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第四百四十話 どちらか

 先程までそよいでいた風はとうに止み、息苦しい静けさが辺りに蔓延る。


 各々が愕然として固まっている中……私の言葉に、フレイはしばらく震えるばかりだった。


「……フレイ……」


「そんな……サツキ、言ったじゃ無いですか。もう、アシナを殺さなくても良いって……」


 私が名前を呼び、そこでやっとフレイは思っていた言葉を口にした。

 しかし、私が彼女に言ってあげられる言葉は……好ましいものでは無い。


「『無限』の中で決着がついた時点で、芦名の死は決定していたんだ。最も、それを知ったのは後だったけども……死ぬ相手に殺す殺さないという必要は無かったって……事だよ……」


 自分でも自分の言っていることに人間性を感じられず、内心私は困惑していた。

 ただ、事実を言うだけ……。真実を伝える事は良いことだが、果たしてそれだけで良いのか……。


 しかし、そのように思っていても、私は既に残酷な真実を打ち明けてしまった。

 芦名を抱えるフレイの手は弱々しく、今にも彼を地面に落としてしまいそうで、その表情は下を向きよく見えない。


「…………あんまりです……」


 フレイの声色に、私はぎくりとして動けなくなってしまう。

 いつもの彼女のような静かながらも張りのある感触はなく、呟くように、声を震わせていた。


「例え、私達を一度殺しかけたにしても……やっぱりアシナは私たちの恩人に変わりはありません。それに、皆と同じくらいに、私は……アシナの事も大切____」


 その時、フレイの腕が横に強く揺れる。彼女が揺らしたのでは無い。その表情と腕の動きは、誰かが揺らしたものに違いなかった。


 拍子抜けしたようにフレイは顔を上げ、目から零れかけていたそれを空中に投げ出す。

 それも当然、彼女の手を揺らしたのは、他でも無い____


「ぐっ……、痛ってえ……が、フレイ、滅多なこと言うんじゃねえぞ……!」


 その顔中に汗を垂らし、痛みに全力で耐える。

 フレイを睨みつけ、たしかに彼女に語りかけていた。


「アシナ……⁉︎ め、滅多な事って……」


「俺は、死んでも良かった人間だった……いや、俺とサツキ、どちらにせよ片方が死ぬって計画だった……。

 俺が生きていりゃ、今頃お前の前にサツキは立っちゃいねえんだぞ……」


 芦名の言葉に驚きを隠せず、フレイは目を見開いて私の方へバッと顔を上げる。

 初めて聞いた……と言う感じだが、それも仕方がない。聞かれもしていないのに私が言ったところでそれは私の保身にしかならないからだ。


「……サツキ……そう、何ですか……?」

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