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第四百八十一話 幼少のヴィリア

「しかし……儂以外に、ヴィリアが心を開ける日が来ようとは……。『死神』殿には感謝しかありませぬな」


 気立ての良い口調に戻り、祭祀長はニコニコと顔に笑みを称え私に感謝の意を述べてくる。

 口先だけなのか心からの言葉なのかは私には判断できなかった。ただ、一つ彼の言葉に気がかりがあった。


「その……祭祀長さん、って、ヴィリアとどういう関係なんですか? 親子……それとも、祖父と孫ですか?」


 儂以外と言う限り、ヴィリアとはかなり深い関係に思える。それに言葉の端々から彼女のことを大事にしていることが伝わってくるようで、血縁関係なのは確実だろう。


 だが、そんな私の予想を滅相も無いとでも言うように、祭祀長はいえいえと首を横に振る。


「儂とヴィリアは、そう言った関係では無いのですじゃ」


「えっ、ええ……⁉︎ じゃ、じゃあ叔父とか、それとも大叔父……」


 いとも簡単に予想を破られ、私は驚きながらも次の予想を立てようとしていた。

 だが、その途中で祭祀長はまた首を振り、私の言葉も止まってしまう。


「血の繋がりは、一切ありませぬ。ヴィリアの両親殿たちは今も街で暮らしていますのじゃ。ただ、会うのは毎月一度きり……それを、十歳の頃からあの子は続けていましてな」


「じゅ、十歳⁉︎」


 十歳って! まだまだ親に甘え放題の頃から、ずっと……⁉︎

 

「儂とヴィリアは、一番近い物で言えば師弟と言うのが……一番近いですかの」


「はあ……それにしても、十歳から……ですか。ヴィリアは昔っからあんな風だったんだな……」


 十歳のヴィリアって……、やっぱり今みたいに戦い一筋だったのかな。少し短めのセミロングの赤髪……年に似つかわない切れ長の瞳……。口を開けばおいだのお前だの……。案外、カッコいいかもしれない。


「いや、そうとも限りませぬのじゃ。あの子も九歳までは、多少友達が出来づらく目立つ所はあれども、そこらで遊ぶ子供達と同じように、年相応の振る舞いでしてな」


 微笑ましげに顎を撫でながら語る祭祀長を眼前に、私が頭の中で先程まで描いていたヴィリアの少女像が一気に崩れ落ちていく。


 年相応の振る舞い……ヴィリアが? ……駄目だ、想像できない。

 まだ子どもらしくないヴィリアの方が思いつくぞ……。


「じゃあ、一体何がヴィリアを変えたんですかね?」


 正直不思議だった。昔からそうと言うわけでは無く、途中で変わると言うのは私だって経験が無い。次の日から戸惑ってしまうなんてこともありそうだけど……。


「……儂が、あの子を変えてしまったんですじゃ」

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