かせないわよ」


 そんな……動けないのか……?フレイも、私も。

 

「……余命が7日って、あの仮面男に宣告されたんだ。多分私はこのまま……」


 ここで死ぬ。そう言おうとしたその時、赤い筋が走る刀が現れ、私の言葉を遮る。


「あのねぇ、何もあんた達が動けないからってどうしようもないわけじゃないのよ?

 ここにいつじゃない?頼りになる精霊さんが!」


 サラマンダーは自分の刀身を振り回してアピールをする。その調子に私も心が少し窮屈さから解き放たれたような気がした。


「そう?じゃあ頼らせてもらおうかな」


 私のの言葉に、サラマンダーは赤い光を一層輝かせこちらへ近づき。


「もちろんよ!私達があいつの正体暴いて懲らしめてやるんだから!」


 胸を張るように身を反らせる。

 しかし少し心配な所はある。何せスライムと刀だ。何かあってはこちらも困ってしまう。


「っと、その前に。ちょっと待って。私の身体を少し使って……」


 私はそう言い、自分の身体を『変化』させ一部を切り取る。

 切り取った物を人型に構成し、小さな私が出来上がっていた。


「視覚共有型子機、”サツキちゃん”だ。即席で作った物だけど、会話もできるし、元の方の私が喋れなくなってもテレパシーでこっちが話せるよ」


 大きさ10cmほどの私に手を振らせると、二人はまじまじと見つめながら感心で息を漏らしていた。

 我ながら中々に面白い物を作ってしまったかも知れない……。


「あ、そうだ。フレイの分も作っとこう」


 私はフレイに断りを入れられず、少し申し訳なく思いながらもフレイの体からフレイちゃんも作った。

 フレイちゃんはすぐに目を開け、フレイが眠っていたのですぐ話し始めた。


「……ん?ここは……あれ?サツキどうしたんですか?手をあらぬ方向に振って……って、ウンディーネにサラマンダー!?何でそんなに大きく……!?」


 私もサツキちゃんの方と視覚を共有しているので、かなりサラマンダー達が大きくは見える。

 会話のテストも兼ねてフレイにサツキちゃんで話しかけることにした。


「フレイ、今のその身体はフレイ自身から切り取ったもので……ああいや、説明がめんどくさい。

 要するに今フレイはちっちゃくなっているってこと」


 わたしがそう言うとフレイは少し怪訝な顔をしたが、体の痺れが無くなったことに満足したのか特に気には止めていなかった。


「さて、サラマンダー、ウンディーネ。この子機達は私の『複製』で得たスキルやフレイの『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)が使用できない。だから基本的に戦闘は二人にお願いする事になるけど大丈夫?」


 わたしがそう聞くと、ウンディーネは鼻で笑って答える。


「こんななまくらと一緒じゃなくったって私だけで倒せるわよ。心配しないで頂戴」


「私だってこんな雑魚モンスターの代表みたいな奴と一緒じゃなくても全然!むしろ弱くなっちゃうわ!」


 お互いがお互いに罵り、二人は顔を突き合わせるようにする。

 ……不安だ。

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