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第四百六十話 スキル

「私の……流派?」


 彼女の質問に、すぐの返答ができず私は口をつぐんでしまった。別に、ここで嘘をついても何か悪い事が起きるなんて事は一切ない。尋問されている訳でも嘘をつけばピンチになる訳でもないからだ。


 だが、その理由だけで私が彼女に嘘をついていいかと言われれば、それは違う。私の良心が痛むと言うのもあるが……それよりも、私の質問に答えてくれたヴィリアに申し訳ない。憎んでいるはずなのに、話したいと言ってくれたヴィリアに。


 私は、数秒の沈黙の末、口を開いた。


「私は……流派とかじゃないんだ。スキルの一つ、『剣豪』ってスキルの技術なんだ」


「……『剣豪』……」


 ヴィリアの表情は、人目みれば分かるほどに険しい物になっていた。眉を潜め、先ほどまでの柔らかな雰囲気はどこにもない。出来るならずっと先ほどまでのようにいたかったが、それは不可能だった。


 私がヴィリアの顔を見ていると、不意に彼女は下へと俯き。


「……サツキ、個体ごとにスキルがある種族は、人間だけだと言うことを知っているか?」


「え?」


 唐突な質問に、私は拍子抜けして声を漏らしてしまう。そういえば、オークのスキルを複製したのが『怪力』だったが……フレイはオークのスキル、と言う形で説明していた。今になって思えば確かにそれはオークの種族ならではなのだろう。


「……初めて聞いた。でも、オークのスキルが『怪力』だって言うのは知っていたよ」


「経験があると言う事は……理解できない訳ではないようだな。そう、貴様が言ったオークのように、この世界の生物は動物であろうとモンスターであろうと、種族ごとにしかスキルを持っていない」


 ヴィリアの表情から、少し怒りが消えていた。こちら視線はやらずとも、彼女は話しを広げていく。


「人間しか個別にスキルを持っていない理由は……これは私の推測に過ぎないが、それぞれが自我を獲得しているからだと思っている」


「自我……?」


「それぞれの違いが上澄として現れた物がスキル。そして、その違いこそが……人々の唯一性を高めているんだ」


 ヴィリアは、自分の手のひらを眺めてそう語る。そんな内容に私が納得半分感心半分でいると、不意に鋭い視線が私へと移り。


「だが、その唯一性を全て奪ってしまう人間が、今私の目の前にいるんだ」


「っ……」


 責め立てるような語調のヴィリアに、私は思わず固まってしまった。


「……いや、すまない。……言い過ぎたな」

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