第四百四十一話 死は厭わない
「……」
「サツキ、答えて下さい!」
鬼気迫る様な表情を私に寄せ、フレイはジリジリと詰め寄ってくる。
芦名の話と、先程のフレイからしてフレイが芦名の事を大切に思っているのは、私にも十分伝わってきた。
だからこそ……改めてさっき言った事を後悔するのと一緒に、今から言う言葉を私は、ためらっている。
「黙っていたら分かりませんよ! 本当に、アシナかサツキ、どちらかは確実に死ななきゃいけなかったんですか⁉︎ なんでそんな事を黙って……!」
「止めろ。あいつを責めるな……がふっ……」
細々と今にも事切れてしまいそうな声で芦名はフレイへと呼びかける。
だが、フレイもそれを分かっていないでやっているわけじゃない。一瞬眉を曲げたが、曲がり切るよりも先にまた吊り上げ私が言うまで止めないという様だった。
芦名も……長くない。後数分と言ったところか……。
私は睨むフレイの目をジッと見て、頷いた。
「……分かった、ちゃんと言うよ。黙っていたのは確かだ、ごめん。……でも、私も、さっき知ったばかりなんだ」
「……どういう事ですか……?」
怪訝な顔へと変化するフレイに、私は更に説明を続ける。
「記憶の中で、やっと芦名の計画に触れて私もその事実を知ったんだ。だから、まあ……言い方を考えなければ、後出しを食らったような感じ……かな。私もまんまと芦名の挑発に乗って彼を殺そうとしていただけなんだよ」
フレイは、唖然として聞いていた。一筋汗を流し、不安とも、悲しみとも取れず、ましてや喜びでもない……何かに気付こうとしている、表情をしていた。
「え……じゃあ、アシナは……一人で今現在までを計画していたんですか……?」
「寸分違わずね。今の現状は、まるっきり芦名の計画していた未来だ」
それを聞き、フレイは更に混乱した様子で芦名の顔を見る。
自分で問いた質問のはずが、その答えのせいで更に疑問を呼び込むことになってしまい困惑を隠せていなかったのだ。
「じゃ……じゃあ……何のために、アシナはこんな未来を計画していたって言うんですか……⁉︎ サツキには勝てない事だって薄々は勘付いていたはずです! 何のために、自分が死ぬ前提の未来を……!」
フレイは心底理解できない様子で芦名と私を交互に見ながら聞いてくる。
フレイからしたら理解出来ないことだ。もちろんそれは私もで、正直今でも芦名が何のつもりなのか理解に苦しむ。
ただ一つ言えるなら……彼が、狂人だからだろう。
芦名は困惑するフレイの顔を見ていたかと思うと、生気の感じられなかった顔にニヤリと笑みを浮かべ。
「……もうお前らに言ってるぜ……。俺が死んでも良い理由……」
その芦名の表情と、悪戯げにぼかしていった言葉に、フレイは一瞬で勘付いた。
「……王を、全員殺す……」