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第四十八話 道化

 夜が更ける中、私の目の前には男が立っていた。

 男は顔を覆う黒い仮面をつけ表情が見えず、格好も真っ黒のスーツでどこか不気味な雰囲気を覚えた。


 だが、素性は『万物理解』で調べられる。さっきの発言から王だという事はなんとなく分かる。

 私は睨み据えながらスキルを発動するが。


 『検索不能、アクセス拒否をされました』


 返答は私の満足のいく物では無かった。


「な……なんで……!?ぐっ……!」


 『万物理解』が再び検索を出来なかったことに私は困惑の表情を浮かべる。

 しかし私の表情は突如身体に走った激痛により苦悶の表情へと変わった。


「けけけ、それはお前がかかった病気さ!一週間以内にその病気を治せなければお前は死ぬことになるぜ!」


 病気……!?そんな……さっきまでなんとも無かったはず……!

 私は痛みが更に強くなっていく心臓に手を当てながら思考を巡らす。


 恐らくこの痛みはここにいる仮面男のせいだろう。仮定するならスキル『病魔』……。

 触れたことでそれが発動したならやはり何かしらの方法で治す必要があるだろう。


 だがそれならあの着ぐるみは……?着ぐるみとは思えないスピードとパワー。

 駄目だ。判断材料が少な過ぎる……。


「何そこでジッとしてんだよ」


 頭の上から聞こえてきた声に気付いて私ははっと見上げるが、脚で蹴り飛ばされドアごと吹き飛ばされる。


 くっそ……痛みでそっちまで気がまわらなかった……!


 身体が思うように動かず回復もままならない。そのまま男はこちらに近づき第二撃を加えようと脚を振り上げる。

 

 しかし、その瞬間男の周りに突如いくつもの白い粒が現れた。

 落ちる雨粒の時間が止まったようなその粒は白い尖りが見えたかと思うと、それぞれが男に向かって槍のような棘を伸ばす。


 男はそれを防御する時間も与えられずその場で数え切れないほどの棘に体を貫かれた。

 

 私は唖然としていたが、男が空中に打ち付けられた後倒れたことで、荒い息を吐きながら手をこちら側に突き出しているフレイの姿が見えた。


「フレイ!起きたの!?」


 私は痛む身体を引きずりながらフレイの方へ向かうが、フレイは腕を少し震わせながら膝をつく。


「ここまで大きな音がなっては嫌でも起きますよ。しかし……私も何か受けたみたいです。

 身体が痺れてうまく動かなくて……」


 そう言いながら、フレイは棘を引き抜く。

 確かにフレイは身体を震わせていて立っているのもやっとという感じだ。


 私と症状が違う……?別の病気なんだろうか……?

 私はそんなことを考えていた時、ふとある事を思い出した。


「……待てよ?」


「どうしたんですかサツキ?」


 ……スキルはその人間が死ねば効力を失って元の姿に戻る。

 実際にタケルが消滅した時は島全体のマナが閲覧出来るようになった。


 けど、私たちのこの『病魔』は治っていない。つまり……


「フレイ、痺れているところ悪いんだけどその仮面男を警戒しておいてくれ!

 そいつは生きている!どうやって居るのかは分からないけど……!」


 フレイは私の言葉を聞き倒れ伏した仮面男をジッと見張る。

 しかし、仮面男は動くどころか呼吸すらする事はなく、そこに死んだように倒れたままだった。


「……ごめん、フレイ。私の見間違いだったみた……!」


 私は不思議に思いながらもフレイの方へ振り返る。

 しかし、振り返った視線の先、フレイよりも奥の窓にその仮面男がいた。


「そこにどうやって……!?」


 目を見張り窓の方向を見る私に嫌な予感を覚えたフレイは私と同じように窓の方向を見る。

 それを見たフレイは睨みつけながら再び機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)を発動しようとするが、それを見た仮面男はおどけながら手で制した。


「おっと、自分の体は大事にしなって!なーに、今日は舞台の第一幕に過ぎない。また次の幕、夜の帳が降りた時に。さらば!」


 捲し立てるように言うと、その仮面男は窓の取手を足で掴み逆さになるとサーカスのような動きで私たちの目の前から消えていった。


「……なんだったんでしょう……?何と言うか、ふざけ半分のような人物でしたね……。

 でも、夜の帳が降りた時……明日の夜でしょうか?また来るかもしれないですね……」


 フレイは手を顎に当て考えて居るようだった。しかし、私はそれを考えられる暇がないほどに痛みが走っていた。


「フレイ……ごめん……ちょっと、意識保つのキツいかも……」


 そう言い、私は目をつぶって体から力が抜けてしまう。


「サツキ!?どうしたんですか!?サツキ!サツキ!……」


 そのまま私の意識は遠のいていき、目の前は暗い黒に閉ざされていった。

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